死神 8

 オレと女万引きGメンは病室を出た。そのまま2人並んで廊下を歩き始めた。歩きながらオレは横目で女万引きGメンの顔を見た。もしかしてこの人、あの2人の名前知ってるかも? 書店ともなると顔も広いだろうから、知ってるかもしれないな。ちょっと鎌をかけてみるか。

「あの~ あの2人の名前、わかりますか?」

「あの2人て、万引き犯のこと?」

「はい」

 女はちょっと考え、こう言った。

「知ってるけど・・・ インターネットに名前載せるの?」

「べ、別に、そんなことしませんよ」

 なんだ、警察に口止めされてんのか? 女はさらに考え、こう言った。

「別に教えてあげてもいいけど・・・

 1人は・・・」

「あ、ちょっと待って!」

 どうやら名前を教えてくれるようだ。オレは慌ててカバンの中からデ×××トを取り出した。これに直に名前を書き込んでやる! けど、ドス黒いデ×××トを見て女はちょっと怪しんだ。

「何、それ?」

「ただのメモ帳ですよ」

 ちょっと上機嫌なオレはスムースに返答。それに納得してくれたのか、女は話を続けてくれた。

「1人はサムカワアキラ、もう1人はアヤセコウジよ」

 ちょっ、ちょっと待ってくれよ。正しい名前、つまり漢字じゃないとダメなんだよ!

 そんなわけで、漢字の名前を教えてもらい、それをデ×××トに直に書き込んでやった。これであの2人は死ぬはずだ。これでこの世は少しはよくなるはずだ。ふふ、爽快爽快!

 病院を出ると、外はすっかり夜になっていた。女万引きGメンは食事に誘ってくれたが、それは丁寧に断った。ともかく今は、あの2人の突然死のニュースが楽しみで楽しみでしょうがないのだ。


 しかし、次の日もその次の日も、やつらの突然死のニュースはなかった。おかしいなあ・・・

 が、3日目の夕方、オレがアパートに帰ってくると、意外なものがアパートの外階段の前で待っていた。女万引きGメンと、あのとき万引きをした方の男子高校生が立っていたのだ。おいおい、あのノートに名前を書き込んでも何も起きないのか? あはは、なんだ・・・

 しかし、こいつ、なんでここにいるんだ?

「久しぶり」

 彼女が声をかけてきた。

「どうしたんですか?」

 と、オレが型通りに質問。それに彼女はスラスラと応えた。

「この子、昨日警察に出頭してきたのよ」

 女は男子高校生を見てこう言った。

「あなた、この人に何か言うことあるんでしょ」

 すると万引き犯の男子高校生は素直に頭を下げた。

「ご、ごめんなさい・・・」

 おいおい・・・ ま、こんなところで立ち話もなんだ。オレたち3人は近くのファミレスに行くことにした。

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