第73話 レイドの終わり

「葵、スキルはまだ使える?」

「はい、もちろん大丈夫です」

「悪いんだけど俺はあと一回ずつしか無理だから、フォローぐらいしか出来ない」

「わかりました。出来るだけ私が削ってみますね」

「頼んだ」


葵と相谷先輩が野崎さん達の横に立ち攻撃に加わり、俺と東山さんは後方に控える事となった。

野崎さん達の攻撃を見るが、三人の連携は非常にスムーズに見える。

攻撃を切らさない様に三人がタイミングを合わせながらスキルを順番に発動している。

野崎さんのスキルは『エアバースト』という空気の塊を炸裂させるスキルだが、どう考えてもロックタートルとは相性が悪い。

硬い装甲に風系では分が悪いが、同様に相谷さんの『アーススピア』も厳しいだろう。残りの2人は火系のスキルを使っているので、葵と連携すればなんとかなるか?

俺は状況を見ながら頭の中で戦いを組み立てていくが、思った以上にロックタートルが硬く、メンバーとの相性が悪い。

ロックタートルの甲羅を破る事は今のメンバーでは、ほぼ不可能に思えるので、狙うは頭と首だが頭部の前面も硬そうな外皮に覆われている。


『エクスプロージョン』


葵がタイミングを見計らい爆炎を放つ。


「ギュ〜ギュ〜ギュ〜」


何やら変な音が聞こえて来るが、もしかしてこれがロックタートルの鳴き声か? 巨体に見合わず妙に可愛らしい声だが、葵の攻撃に反応したのは間違い無い。


「葵、効いてるぞ!」

「はい、このまま押し切ります」


葵が『エクスプロージョン』を連発するとロックタートルは苦しんでいる様に見える。

どうやら熱さを嫌がっている様だが、外皮も心なしか黒ずんできている様にも見えるので、外皮が炭化してきているのかもしれない。


「野崎さんの『エアバースト』と葵の『エクスプロージョン』をタイミングを合わせて同時に放つ事って出来ないですか? 性質的に威力が上がる気がするんですけど」

「分かった、どうなるかわからないがやってみよう。若葉さん、一、二、三で放ってくれ」

「わかりました」


葵の『エクスプロージョン』に大量の空気と爆発力を加えてやれば普通に考えて火力が上がる気がする。


「いくぞ! 一、二、三今だ! 『エアバースト』」


野崎さんの掛け声にきっちり合わせる形で葵も『エクスプロージョン』放った。

着弾した瞬間、今までに無い規模で爆炎が発生して、ロックタートルの頭も砕け散って消滅してしまった。


「すごいな………」


自分から言い出した事とは言えこれほど上手くいくと思わなかった。

完全に威力が倍増していた。

爆炎というよりも爆発という言葉がピッタリな威力だった。


「これで終わりましたね」

「ああ、まさかまた新手が来るという事は無いだろう」

「野崎さんそれって……大丈夫なやつですか? そういう事はあまり……」

「凛くん、さすがにそれは無いと思いますよ」

「そうだな。俺も疑い深くなってるのかも。うん、これで終わりだな」


ちょっとフラグかと思い心配してしまったが、どうやら杞憂に終わったらしい。

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