第10話 第2階層 獣人


「戦いを始めるぞっ! 俺の名はライオウ! 百獣の王・ライオンの獣人だ」


 ライオウは両拳を顔の前に持ってくる。戦闘態勢に入った。


「ワレはヒョウドル。豹の獣人だ。スピードならこの森一番だ」


 ヒョウドルはしなやかな体をストレッチする。


「わたしはアイリーン。ドルイドよ」


 アイリーンは杖を掲げる。


「いくぞ、勇者たち! この俺たちを倒してみよっ!!」


 ライオウが飛びかかる。


「望むところだ!」


 ハヤトはライオウの顔めがけて飛び蹴りをくらわす。


「ふんっ!」


 ライオウは顔の前で両腕を交差させてハヤトの蹴りを防ぐ。


「俺はライオウを相手にする。レンタロウ、ホノカ、レナはヒョウドルとアイリーンを相手してくれ! ヨウスケとリンは魔法で全体のフォローを頼むっ!」


「了解したよ、ハヤト先輩! 一発必中!!」


 ホノカはヒョウドルに向かって矢を放つ。


「遅いっ!!」


 ヒョウドルは矢を片手で受け止める。

 矢をホノカに向かって投げ返す。


「あぶないっ! 私に任せて!」


 レナは盾で矢を弾き返す。


「んっ……」


 レナは身もだえる。

 ブラウスのボタンが2つ弾け飛んだ。


「覚悟! でぇいっ!!」


 ヒョウドルに向かってレンタロウは刀を振り下ろす。


「ナマケモノのように遅い動作だな」


 ヒョウドルが後ろに下がって刀をかわしたとき――


 ピュッ!!


 刀の切っ先からイカ墨が飛び出る。


「な、なんだこれは!? 前が見えぬっ! しかも磯臭いっ!!」


 ヒョウドルは目に入ったイカ墨を取ろうと目をこする。


「今だっ! 一発必中!!」


 ホノカが矢を放つ。


 イカ墨のせいでヒョウドルの行動が遅れる。

 矢はヒョウドルの肩に突き刺ささった。


「くっ!!」


 ヒョウドルは矢を肩から引き抜く。

 ライフが100から90になる。


「刀の切っ先からイカ墨を出すとは想定外だったぞ! しかし同じ手は食わぬっ! ワレのスピードについて来れまいっ!!」


 ヒョウドルは凄まじいスピードで動き回る。


「でぃやっ! そぃやっ!」


 レンタロウはヒョウドルに向かって刀を振り回す。

 ヒョウドルに攻撃が当たらない。


「これはイカ墨の礼だっ!」


 ヒョウドルはレンタロウの腹を蹴る。


「ぐぁ! 土方歳三ひじかた としぞう!!」


 レンタロウは吹き飛ばされる。

 ライフが45から30になる。


「つ、強いでゴザルゥゥゥ~」


 レンタロウは涙目でレナの後ろに逃げ隠れる。


「魔法使いたちが邪魔だな……まずはお前たちからだっ!!」


 ヒョウドルはレナの後ろにいるヨウスケとリンに飛びかかる。


「私が攻撃を防ぐわ! あんたたちは魔法を使って!!」


 ヒョウドルの攻撃を受けながらレナは叫ぶ。


「どうしたっ!? 防戦一方ではないか!」


 ヒョウドルは猛スピードで攻撃を何度も仕掛けてくる。


 レナの服はどんどん破れる。

 だが、レナの頬は紅潮し、うっとりした目をしている。


「レ、レナ先輩!? なにか様子かおかしいぞ? 大丈夫かい?」


 ホノカは心配そうな表情をする。


「ハッ! だ、大丈夫よっ! 気にしないでっ! それよりほら、あいつらを倒すことに専念してっ!!」


 慌てるレナ。


「もしや攻撃されて喜んでおらぬか? レナ殿からは拙者と同類の香りがするでゴザルよ」


「ば、バカなこと言わないでっ!! 私があなたと同類な訳ないでしょう!! イカ墨芸人は黙ってなさいっ!!」


 レナは顔を真っ赤にする。


「そ、そうだよ……。レンタロウくんとレナさんは似てないと思うよ。それに今は敵を倒すことに集中しないと。ボクが魔法を使うよ! ランダム魔法!!」


 ヨウスケは杖を高く掲げる。

 マジックポイントが70になる。


 杖の上に文字が浮かび上がる。


『魔法:フレア』

『発動条件:パーティの中で一番タイプな女性をその理由とともに100文字以内で述べよ』


「こいつぁいいぜ、相棒! 『フレア』は強力な火魔法だぜっ! あいつらにダメージを与えられるぜっ!」


「バロンくん、全然良くないよっ! ボクへの精神ダメージも凄いんだけどっ!」


「カッカッカ! 魔法ってのはそういうもんだぜ、相棒! 嘘は通用しないから、正直に言うこったなっ!」


「えぇ~、いきなりそんなこと言われても恥ずかしいよ……」


 ヨウスケは顔を赤くしてモジモジする。


「早くするんだ、ヨウスケ先輩! レナ先輩の服が全部破れてしまうよっ! そしたらレナ先輩のライフも減りだすんだよっ」


 ホノカにジッと見つめられ、ヨウスケは覚悟を決める。


 ヨウスケは顔を上げてる。


「わ、わかったよ! ボクやるよ! 2年B組 飯田いいだ 陽介ようすけ、パーティの中で一番タイプな女性をいいますっ!!」


「「「「「「だ~れ~??」」」」」」


 みんなでハモる。


「ホノカさんです! いつも前向きで献身的なところがいいなと思いました!!」


 ヨウスケは顔を真っ赤にしながら大声で叫ぶ。


「そう……ヨウスケくんはロリ巨乳が好きなのね」


 リンが冷ややかな視線をむける。


「私の胸をときどき見てたから、胸が好きなのは知ってたけどねっ! でもロリコンだとは知らなかったわっ!!」


 レナも続く。


「ヨウスケ先輩、ありがとう! 気持ちは本当に嬉しいよ。ロリ巨乳が好きなのも個人の嗜好だからボクはとやかく言わない。でも……ボクにはハヤト先輩という心に決めた人がいるんだ。ハヤト先輩はボクのヒーローなんだ! だからヨウスケ先輩の気持ちには答えられない。すまないっ!!」


 ホノカはヨウスケに向けって頭を下げる。


「えっ……いや、ちょっと待ってみんな! ボクがホノカさんに告白したみたいになってるよ!? しかも丁寧に断られたっ! あと『ロリ巨乳が好き』なんて一言もいってないよねっ!?」


「ヨウスケくん、安心して。ヨウスケくんなら立派な小学校の先生になれるわ。小学校で巨乳クラスを作って幸せな教員人生をおくってちょうだい」


「リンさん、ちょっと待ってよっ! ホノカさんは僕とひとつしか違わないよ!?」


「それはたまたまこの三人の中から選んだからでしょう!? ここにロリ巨乳小学生がいたなら、あなたは迷わずその子を選んだハズよっ!」


 レナはヨウスケを指さす。


「選ばないよっ!! 勝手にボクのキャラを作らないでよっ!」


「でも……条例違反ね。日本ではヨウスケくんの願いは叶わない。このさい、独立国家『ロリ巨乳帝国』を建国してはどうかしら? そこの帝王にヨウスケくんがなるの。応援してるわ、頑張ってね」


 リンはゴミを見る目でヨウスケを見る。


「頑張らないよっ! ってか、そんなゴミを見る目で僕を見ないでよっ!!」


「それは大きな誤解よ。これはゴミを見る目じゃない。レンタロウくんを見る目よ」


「全然嬉しくないよっ!」


「落ち着くでゴザルよ、ヨウスケ殿。拙者もロリ巨乳から熟女貧乳まで博愛主義でゴザル! やはりヨウスケ殿は拙者に似ているでゴザルな!!」


「似てないよっ!? さっきからボクへの精神攻撃が凄いんだけどっ!!」


 涙目になるヨウスケ。


「細かいことは気にしなさんな、相棒! めでたく発動条件クリアだぜ!! 相棒のロリ巨乳への信仰が報われたのさっ! いくぜ、火魔法・フレア!!」


 バロンの口から炎が3回発射される。

 3つの炎はライオウ、ヒョウドル、アイリーンそれぞれに命中する。


「「「ぐあぁぁあ!!」」」


 炎に包まれたライオウたちは叫ぶ。

 ライオウのライフは80になる。

 ヒョウドルとアイリーンのライフは60になる。


「隙ありっ!」


 ハヤトはライオウの腹にパンチを打ち込む。

 ライオウのライフが60になる。


「いける! このまま攻め続ければ倒せるぞっ!」


 ハヤトはみんなを鼓舞した。


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