ビブラート

 ピアノの軽やかな旋律とともに

 リズムを取りながら息を吸い込む。


「ららら~♪」


 鍵盤から手を離さずに

 椅子に座った先生は悩ましげに首を振る。


「もっとビブラートをきかせなさい」

 厳しい声でピシャリ。

「声楽の才能がないのだから

 そんな小手先に走らないで――」


 もっとオブラートでお願いします、先生。

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