第21話 こちらに来た事情

 私とロコは、アムルドさんの妹であるラナリアちゃんと対面していた。

 ラナリアちゃんは、初めはロコを怖がっていたが、少し交流して慣れることができた。

 という訳で、私達は話を再開しているのだ。


「ミナコさんのおかげで、ラナリアもロコに慣れることができましたね」

「い、いえ、別に私は特に何もしていませんよ……」


 アムルドさんは、私のことを褒めてくれた。

 しかし、私は褒められるようなことはしていない。

 ただ、ロコとラナリアちゃんが頑張ってくれただけである。


「クゥン……」

「よしよし……」


 そんな私達の会話の横で、ラナリアちゃんがロコを撫でていた。

 ラナリアちゃんはすっかりロコに慣れていた。というか、完全にロコのことを好きになっているようだ。

 そのことは、私にとってとても喜ばしいことである。ロコを好きになってもらえるのは、家族として嬉しいことなのだ。


「それにしても、ラナリアちゃんとアムルドさんは随分と年が離れていますね?」

「え? ああ、そうですね」


 そこで、私は気になっていたことを質問した。

 それは、アムルドさんとラナリアちゃんの年齢差である。

 アムルドさんの正確な年齢は聞いていないが、恐らく私と同年代だ。それに比べて、ラナリアちゃんは十歳前後である。その年齢差は、かなりあるだろう。


「お察しの通り、僕とラナリアはかなり年が離れています。ですが、僕とラナリアの間に兄弟がいますから、それを考慮すればそこまで違和感があることではないと思いますよ」

「あ、そうなのですね……」


 どうやら、アムルドさんとラナリアちゃんの間にまだ兄弟がいるらしい。

 それなら、別に違和感があることではないのかもしれない。


「それで、ラナリアちゃんはどうしてこちらに来たんですか?」

「ええ、実は色々と都合があって、しばらくこちらで預かってもらいたいということになったのです」


 私の質問に、アムルドさんはそう答えてくれた。

 ラナリアちゃんは、色々と都合があってこちらに来たようである。


「何かあったんですか?」

「ええ、実はラナリアが住んでいた屋敷が少々老朽化していまして、それを改修しなければいけなくなったのです」

「改修……それで、住めなくなってしまったということですか?」

「そういうことです。それで、僕の所に来ることになったのです」


 アムルドさんの説明で、私は理解することができた。

 ラナリアちゃんが住んでいた屋敷は、老朽化して改修が必要になったようだ。それで住めなくなったため、こちらに来たということらしい。

 恐らく、急遽改修が必要になり、急遽こちらに来ることになったのだろう。それは、仕方ないことである。


「あれ? ということは、ラナリアちゃんはしばらくこちらに住むことになるんですか?」


 そこまで考えて、私はそう思いついていた。

 住めなくなったということは、しばらくこちらに住むことになるということではないのだろうか。


「ええ、そういうことですね」

「あ、なるほど……」


 私の質問に、アムルドさんはそう答えてくれた。

 やはり、ラナリアちゃんはしばらくこちらに住むようだ。

 てっきり、私は用事があってこちらに来たと思っていた。しかし、そういう訳ではないようである。


「そういう意味もあって、ラナリアがミナコさんやロコと仲良くなれそうで良かったと思っています。これから、一緒に生活していくことになりますからね」

「あ、そうですね」


 アムルドさんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。

 ラナリアちゃんが、私やロコに慣れてくれそうで本当によかった。一緒に生活していくのに、仲良くなれないのは悲しいことだ。


「よしよし……」

「クゥン……」


 私達がそんなことを話している間も、ラナリアちゃんはロコを撫でていた。

 それだけ、ロコに慣れているということだ。

 それに、ロコの方もラナリアちゃんに対して悪くない反応をしている。恐らく、ロコの方もラナリアちゃんに懐いているだろう。

 という訳で、二人の関係については問題ないはずだ。後は、私と仲良くなってくれるかである。


「えっと、ラナリアちゃん、少しいいかな?」

「え? あ、はい。すみません、夢中になってしまって……」

「あ、いや、それはいいんだよ。謝らないで」


 私が話しかけると、ラナリアちゃんは謝ってきた。

 どうやら、ロコに夢中になっていたことを申し訳なく思っていたようだ。

 だが、それは別に問題ではない。事情はアムルドさんから聞けていたので、別によかったのだ。


「えっと、これからよろしくということを伝えたかっただけなんだ」

「あ、はい。よろしくお願いします」


 私の言葉に、ラナリアちゃんは笑顔に応えてくれる。

 この笑顔なら、きっと大丈夫なのではないだろうか。

 こうして、この屋敷に新たなる住人がやって来た。これからは、ラナリアちゃんとともに暮らしていくのだ。

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