【第21話:殲滅】
オレたち二人が門から集落の中心部へと向かって走っていくと、何やら騒いでいるゴブリンを見つけた。
「三匹いるわ! まだ気付いていないし、このまま行きましょ!」
「わかった! 離れている一匹はオレが受け持つ!」
二人同時に駆け出し、半分ほどの距離まで詰めた所で、ゴブリンたちはようやくオレたちの存在に気付いた。だが、もう遅い!
オレが受け持つゴブリンが慌てて腰の剣を引き抜いたが、出来たのはそこまでだ。
「はぁ!!」
気合いと共に振り下ろしたオレの剣が、ゴブリンを一刀のもとに斬り伏せた。
力任せに振り下ろたした一撃だが、身体能力の上がったオレから繰り出された一撃はゴブリンが剣を構える隙すらも与えない必殺の一撃と化した。
そしてそれは、フィアも当然の如く同じで……。
オレが一匹倒すのと同じ短い時間で、二匹のゴブリンを倒していた。
「次々行くぞ!」
そこからオレたちは、ゴブリンが状況を把握して反撃に出る前に、出会ったゴブリンを片っ端から倒していった。
道中でも思ったが、バフを受けたフィアの強さは桁違いだ。
彼女が前に言ったように、バフを受けた者の実力が高ければ高いほど、何倍もの強さに化けるのかもしれない。
冒険者ギルドの情報通り、ゴブリンの数が三〇匹ほどなら、もう半数を割っているはずだ。
道中でも倒してきているので、残りはもう一〇匹もいないかもしれない。
そう思っていたのだが……。
「もう一八匹倒したわ。この調子で……」
この調子でいきましょ! おそらくそう続けようとしたフィアの言葉は、別の物へと置き換えられた。
「……な、何よこれ……なんでゴブリンがこんなに死んでいるの!?」
そこにあったのは、ゴブリンだったものたちの残骸だった。
◆
その後、集落を見て回ったが、もうゴブリンの姿は無かった。
ゴブリンの死体の数、道中で倒した数を入れれば、その数はもう三〇匹を超えているため、この「ゴブリンの集落殲滅依頼」そのものは、完了した事になるだろう。
だけど、それを素直に喜べるような状況では無かった。
なにせ半数近いゴブリンが、オレたちの手ではなく、別のナニカの手によって倒されていたのだから。
「ロロア~! 無事で良かったわ……」
後方で待機していたロロアも今は合流し、一旦集落の中に連れてきたのだが、フィアもこのような状況で心配だったのだろう。
オレがロロアを迎えに行って連れて帰ってくると、駆け寄って抱きしめていた。
「もう! お姉ちゃん、痛いよぉ」
「ご、ごめん! でも、心配だったのよ!」
「オレもこんな状況だったからな。心配したよ」
先にロロアを迎えにいこうと言ったのだが、問題が起こったわけでもないから、作戦通り殲滅を確認してからにしようと言ったのはフィアだ。
だが、内心は心配で心配で仕方なかったはずだ。
次からは、たとえ作戦が狂おうとも、仲間の安全を優先するように話し合っておかないとだな。
「お姉ちゃん、わかったから。フォーレストさんもありがとうございます。でも……この状況は早く街に戻ってギルドに報告した方が良いかもしれませんね」
「そうだな。最後に、何か手がかりがないか集落を一回りしてから、すぐに王都へと戻ろう」
王都から近い場所だとは言え、そろそろ帰らないと王都に着く頃には日が暮れてしまう。
門が閉まるまでには十分間に合うだろうが、少し急いだほうが良いかもしれない。
「はぁ……あんまりじっくりと見たいモノじゃないけど、やっぱり調べないとダメよね……」
無残なゴブリンの死体は、何かとても大きな力によって破壊されていた。
中には原型がほとんど残っていないものも含まれており、あまりじっくりと観察して気分の良いものではない。
「仕方ない。オレが死体は調べておくから、周りを見張っていてくれ」
「え? でも……」
フィアは頑張って手伝おうとしていたが、ロロアに至ってはもう顔が青ざめてきている。ここで二人に無理をさせる意味もないし、ここはオレがちょっと我慢すれば済む話だ。
「いいから。フィアはロロアについててやってくれ」
「ありがと……その、正直ちょっとこういうの苦手だから助かるわ」
「気にするな。あっ、ロロア。そろそろバフが切れる頃だから回復魔法を頼む」
「はい! 範囲化、
だが、回復魔法の使い手がいなければ、制限時間が付く諸刃の剣だったので、中々使いどころが難しかった。
本当は『猛き大斧』にいた時でも日常的に使えたはずなのだが、
だけどバクスはオレの話を全く聞いてくれなかったので、結局今までは、
お前はそれだけ使ってろと言われたのが大きいが……。
おっと、今はもう、あいつらの事はどうでもいいな。
「ありがとう。ロロアのお陰で心置きなく1.5倍が使えるのは助かるよ」
ロロアにお礼を言って、気の滅入る作業をさっさと終わらせようとゴブリンの死体に近づいたその時だった。
「な、なに!? なんの咆哮!?」
魔物のものと思われる咆哮が、響き渡ったのだった。
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