七月二十四日 ゆげしま
昨日は雨だった。しかし海の日でもあった。灰色の空にそれぞれの艦艇が飾った五色の旗は呉の港に華やかな彩を与え、見る人を楽しませた。俺と弟、
「まだ湿ってる」
昨夜から干しっぱなしで、もうお昼も過ぎたというのに艦橋の中は未だに満艦飾の真っ最中だ。その中の3の旗をつまみ少し揺らすと狭い艦橋の中で湿った空気が動く。艇長の席に座って寛ごうにもこうも湿っていては座る気にもなれない。ふと前を見れば
「カビさせたら悪いもんな」
パンパンと旗を叩くと俺が触ってついた皺が少し伸びる。誰もいない艦橋に響く湿った布の音。それがとてつもなく寂しく感じられた。
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