終わりなき静寂

奥寺 趙雲

プロローグ

 まただ…

 また出てくる人の表情が緩い。中で何があるのだろうか。ささやかなこの違和感を感じている人は、他にいないかとまわりをこっそりと盗み見るが皆、決まっているかのようにスマホやメモ帳を見つめている。いま、どれくらい進んだだろう。気を取り直して自分もメモ帳とペンを取り出して最終確認を始めることにした。

 ペンが床に落ちる。思わず舌打ちを、しそうになって慌ててこらえる。幸い誰も気づいていない…

 こんなの楽勝だと、違和感を捨てて母に勧められたこの会社の面接に来た。就活なんてすぐに結果は出るだろう。でも、普段あまり汗をかかないのに手汗でペンが滑った。緊張している自分がいやで、認めたくなくて席を立って手を洗いに行く。前に、何かのセッションをうけたとき強い自己否定を指摘された。何か変な予感がする。いいのか悪いのかも分からない…

 席に戻ると23番が終わったところだった。カバンの中の29と書かれた紙を確認すると、気持ちが落ち着いて来くる。あとは待つだけ。そう言い聞かせ、目をつむった……






   『海音寺 美鶴様』


  ついに自分の番が来た。コーヒーを、 注ぐように足に力を入れて、立ち上がる。背筋を伸ばして、顔を上げるとドアへ踏み出た。

 ドアノブに手を掛けると、カチャッと軽快な音を立ててドアを開いた。

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