このステータスプレート壊れてないですか？～壊れ数値の万能スキルで自由気ままな異世界生活～

第116話【報告に行ったギルドで待っていたのは】

　荷物の受け渡しも無事に終わり、旅の疲れからぐっすり眠った僕達は翌朝ゴルドにお礼を言ってから報告の為に冒険者ギルドに向かった。

　ーーーからんからん。

　いつもの鐘がなりいつもの風景が目に飛び込んできた。

　僕達は受付に向かいリボルテでの事を報告し、報奨金とギルドポイントの説明を受けた。

「ーーー以上になります。お疲れ様でした。」報告を終えた僕達は商人ギルドへ向かおうとした時、横の酒場から呼び止める声が聞こえた。

「すみません。オルトさんですよね？お話があるのですが時間は大丈夫でしょうか？」

　声をかけてきたのは白いワンピース風の洋服を着た、この場には不釣り合いな少女だった。

「えっと？お会いした事がありましたかね？

　それとも調薬の依頼ですか？ならばギルドを通して依頼してもらえると対応しますよ」

　どこか懐かしい雰囲気を感じながらも全く思い出せなかった僕は調薬の依頼だと考えてそう答えた。

「いえ、調薬の依頼ではないのですが大切なお話があるので二人きりで話す事は出来ないでしょうか？」

　調薬依頼でもなく、何度も「大切な話がある」と繰り返す少女に不気味さも感じたが心の奥で少女を待っていたような錯覚に捕らわれて自然と頷いていた。

「シミリ。悪いけど商人ギルドへは君一人で行ってくれないか？

　僕はこの人と話さなければいけない気持ちが強く胸を打っているんだ。

　話が終わったらいつもの宿に行くから部屋をとっておいてくれ」

　何故か僕は少女から目を離せなくなり、気がつけば後ろにいたシミリに指示を出していた。

「オルト君・・・？絶対に帰ってきてね」

　シミリは僕の態度と言葉に戸惑いながらも何かの強制力が働いていたかのごとく、仕方なく頷いて商人ギルドへ足を向けた。

「それで君は・・・？」

「ここではちょっと不都合なので場所をかえましょう」

　少女はそう言うと僕の手を掴つかんで自分に引き寄せた。

「一体なにを！？」

　僕が驚いた瞬間。僕と少女の姿が空間にのまれて消えた。

　　　＊　　　＊　　　＊

　ーーーそこは何もない世界だった。

　辺り一面真っ白でそれこそ空も無ければ地面もない。

　自分が立っているのか浮いているのかもわからないが目の前にさっきの少女がいた。

「ここは？それに君は誰なんだ？」

　僕の問いに少女は優しく微笑んで答えてくれた。

「私はこの世界を管理する女神の一人でアスカルスと言います。

　ここは私が管理する世界の隙間に位置する空間で時の狭間と言います」

「めがみ・・・女神？　もしかして僕のステータスについての説明をするために来たんですか？」

　少女は微笑みながら頷いた。

　今更ながらのテンプレ展開に不思議と怒りよりも感動が込み上げてきた。

「何で今頃になって説明に来たのですか？

　チート能力をくれるにしたって最初に説明してくれないと凄く大変だったんですからね！

　前世の時からラノベ小説を読み、夢や妄想で「転生できたらこんな能力を貰おう」と本気で考えていた自分だから無理矢理理解して今までやってこれたんですよ！」

　僕はそこまで言ってから少女に向き直り深く頭を下げて礼をいった。

「ありがとうございました」

　その言動にアスカルスは「えっ？」と戸惑いの表情を見せてオロオロしだした。

「いえ、いきなりすみません。

　でも、いろいろありながらも幸せに暮らせているのはあなたのおかげだと思うからお礼を言っただけです。

　それで話ってなんでしょうか？」

　目の前に女神が現れようが、変な空間に引っ張り込まれようが全く慌てない僕にため息をひとつついたアスカルスはひとつずつ話を始めた。

「まずは謝らないといけませんね。

　あなたの言う通り、転生する際に能力の説明をするべきでしたが、本来あなたが転生するはずではありませんでしたし、ステータスもあんなおかしな数値にはならないはずだったのです。

　と言うかあなたがあの場で死ぬ事も無かったはずなのです」

「は？」

　衝撃の事実に理解が追い付かない僕に追い討ちをかける女神。

「本当ならばあの時は人質にされていた女性が撃たれて亡くなり、私のサポートでこちらの世界に転生する予定だったのです。

　ですから急にあなたが横から『死』をかっさらっていかれて彼女のレールに強引に乗っかってしまったと言う訳なんです」

「えっ？と言うことはもしかしなくても『無駄死に』だったって事ですか？」

「いえ、確かにあなたの死は予定外でしたがあの女性は助かって寿命をまっとう出来る運命に刷り代わりましたから全くの無駄死にではなかったと思いますよ」

「そうか、そう言ってもらえると死んだかいがあるよって「死んだかい」とかなんか変な感じだが変われて良かったと思えるよ」

「では、本来ならばあり得ないほどのステータスになった原因の説明をさせてもらいますね」

　アスカルスは僕の体をスキャナのようにステータスとこれまでの記憶を読み取っていった。