奇妙な面接
転職を目的とした就職活動をしていたとき、色々な会社に回ったが、印象的な会社もあった。
転職活動はアドバイザーを使って紹介を得るやりかたと自分で探すというやり方を両方とっていた。
その会社は自分が探したほうで、どうしても行きたいというわけではないが、業務経験がマッチして、さらにそれなりに待遇がよかったのが選択した要因だ。
最初に履歴書と、簡単に自分の経歴をかいた職務経歴書を送り、書類審査を受けた。
最近は手書きではなく、パソコンで印刷したものを使う。
手書きはとても字がきれいでもない限り有効ではないそうだ。
実際、何社も受けるなら手で書いてなどいられない。
書類審査が通ったので、その会社に面接に行くことになった。
駅から五分くらいの場所で、やや古びたビルの五階に事務所があり、面接まで時間があるため、通された室内には、何かの行事を行っている社員たちの写真が貼っていある。
面接の時間となり、応接室に通された。
促されるままにソファに座る。
向かいには、奇妙な笑みを浮かべた五十代くらいの長身の男と、その隣にやや神経質そうな年齢が分かりにくい男が座った。
名刺をいただいたので、テーブルの上に置いた。誰が誰かわかるような配慮だ。
面接は問題なく進み。感触も悪くない。
話も終盤となり、お互いの条件のすり合わせになった。
奇妙な笑みを浮かべた男はあまり話をせず、人形のように首を動かしている。
現状、職もあり慌てていないので、思い切り吹っ掛けた条件を言ってみた。
すると、奇妙な笑みを浮かべた男が突然立ち上がり、
「そ、そ、そ、れ、は、で、き、な、い、の、で、そ、そ、そ、れ、は、で、き、な、い、の、で、そ、そ、そ、れ、は、で、き、な、い、の、で」
うなずきながら、笑みを浮かべてそういった。まるでAIで読み上げた音声のようだ。
隣の神経質そうな男が脇をつつくと、いきなり座り込んだ。
一瞬、あっけにとられたが、見なかったことにして、面接は終わった。
無難なところで、検討しますと答え帰ることにした。
事務所を出た後、荷物を忘れたかもしれないとおもい、振り返り扉へと戻ると
あの笑みを浮かべた男が複数の従業員から叱責される声が漏れ聞こえてきた。
きっと、年功序列で上に行った働かないおじさんだろうとおもって、ふとしまった名刺をみてみた。彼は社長だった。
目を疑って、スマホでこの会社を調べた。社長の写真も上がっていた間違いなかった。
どういうことか興味は沸いたが、かかわらない方がいいだろうと思い忘れることにした。
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