第3話 飛ばされた異世界『ウィルホール』
フォールヴァイン家で朝ご飯を済ませた僕は後片付けを手伝った後、今はブラドさんからこの世界について教わっていた。
「……という感じかの」
「なるほど……」
この世界の地図をもう一度見ながら状況整理する僕。
僕が飛ばされた異世界は『ウィルホール』と言って、様々な種族が共存して暮らしているそうだ。
それで、僕が今居る場所……というか飛ばされた土地は、ウィルホールの中でも自然が豊かな『エウロス』だと言う。
別名、"忘れられし森の国"と呼ばれてるそうだ。
「あの……どうして忘れられし森なんて言われてるんですか?」
ふと気になった僕は、ブラドさんに訊いてみた。
「それはの……首都を失ったからなんじゃ」
「首都を失った?」
首をゆっくりと縦に振りながら、ブラドさんは話す。
「ワシが子供の時になるかのぅ……そもそもエウロスというのは、この土地の首都だったんじゃ」
「だった? 今はもう無いんですか?」
「そうじゃ。リディと一緒に村に来る途中、森にはそぐわない遺跡のような残骸を見かけなかったかの?」
「あっ、そういえば……」
そう言われた僕は思い出す。
確かに道中、森にはそぐわない何かの遺跡のような残骸がいくつか散らばっていた。
あの残骸って、もしかして……
「そう。首都の残骸じゃ」
表情に出ていたのか、ブラドさんがそう締めくくった。
「ところでツバメや。お主、この世界のお金は持っておるのかの?」
「あっ……」
その一言を聞いて、状況を理解した。
異世界に飛ばされたとはいえ、持ち物は全く無い。
無一文とかシャレにならない……どうしよう?
「ほっほ。その表情だと持ってないようじゃの。折角じゃ、リディと買い物に行ってきてもらえるかの?」
「……行きます。というか行かせてください。この世界の通貨とか僕全く知らないんで」
買い物は元の世界でも、それなりにしてた僕だが、異世界での買い物は初めてだ。
まぁ……当たり前なんだけど。
そしてタイミングが良いのか悪いのか、リディが入ってきた。
「お爺ちゃーん、お茶が入ったよ……って、ツバメ? どうしたの?」
「僕、異世界人じゃん? だからその……この世界のお金を持ってない事をブラドさんに指摘されて、今気づいたところ」
「それでツバメにリディと買い物に行ってきてはどうじゃ? と話していたんじゃ」
「そ、そうなんだ……」
首を傾げながらも、とりあえず納得したリディ。
「そう言う訳じゃから、リディや。ツバメと一緒に村の案内がてら、買い物に行ってきてくれんかの?」
「うん。分かった。ツバメ、行こっ?」
「色々と訊くかもしれないけど……リディ、よろしくね?」
「うん! 私も頑張るよ!」
そんなこんなで、初めて異世界で買い物に行くのであった。
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