第52話 ボルテックファイア
翌朝、朝ごはんを食べているとサバイバーの端末が鳴った。
『『ビ〜ビ〜』』
いつもの呼び出し音とは異なる避難警報だ。
しかも俺だけでは無く葵の端末も同じ音が鳴っているので敵はDランク以上だ。
「葵、俺行ってくるよ。これはチャンスだ」
「分かりました。危険なので私もついて行きます」
「分かった。だけど絶対にモンスターには近づかないで危なくなったら即逃げるんだ」
「ふふっ、分かっていますよ」
俺達はすぐに準備を済ませて目的地までロードサイクルを走らせる。
思った以上に近かったのですぐに目的の場所には着いたが、俺達の方が先に着いたらしく他のサバイバーの姿は無い。
「葵、モンスターから見つからない様に隠れて待ってよう」
「はい。凛くん……多分あれはCランクモンスターのドラゴネットです」
「Cランク!? そんなの倒せる奴いるのか? そもそもドラゴネットってドラゴンだよね。下手したらレイド対象じゃないのか?」
「いえ、あれがもっと大きくなれば話しは変わりますが、ドラゴンと言っても小型ですから。でもこの辺りであれを倒せるサバイバーとなるとある程度限られるとは思います」
Cランクのモンスターなんか初めてみた。
しかも小型とは言えあのドラゴン。
ドラゴンにしては小型というだけで、ゴブリンなんかと比べても遥かに大きい。
「まだ来ないな。あれ大丈夫なのか?」
ドラゴネットは周囲の建物を壊そうと暴れ始めている。
「私達では倒せません。我慢するしかないです」
葵の言う事は分かる。たかがFランクに過ぎない俺がCランクのモンスターを相手にするなど論外だ。
恐らく文字通り瞬殺されてしまうだろう。ただ周りの被害も気になってしまう。
早く誰か来ないのか?見る事しか出来ない自分に焦りを感じて来たその時、遠方からバイクの音が聞こえて来た。
ようやく来たか?
段々バイクの音が近づいてくる。
この音はまさか………
これは以前聞いた事のあるバイクの音。
しばらくすると、見た事のあるバイクとサバイバーが俺達に向かって近づいて来ているのが見える。
「神木さん……」
バイクで、向かって来たのは以前見た圧倒的な強さの『ライトニング』使いである神木仁その人だった。
颯爽とバイクで俺たちの前を通過するとバイクを止めて降り立った。
「ふ〜ドラゴネットか。気が立ってるみて〜だが、まあ問題ね〜だろ」
そう言いながら無造作にドラゴネットの方に向けて歩き出した。
「それじゃあ、着いて早速だがくたばれ! 『ライトニング』」
久々に見たオリジナルの『ライトニング』は俺の劣化『ライトニング』とは比較にならない熱量を発して落ちた。
『ライトニング』を使える様になった今だからこそ分かるが、この人はやばい。
Cランクのドラゴネットを前にしても余裕の振る舞いだ。一体この人はどれだけ強いんだ?
「あ〜一発じゃ仕留めきれなかったか。腐ってもドラゴンだな。やっぱ皮が厚い。じゃあこれでお終いだ『ボルテックファイア』」
次の瞬間なんと神木さんは『ライトニング』では無く、『ボルテックスファイア』と言う、炎を纏った雷の塊を放った。
あの人ダブルスキルホルダーだったのか……
圧倒的な火力を持つ炎雷がドラゴネットを直撃すると、爆発音と共にドラゴネットは一瞬にして消え去ってしまった。
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