第114話【運の悪い盗賊達ふたたび】
旅は順調に行ってるかに見えたが、ちょうど中間地点の休憩場所でトラブルは起きた。
道横の大木が横倒しに倒れて街道を完全に塞いでいたのだ。
それだけならば不運ですませるのだが、やはりいつもの奴等があらわれた。
「残念だが、ここは通行止めだぜ!護衛もつけていない馬車が通ると見張りに聞いた時は耳を疑ったが馬鹿が本当にいやがったぜ!」
盗賊があらわれたーーー。
「ねえ、シミリ。僕はどうやっても街を出ると盗賊を引き寄せる運命なのかな?」
「そうね。確かにちょっと遭遇する回数が多すぎる気もするわね。持ち前の運が関係するのかしら」
「回数が多いどころか毎回出てくるような気がするんだけど、たまには平穏に旅がしたいものだよね。
せっかくシミリとふたりきりでのんびり旅が出来てたのに・・・」
そう考えると自分の運の悪さよりも目の前の盗賊達が憎くなってきた。
「なに無視をしているんだ?恐ろしさのあまり気でも狂ったか?」
盗賊達は7人で倒木の反対側から馬車を囲むようにしながら近付いてきた。
「あなたたち!命が惜しかったら今すぐに武器を捨てて逃げなさい!彼を怒らせたら命の保証は出来ないわよ!」
僕が怒っているのを感じ取ったシミリが盗賊達に叫んだ。
「おっ!若い女もいるじゃねえか。こりゃ当たりだったな。
おい!男はぶっ殺せ!女は無傷で捕まえろよ!」
盗賊達が武器を構えて襲うタイミングをはかっているのを見て僕は即座に魔法を展開した。
「ウインドカッター」
僕が右手の人差し指を盗賊のひとりに向けて斜めに切る動作をするとその盗賊の体が斜めに裂けて血が吹き出した。
「ぎゃあああ!」
断末魔をあげて前のめりに倒れる男。
その声に意識をもっていかれた仲間に向けて僕は次々と魔法を放った。
「うわぁあああ!」
「ぎゃあああ!」
「ぐわぁあああ!」
あっと言うまに盗賊達は三人になった。
「ちくしょう!男の方は魔術師かよ!?ならば近接戦に持ち込め!」
残った3人の盗賊達が剣を振りかぶりながら斬りかかってきた。
僕は御者台に備え付けていたクーレリアの短剣を持つと迫り来る盗賊達の剣ごと斬った。
「ぐわぁ!」
「あとふたり!」
クーレリアの短剣はおそらく鉄であろう盗賊の剣をまっぷたつに斬ったのだ。
「おー!さすがにいい仕事してるな。これは売るのが惜しいかもしれないな」
「なによそ見してやがる!死ね!」
次の盗賊は横から水平に斬りかかってきた。
「ちょっと考え事してるんだから静かにしろよ!」
僕は手の甲に圧縮した空気を纏まとって盗賊の剣を殴った。
「バキン!ドゴッ!」
僕の拳は盗賊の剣をへし折り、そのまま盗賊の腹にクリーンヒットした。
殴られた男は数メートル吹っ飛びピクリとも動かなかった。
「ちくしょう!何なんだよお前は!」
最後のひとりになった男はきびすを返して逃げようとしたが今さら逃がすつもりもなかった僕の魔法で呆気なく倒れた。
「だから忠告したのに・・・」
「まあ、盗賊をやっている奴等がそんな忠告を素直に聞くはずもないけどな」
僕は魔法で盗賊達の死体を片付けてから倒木の撤去もしておいた。
「さすがオルト君。
この倒木の大きさだと普通の商隊だと処理出来ないで引き返すしかないわよ。
他の商隊が引っ掛かっていたら十分お礼の報酬を貰える内容よ」
シミリが感心しているのを少し照れながら聞いていた僕はシミリに言った。
「でもまあ、誰も見てないから魔法で処理出来たんだ。
普通に人前であんなことやったらすぐに噂になってしまうだろうしね。
でも、たしかにこの辺りに街、いや、村でもいいからあれば旅人や商人が安心して休めるんだろうし、やっぱり片道10日は遠いよな」
僕が考えをまとめながら出発の準備をしているとシミリがニヤニヤと笑いながらこっちを見ているのに気がついた。
「なに?僕の顔になにかついてるかい?」
「いいえ。オルト君が何かを考えてるなぁと思ってね。
大丈夫ですよ。私は何処だってついていきますからね」
「うん。ありがとう」
僕はシミリの言葉に感謝しながらカイザックへ馬車を進めていった。
そのあとは大きなトラブルもなく、僕達はカイザックの門までたどり着いたが、門で受付をしていると門兵の上役らしき男から「聞きたい事がある」と詰所に向かうように指示され、仕方なく馬車を預けて詰所に向かった。
「特に変な事はしてないよな?」
「オルト君が変なのはいつもの事ですが、別段捕まるような案件は無かったと思いますよ」
シミリは冷静に状況を分析しながら僕の横を歩いていた。
「こっちだ」
男は部屋のドアを開けて僕達を招き入れ向かいのソファーに座るように促した。
僕達が座ると男は反対側のソファーに座り話を始めた。
「先に自己紹介をしておこうか。私は門兵長のバズルという者だ。
君達はリボルテからカイザックに馬車で移動したんだってね?移動中に何かトラブルは無かったかい?」
バズルは温厚そうな笑みを浮かべて僕達にそう問い合わせた。
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