第11話 好きだから-11
やっぱり商店街へと友崎君は歩いていきます。
今日は私一人で尾行することにしました。和美ちゃんは塾があるので、先に帰りました。他の二人にも応援を頼みませんでした。どうしても、自分で確認したかったのです。
昨日の結果を薫ちゃんに話したのですが、薫ちゃんは信じてくれませんでした。中学生を雇っていることは、絶対に言えないし、人目につく所では働かさないはずだから、奥で皿洗いでもさせて、隠してるんだと言いました。私も和美ちゃんもその言葉に反論できませんでした。だから、今日、もう一度尾けてみることにしました。
友崎君は繁華街を抜け、大きなスーパーに入りました。私は見つからないように追ったのですが、もう階段を上がったのか降りたのかもわからなくなっしまいました。仕方ないので、表で待っていようかとも思ったのですが、裏口から出ていかれたらどうしようもないと思い、思い切って昨日のクラブに向かいました。そして、クラブの入り口の見えるところで立って見ていました。
こうやってぼんやり見ていると、色々な人が通っていくものだと思います。いつもは土日曜日の昼間に歩くから、家族連れとか子供が多いけれど、平日のこの時間は案外制服の姿も多く、遅い時間じゃなければわざわざ着替えなくてもいいんだと思いました。
全然、友崎君が来ません。それどころか、誰もこの店に来ません。今日は休みなのかなと思って、見に行こうとしたとき、昨日のお姉さんが長い髪を振り乱しながら走ってきました。ずれそうになった眼鏡をちょっと抑えて、ズボンのポケットから鍵を出しながら、通用口のある路地に入っていきました。それからしばらくして、背の高い男の人が二人通用口の方へ入っていきました。そして、扉が開き、あの女の人が入り口を掃除し、終わると準備中の札を外して中へ入っていきました。それから、何人も店へ入って行きました。驚くような恰好の人や金髪、赤髪、とても昼間は見れないような人がたくさん入って行きました。
友崎君は現れません。明日もう一度尾けてみようと思い帰ることにしたとき、男の人が二人近づいてきました。
「ネエ、こんなトコでナニしてるの?」
「よかったら、そこの喫茶店でお茶飲みながらお話しない?」
高校生のような二人に急に声を掛けられて驚いてしまい、いま何をしていたのかわからなくなってしまいました。
「ネエネエ、高校生?中学生?」
「オレ、立山高の尾崎っていうんだけど」
「待てよ、オレが先に声掛けたんだぜ」
慌ただしく話す二人に、上手く対応できないまま駆け出してしまいました。
商店街を抜け、バス停でバスを待ってる間に次第に落ち着いてきました。もしかすると、友崎君は私に尾行されていることに気づいていたかもしれないと思いました。昨日クラブに私たちが尾いて行ったことを聞いていれば、捲こうとしたのかもしれません。その後、どうしたかわかりません。路地の反対側から入ったのかもしれません。それなら、帰りを待ったほうがいいかもしれないと思い至ったのです。
バスが来ました。迷いましたが、夜遅くなるなら着替えておいたほうがいいと思い、今日は諦めました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます