第8話
どうして、イメージに囚われてしまうのか。
気付かぬうちにイメージにより決めていないか。
その考えは本当に自分で考えたことか。
どこからが自分の決断だ。
これは本物か。
世界はひとつになった。
世界は別れていた。
木々が動き出し、見たこともない生物がそこら中に湧き出ていた。
見知った場所に見知らぬ建物が現れ、元から住んでいると話す者が居た。
人々は混沌とした世界に恐怖し、そして、争いが起きた。
長い争いの末、皆を平等に扱い、皆が平等に暮らせる世界が築かれた。
知識あるものを人、人間として扱うようになったのはこの時だ。
「私が知るのはそんなところです。世界の歪みなのか理由は知りませんが、記憶を失い彷徨う人間も今ではそこら中に居ます。あなたは別におかしくありませんよ」
「じゃあ、人間なのか」
「はい。あなたも人間です。姿形が違うことを今は問題とする人は少ないです。ただ、私が居た村のように変化を受け入れられない人たちも居ます。未だに他の人間を人間として認められない人たちが」
「だから、あの視線」
村で彼を見つめる視線を冷たかった。
無機物を見るかのような目つきだった。
「そうです。私はあれが嫌になったんです。だから、私はあなたについてきたんです。利用したみたいですいません」
女性は申し訳なさそうに頭を下げた。
彼は焦って両手を横に振って否定した。
「いや、気にしてないし、実際ありがたいよ。一人ではあの村の外を受け入れられなかったと思う」
彼は女性に微笑んだ。
その笑みには緊張が含まれておらず、自然と出てきたことがうかがえた。
彼はひとつ伸びをすると深呼吸した。動きも柔らかく、怯えが消え去っていた。
リラックスして世界がよく見えるようになった彼はある事に気づいた。
銀の箱の中に人が囚われている。
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