【第23話:バフ100倍】
「そう……その罠がロックオーガだったのよ!」
なるほど。因縁のある魔物だと言うのはわかった。
だからと言って、このロックオーガに挑む理由にはならないだろうと思ったのだが……。
「お姉ちゃん!? こ、このロックオーガの右目……」
「うん……間違いないわ。こいつが例の依頼のロックオーガよ」
「え? どういうことだ? フィアたちのお兄さんがやられたって言うのが、このロックオーガだと言うのか?」
「そうよ。合同の討伐依頼だったのよ。右目の潰れたロックオーガの……。それなのに、兄たちが作戦通りに誘導した場所には誰もいなくて……」
「そうなのか……。で、でも、仇を討ちたいのはわかるが、どうやって倒すつもりだ?」
「今のバフ1.5倍を貰った私の槍なら……はっ!? もう来るわよ!! ロロアは後方へ!」
「う、うん!」
くっ……この距離を一瞬で追い付いてきた。
どちらにしろオーガを倒すしか、三人一緒に生き残る道はないか……。
「正面から当たればひとたまりもない! 散開するぞ!」
「了解よ!」
突っ込んできた勢いそのままに振るってきた右手を掻い潜り、フィアと左右に分かれて挟み込むような位置取りに移動する。
オレは盾に剣の柄を激しく打ち付けて大きな音を鳴らすと、ロックオーガの注意をこちらに引き付けた。
「こっちだ!」
唸るような声をだしながらオレめがけて振り抜いた拳を間一髪で避けると、そのまま後ろに飛びのいた。
「はぁっ!!」
そこでフィアが隙をつき、ロックオーガの背に向けて渾身の突きを放った。
「きゃっ!?」
しかし、ダメージを受けたのはフィアの方だった。
背に攻撃を受け、フィアの方を振り向いたロックオーガ。
その背には小さな傷が僅かについているだけだった。
バフによって身体能力が1.5倍に高まったフィアの突きを当てても、ほぼノーダメージかよ……。
手が痺れているのだろう。
顔を少し
やはりまともに戦っても倒せそうにないな。
「だったら……まともじゃない戦いを始めるか」
オレの呟きが聞こえたわけではないだろうが、フィアも同じ考えだったようだ。
「フォーレスト! やっぱり私の攻撃じゃ無理だわ! ぶっつけになるけど、奥の手でいきましょ!!」
つまりはオレのバフで倒すというわけだ。
「わかった! オレたちが先に捕まるか、
ロックオーガはオレのバフがかかると、何が起こったのかわからなかったのか、一瞬動きを止めた。
「フィア! 死ぬ気で避けるぞ!」
「わ、わかってるわ!」
オレのバフを何度も重ね掛け出来れば、ギルドマスターのドモンが言っていたように、それが例えドラゴンでも倒せるかもしれない。
だけど、相手は高ランクの魔物だ。
数回バフを掛けた所で、倒せないだろう。
つまりは、オレがバフを掛ければかけるほど……加速度的に相手が強くなっていくという事だった。
「重ね掛け、
戸惑って動きを止めているうちに少しでも回数を稼がないと!
「重ね掛け、
「重ね掛け、
これで五倍ほどの強化がかかっているはずだが、痛みに苦しむような様子はまったく見られない。
「重ね掛け、
自分の身体に何が起こっているかわからず戸惑っていたロックオーガだったが、その原因がオレにあると感づいたのか、こちらに向かって突っ込んできた。
「は、速い!? ぅぐっ!?」
現時点でバフは7.5倍ほど。
急に身体能力が大きく上がったために、まだうまくコントロールできないのだろう。
今までとは一線を画すほどの凄まじい速さで距離を詰めてきたロックオーガだったが、オレめがけて振るった拳は、かすりもせずに大きくそれて地面を陥没させた。
これは一撃貰っただけで死にそうだ……畳み掛けないと、一瞬で殺される!!
「くっ! 重ね掛け、
これで約11倍……。
「重ね掛け、
約17倍。ここにきて、ようやくロックオーガが苦しみだした。
でも、もっとだ……もっとバフを!!
「重ね掛け、
これで25倍を超えた!
しかし、ここでロックオーガが一瞬でオレとの距離を詰め、今度は当たるに任せて薙ぎ払うように巨腕を振るってきた。
運良く避ける事には成功したが、掠っただけのオレの盾が破壊されて吹き飛んだ。
ヤバイ! 力を使いこなせなくても、こんなの掠っただけで死ぬ!?
「ぐっ!! 重ね掛け、
「重ね掛け、
バフは軽く50倍を超え、とうとう膝をつくロックオーガ。
「良しっ!! 重ね掛け、
これでバフは80倍を超えた!
「フォーレスト! 私たちの仇を!!」
「フォーレストさん!! お願いします!!」
そしてこれで……。
「バフ100倍越えだ! 重ね掛け、
オレたち三人が息を飲み、見守る中、ロックオーガは声にならない絶叫を残すと……そのままゆっくりと後ろへと倒れていったのだった。
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