第56話

 召喚された翌日から、僕たちはお供候補として付くことになった人と共に、ステータスを成長させるために訓練を始めた。


 中には、訓練を渋る者もいたが、その者には元の世界に変えることはほぼ不可能であることや、この世界ではステータスが強ければ強いほど有利であることを伝えると、渋々ながら訓練を開始するようになった。



 お供候補というのは、将来的に勇者の称号の強化範囲となる6人までが付くことができる、その候補者のことである。


 勇者のお供の効果は絶大で、本来勇者は常人の十数倍の技の習得率を誇るが、お供はその約8割を恩恵として受け取れるのだ。


 そのため、お供候補として付く者たちは命を捨てる程の覚悟を持って、勇者に気に入られなければならなかった。


 まあ、勇者のお供になるかならないかで勝ち組か、負け組かが決まるのであるから、当たり前ではあるのだが。



 お供候補の一人であり、この中で最も知識を持っていると自称するアノスが教えてくれた知識によると、普通の属性魔法の1つである【光属性魔法】から派生して手に入る【聖光属性魔法】はともかく、系統外魔法である【闘気魔法】の方は、彼曰く、歴史上にもほとんど存在しないほど、レアな魔法であるらしい。


 実際、明確に記録が残っているものは、わずか4件のみであり、系統外魔法全体で見ても全9種類中34件しか存在しないというほどだ。


 そのうえ、行使に膨大な魔力を消費するわりにレベルが低いうちはほとんど効果もなく、レベルもとてつもなく上がりにくい。


 そんな地雷ともいえる魔法スキルだが、一定までレベルが上がればその評価も一気にひっくり返る。


 過去に系統外魔法を極めた者たち、その者たちは皆、神話の出来事とも言えるような偉業を成し遂げていた。


 山を素手で破壊するというのは序の口、中には声だけで何万もの人を殺したり、何もない空間から大量の魔力を創り出したり、100年先の遠い地の未来をピタリと言い当てたというのもある。


 かくいう勇者召喚の魔法自体も系統外魔法の1つである【召喚魔法】を何百倍にも増幅させることによって行使した、超大規模な魔法だったりする。

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