第2章 -  3 決意(3)

 3 決意(3)

 



 そういう意味であの二年間は、もちろん辛いものではあったのだが、ありがたい時間だったと言うこともできる。しかし一方、天野翔太に戻った方は、

 ――今頃きっと、天国だ……。

 こっちで意識を失ったまま、目覚めることなく……病院のベッドで死に絶えた?

 ――俺は確かに、死んだんだよな?

 末期の癌で、息も絶え絶えだったから、きっと死んだと思っていたが、

 ――もしも、まだ死んでいなかったなら……?

 あっちにいって、最後の最後でまたまた苦しい思いをする羽目に?

 そんなことを考えていると、フッと思いがけない考えが浮かんだ。

 ――ちょっと待て? 

 天野翔太が死んだとしても、本来の藤木達哉まで死んじゃいない。 

 もしも翔太だった時に、あっちの世界で探していれば、還暦近い自分だって きっとどこかにいただろう。

 ――じゃあこの時代なら、あいつもどこかにいる筈だ! 

 未来だってだけで、おんなじ地球で日本でのことだ。あそこがパラレルワールドだってことなら話は違うが、この時代でだってきっとどこかで生きている。

「あっちで六十一歳だったから、今なら……えっと、何年だ?」

 声に出してそう言って、彼は指を折りつつ、やはり口にしながら考えた。

「三十九年前……だから、今ならいくつだ? えっと、六十一から四十引いて、一を足すと……」

 そうして思い浮かんだ年齢に、彼は少なからずの驚きを思える。

 ――二十二歳だ!

 たった三つしか違わない彼が、この時代のどこかできっと……、

 ――今も、生きているんだ!

 一気に気持ちが昂り、

 ――助けなきゃ!

 彼を救えるのは自分しかいないと、達哉は心に強く思うのだった。

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