第57話マユは迫る
「え、えーっとだな…」
ルナとはまた深夜帯に遊ぶと言ってマユと会わせないためにできるだけ早く別れてもらった。…が、まさか見られてしまっていたとは…
でも大丈夫だ、一瞬見られただけでそう長い間は見ていないはず…待てよ?
もしあのNPCの情報がマユにも届いてるんだとしたらここで俺が変な嘘をついてその矛盾を突かれたらそれこそ俺が浮気してる説が濃厚になってしまう。
…って、いやいや俺は友達と遊んだだけだ。真冬のおかげで色々とネガティブな考え方をしてしまうけどそうだ、俺は友達と遊んだだけだ。
ならそれを嘘偽りなく伝えればいいだけだ。
「ちょっと友達と遊んでたんだ…」
「…女の子の?」
「…お、女の子の…」
「……」
めちゃくちゃ怪しんでるような目で俺のことを見てる…!
でも確かに普通に考えて彼女に一切の断りもなく女子と遊ぶっていうのは真冬とかじゃなくても普通にアウトか…ここは素直に謝ろう。
「ご、ごめん!次からはちゃんと報告する!」
「…次があるの…?」
「…えっ?」
「…ううん、なんでもない、うん、次からはちゃんと報告してね」
マユはそういうと、俺の手を引っ張っていつも通り服屋さんに行った────と思ったが、どうもいつもと道が違う。
俺が不思議に思いながらマユに手を引かれていると、マユは足を止めた。
「ここは…宿屋…?」
宿屋なんて正直このゲームではおまけみたいなものだ。
服を着替えたり休息を取ったり、あとはちょっとだけステータスを上げることのできる料理を食べたりと、俺はあんまり行ったことがない。
「ここ、入ろ?」
「え、いいけど…なんのために…?」
「……」
マユは黙々と俺の手を引いて宿の中に足を踏み入れるも、なんの返答もしない。…まぁついていってみれば何をしようとしてるのかわかるか。
俺はそう簡単に結論づけてしまい、割り当てられた部屋の中に入っていく。
宿なんて聞いたら古いRPGゲームのような木造の建物をイメージしがちだが、VRMMOでは基本的にプレイヤーのストレスになるようなことはされないため、ここも木造ではなく現実のどこにでもあるような普通の部屋だ。
「マユ?ここで何をするんだ?」
「…私、不安になっちゃって」
マユはそう本当に不安げに言いながら、ベッドに腰を下ろして俺に隣に座るように促す。…これは俺が悪いな、うん。
俺は変にマユを不安にさせてしまったことを後ろめたく思いながらもマユの隣に腰をかけた。少しでもマユの不安を消せれば─────
『ドンッ』
「…えっ?」
マユは俺の両腕をベッドに押さえつけ、俺の腰の上に跨り俺をベッドに押さえつけた。…え?
「な、何してるんだ?マユ」
「だから…今から不安を取り除いてくれるよね?」
俺はそのマユの言葉の意味がしばらくの間理解できず、沈黙するしかなかった。
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