キムチとクジラとコペルニクス

@koper_aya

第1話 韓国から来たピルくん

「韓国人、ばかやろう」


「韓国に帰れ」


…クラスメイトにそう言われて以来、필(ピル)くんはもう何日も学校に行っていません。


ピルくんは、小学校6年生で、12歳です。


家の事情で日本に来て、もうすぐ1年になります。


ピルくんは、韓国が大好きでした。


おいしいキムチはあるし、学校の友達はみんなやさしかったからです。


でもピルくんは、もうすっかり韓国語を忘れてしまっていました。


そのことをピルくんは、とても悲しく思いました。


…どうして日本のクラスメイトは、あんなことを言うのか?


ピルくんは、とても嫌な気持ちになったことが忘れられませんでした。


韓国人のお母さんも、日本人のお父さんも、毎日夜遅くまで仕事をしていますから、ピルくんはだいたいいつも一人です。


今日も、食事代にいつももらっている五百円玉をにぎりしめながら、


「僕は大きくなったら、韓国に帰れるのか。それともこのまま日本人になるのかなあ」


とぼんやり考えているのでした。

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