第10話
悩み迷う。
過ごしていれば普通に起こることだ。
だが、その時間に本当に価値があるのか。
考えているのではなく、悩み迷う。それは、何もしていないのと同じではないか。
私は今、何もしていないのか。
彼は叱られた後、この世界のある程度のことを女性から教えられた。
いわゆる法律や常識などとというやつだ。
全てを網羅しないまでも、少しずつ情報が入ることで、彼は見たもの全てを警戒することは無くなった。
そして、実際に現物を見るために散策していると日が暮れた。
「すっかり夜ですね」
「そうだな」
「今までどう過ごしてきたんですか?」
彼は手を顎に当て、少しの間黙考した。
「覚えていない」
「わかっていたことですけど、そうですよね」
女性は困ったように笑った。
肌を撫でる風は冷たく、虫の鳴き声がよく聞こえた。
太陽はすっかり沈み、空には星が瞬いていた。
「どうやって夜を越しましょう」
近くに宿はあるが、彼らに持ち金はなかった。
彼には夜を越した記憶が、女性には家の外で過ごした経験がなかった。
二人はただ悩み思考を巡らせていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます