左腕の悩み?
ロチェスター・レッドウインズは現在ではミネソタ・トワイライツ傘下でインターナショナル・リーグでは最古の歴史を誇る。実はメジャーリーグの最初の傘下球団になったチームなのだ。
セントルイス・クルセーダーズが買収して
チームの主砲はオーストリア代表で今年のWBCにも出場し、チームの4番を任されたジャスティン・フーパー氏。5年前の高卒内野手としてドラフト1位指名されたトレバー・プルーブ氏。
グレッグのせいでみんな真面目に練習して少々お疲れ。ビジターチームの練習時間。
がっちりしたガタイの選手が俺に近付いてくる。背番号からしてフーパー氏だよな。めっちゃ親しげな笑みを浮かべとるがな。
「健、元気か?」
思いっきりオーストリア訛りや。磐村さんも挨拶に来た。
目が泳いでいる俺を見かねてか磐村さんが俺に助け船を出す。
「WBCの練習試合で対戦したやんか。」
あ、そうでしたっけ。
「あの時は必死だったんで。」
野球の世界は狭いわ。2試合も対戦してるのに覚えてなくてすんません。
「それにお前先発やろ。バスで
そうでした。そして、バスの床で寝るのを「フロア席」と呼ぶのをやめてもらっていいですか?
フーパー氏に今日はキミも出るのかと問われると
「いや、俺はまだ出れないんで。
磐村さんは結構英語が達者。雑談くらいなら通訳もいらない感じだ。
今日は左投げの日。「沢村」というキャラはすべからく左投げというのは漫画界のお約束。俺の場合、右に比べると球速は3から5km/hほど遅い。これはもともと俺が右利きであることが関係してるだろう。
そして、左右の投球フォームも明らかに違う。これは命中率アップ魔法の影響でフォームが自動調整されるせいもあるだろうが、体内の内臓の位置、軸足を変えることによる股関節の使い方の変化も関係している。
チャップリンが左でも人類最速なのは身体の内部というか内臓までが「左利き」にできているんじゃないかとは思う。
左と右の沢村はまったくの別人なのだ。そこら辺をわかってくれているのでジョン相手だと投げやすい気はする。ただいずれは「パワー」をつけて左でも100マイルを超えるのが今の目標である。
とりあえず今は肘がすり減る心配がなくなったので変化球落としまくってやろ。
アメリカ人が弱い⋯⋯というか慣れてないスプリット。
こんな靭帯泣かせの変化球を投げ放題なのだ。
4シームにヤマを張られて4本くらいヒットを打たれたけど。魔法制御なので「すっぽ抜け」がないのでこのクラス相手なら連打されることはない。三振を取るよりも打たせて取るというのを目標に8回無失点。
「完封狙うか?」
ピッチングコーチに聞かれたが断った。ノーノーなら行くけどね。これで3勝1敗。
翌日からも打撃も引き続き好調。アピールできたはず。
家に帰り、母校の甲子園での活躍をチェック。2回戦から登場の母校。エースの安武がいきなりノーヒットノーラン。打線も機能して7対0で勝っていた。後輩たちからのメールも来ていた。
そして、モンゴメリーでホストファミリーだったジョニーから家族を連れて試合を見に行くというメール。
まだ別れて1ヶ月くらいなのにずいぶんと懐かしい気がする。試合後食事を一緒にすることになった。今週1週間はホームゲームなのでその間に来るらしい。
日本ではお盆時期に入り、日本からのツアー客が増える。マイナーリーグで好成績であることが報道されていることもあって日本の旅行代理店からのチケットの引き合いが増えているらしい。
最近売り出し始めた俺の応援グッズを持って応援してくれる日本からのお客様。恐らく律儀に、
そして、ロチェスターの後も交流戦。北地区のスクラトン=ウィルクスバリ・レイダースをホームに迎えうつ。これもニューヨーク州のチームでニューヨーク・ヤーナーズ傘下。日本人の
伊川さんはポスティングでヤーナーズ入りしたものの、なかなか上で使ってもらえないようで磐村さん相手にずっと愚痴っていた。うんうん。わかります。正当に評価されないのは辛いですよね。
「ちゃうで。」
磐村さんにたしなめられる。
「健の場合は、いかに安い年俸で長くこき使えるかGMのフリーマンがそろばんブン回してるだけだ。伊川はチャンスさえもらえてないからな。」
いや、結果は一緒ですやん。
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