海猫亭 CALL 2
🍱幕の内🍱
シナリオ
○山中の国道(深夜)
月が美しい夜。
遠くから近づいてくる(ヘッドライト)一台の車。
○車窓
ヘッドライトに照らされる道。
カーラジオから聞こえる雑音混じりの音声。
音声「……ある詩人は言った……真の幸福に至れるのであれば……それまでの悲しみは……エピソードに過ぎないと……」
○国道
急に止まるクルマ。
ルミ声「こんなときに故障って……なに?……ガス欠?」
クルマから出てくるルミ(シルエットのみで顔まではっきりわからない)。
近くに公衆電話をみつけ電話をする。
ルミ「もしもし。あ、編集長。実は……(雑音混じりで半分聞き取れない) え? もしもし、お願いします。あと 二、三日、お時間ください。え!明日中?無理で す、まだアポも取れてないんで……。そ、そんなぁ……」
○林の中(深夜)
懐中電灯を持ち周囲を伺い歩くルミ。
× × ×
黒い木々、打ち寄せる波など不安な情景
× × ×
○同・林の中
小走りになるルミ。
T 『スタッフクレジット』
○海猫亭の塀(深夜)
塀に沿って歩くルミ。
ランプの灯りをみつけ近寄っていく。
ルミ「あのぅ」
タロットカード「隠者」の風貌をした老婆タバサ(顔はハッキリ見えない)
振り向くタバサ、持っているランプでルミを照らす。(ルミの姿がハッキリとわかる)
タバサ「この屋敷に、何か用かい?」
ルミ、眩しそうにしながら
ルミ「……雑誌の取材で……」
タバサ「海猫亭にかい?」
ルミ「ここが海猫亭なんですね!」
明るい表情に変わるルミ。
ニヤリと嗤うタバサ。
タバサ「屋敷が出来て百年。こけらで年頃の娘が何十人も行方知れず……」
目を輝かせるルミ。
タバサ「だけんど、それがどうだってのさ」
ルミ「え」
タバサ「都会に行ったきり帰らない娘の方がずーっと多い」
対峙するランプと懐中電灯の光。
ランプの灯りの中にタイトル
T 『海猫亭 〜CALL 2〜』
波の音
○同・塀(翌朝)
「私有地 立ち入り禁止」と書かれた看板。
無視して塀を乗り越えるルミ。
○邸内
邸内を散策するルミ。
沼津垣を越えていくと庭。
○庭
庭に洋装の喪服を着た女=マリアの姿。
ピクリとするルミ。
マリア、ルミに背中を向け、椅子に座っている。
マリアの前には、軍服を着た青年将校の写真。
写真の前には可愛らしい少女の人形。
ルミ「あの……」
ルミをちらりと見て、ベルをチリンと鳴らすマリア。
タキシード姿の執事がやってきて、紅茶のおかわりを入れる。
執事「本日は、当主長男の月命日で取り込んでおります」
ルミ「失礼しました。私はこういう者で、お屋敷を取材に……」
名刺を出すルミ。
執事、名刺を手にマリアとベルを鳴らして話している。
ルミ、アリアを見る。
マリアと目が合うルミ。
マリア、ゆっくりと青い封筒=招待状を出す。
執事、お盆に取って、ルミの前にやってくる。
一礼して、ルミの耳元でささやく。
執事「真実をお知りになりたいのでしたら……、今夕。是非、アナタの、その目で、ご確認を」
招待状を手に取りじっと見つめるルミ。
微笑むマリア。
お辞儀をして去っていくルミ。
少女人形の顔。
○沼津港周辺
× × ×
海。野良猫など沼津近辺の実景。
× × ×
行き交う人たちに取材するルミ。
インタビューに答える人々。
主婦声「海猫亭!憧れじゃん!招待されたら即セレブってやばくない?」
○市場
フォークリフトに乗っている作業者
作業者声「海猫亭…?あれは税金の無駄遣いでしょ。使い道もないのに町が管理してんでしょ?」
○畑
農作業中の若者
若者声「海猫亭…、ありゃ、お化け屋敷って噂だけど」
メモを取るルミ。
手元に新聞記事のスクラップブック。
若い女性の行方不明者・失踪者の記事。
○海(夕方)
砂浜に落ちている花が波にさらわれて消えていく。
○海猫亭正門(夕方)
招待状を持ち立っているルミ。
決意に満ちた表情。
しかし、正門は閉まっている。
○同・亭内
玄関を開けて入って来るルミ。
廊下の雨戸は全て閉まっている。
チリンと呼び鈴が鳴る。
ピクリと反応するルミ。
ルミ、廊下に灯されたロウソクの炎に導かれて奥に進んで行く。
× × ×
(各部屋は鏡に反射して幻惑されるイメージ)
× × ×
○人形の部屋
囚われの少女を鏡の中に一瞬幻覚で見るルミ。
○鳥籠の部屋
鳥籠が転がり、鳥の羽が散乱している。
○揺り籠の部屋
揺り籠の中に地蔵。
○スイーツの部屋
皿の上に髪の毛。
○ラジオの部屋
白黒テレビが電源入った状態で置いてある。
近づくルミ。
画面の明かりを受け、暗闇に浮かび上がる顔。
みるみる驚愕の表情になる。
画面には『雑誌記者クビに』『不法侵入』『負け犬人生』『最後のチャンス逃す』などの文字。
○最後の部屋
マリアが背を向けて座っている。
ルミ、声をかけようと近づく。
振り返るマリアの顔。
恐怖の表情のルミ。
虚空から手が伸びてきて、茶室に吸い込まれていくルミ。
○海猫亭・庭
ハッと、我に返るルミ。
庭のテーブルに座っている。
目の前には笑っているマリアと執事。
ルミ「あ、失礼いたしました!」
混乱するルミが椅子から立ちあたりを見回すと屋敷内に少女の人影が見える。
振り返りマリアをみようとするがテーブルの向かいには誰もいない。
窓の中の少女を確認に行く。
ルミが中を覗こうとすると、少女の手が出現ガラス窓をたたく。
驚くルミ。
ガラス戸を開くと少女リナの手が伸びる。
リナの口が「た・す・け・て」と動く。
そのリナの手をルミが握った瞬間。
リナとルミが入れ替わる。
○同・縁側
入れ替わったルミ、庭みるとリナが自分を置いて去ろうとしている。
ルミ「ちょっと、待ってよ……」
手を伸ばすルミ。
○同・庭
ルミが部屋の中に飲み込まれていくと同時にゆっくりとガラス戸が閉まっていく。
走り去るリナ。
○林の中
タバサの持つランプに灯りがつく。
タバサの深いため息。
○海猫亭・庭
テーブルでデザートを食べるマリア。
執事が紅茶のおかわりを注ぐ。
テーブル上の少女人形(ルミと同じ帽子をかぶっている)。
少女人形の目から一筋の涙が溢れ落ちる。
○満月の海辺
T 『エンドクレジット』
予告編↓
https://youtu.be/kz6ZTvZzBWg
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