第44話 ダンジョンマネージャー?
「頼む。見逃してほしいのじゃ。まだ産まれたばかりのダンジョンなのじゃ。」
「カレン。通常、こういう場合はどうするんだ?」
「街に近すぎて危険だから見逃すわけにはいかない。攻略してコアを砕き消滅させるのが通常だ。」
「そうだよな。スタンピードが起こったら被害が尋常ではないだろう。それに子供や駆け出しの冒険者が迷い込んだら大変だ。」
「そこは儂がちゃんと管理するから大丈夫なのじゃ。」
「ほう。ゴブリンの召喚が暴走したのに放置したのは誰だ? このままだったらスタンピードが発生していたのでは?」
「・・・。そうかもしれんが、大いに反省したのでもうこんな失態は起こさないと誓うのじゃ。」
「ちなみにダンジョンを移動させることってできないの?」
「以前、ダンジョンコアを持ち帰ろうとした冒険者がいたらしい。しかし、台座から降ろした瞬間に砕け散ったそうだ。だからコアの移動は不可能だ。」
「ダンジョンというのは神がダンジョンシード(種)を地上にばら撒くことから始まるのじゃ。なのでダンジョンの発生場所はランダムなのじゃ。それからシードが地上に辿り着くと近くにいた相性の良い精霊を取り込みダンジョンコアに進化する。取り込まれた精霊はダンジョンマスターとなり、コアと一緒にダンジョン作製していく。これがダンジョンの始まりなのじゃ。」
「そうなのか。ランダムじゃ仕方ないか。でもやはりここは壊さないとダメだろうな。」
「そんなぁ。。。」
ちょっと待てよ。
もしかして、台座から降ろしたから壊れた?
降ろさずに運び出せば良いのではないか?
「ちょっと試しても良いかな?」
「嫌な予感しかしないのじゃが。無茶はやめてくれよ?」
台座の周りを確認してみたが、床と完全に融合していて動かせる感じがしない。
台座に触れ、コアごとインベントリに収納してみた。
すぽっと台座ごとコアの姿が消えた。成功だ。
この方法は無限収納のインベントリを持つ俺だからできたことだ。
ダンジョンコア+台座のサイズと重量を収納できるマジックバックは無い。
アイテムボックススキルを持つ非戦闘員の商人を守りながらダンジョンボスと戦うのも困難だろう。
そんなことを考えているとダンジョンが地震のように揺れ始めた。
ダンジョン崩壊が始まったので慌ててコアを戻した。
「コラー!! なんてことをするのじゃ! 無茶をするなと言っただろうが!」
「でも行けそうだね。コアに何か異常は起きたかい?」
「いや、特には。。。 ダンジョン自体が亜空間に存在しているものだから、インベントリの中でも状態は変わらんようじゃ。」
「それならここは崩壊させるとして、君とコアは別の場所に移動させることは可能だな。それなら良いだろ?」
「良いのかな? わかった。別な場所で新たにダンジョンを作るとするのじゃ。町に迷惑をかけてしまうのは儂の本意ではないのじゃ。そうと決まれば引っ越しじゃ。その前にそっちの扉の奥が宝物庫になっておる。出来たばかりだから大したものは無いが攻略報酬じゃ。持っていけ。」
扉をあけるとそこには大きめの宝箱があった。
また初級ポーションかなと思いながら開けてみると金貨50枚が入っていた。
有難く金貨を頂き、コアもインベントリに収納した。
崩壊が始まったので慌てて奥にあった転送魔法陣でダンジョンの外に逃げ出した。
「娑婆の空気はうまいのじゃ。」
「え? インベントリの中なのに話せるの?」
「儂はダンジョンマスターだぞ? 亜空間の制御はプロじゃ。」
外はもうすでに夕方になっていた。
マイルームを起動し、今日はゆっくりすることにした。
「ん? ここは変わった空間じゃな。まるで別世界のようじゃ。」
「ああ、俺たちは異世界人なんだ。ここは向こうの世界をそのまま再現したような部屋になってる。」
「なるほど。確かに初めて見る魔道具がたくさんあるのじゃ。非常に興味深い。」
「そうなのか。ここ部屋の他に農園や牧場もあるから見てみるかい? というかインベントリ内なのに見えているのかい?」
「ああ。見えているぞ。儂はダンジョンマスターだからな。」
理解できないがそういうものなのだろうと納得することにした。
農園に移動した。
「ほほう。ここはダンジョンに近いな。ちょっと儂を出してくれないか。」
インベントリからダンジョンコアを出した。
すると農園の土の中にコアが台座ごと潜っていった。
「なかなか快適じゃ。儂はここで暮らしても良いだろうか? その代わり農園や牧場の管理は儂が管理するのじゃ。」
「別に構わないが、新たなダンジョンを作らなくて良いのか?」
「構わん。ここが気に入ったのじゃ。」
「わかった。でも、不便だから名前を付けさせてもらうぞ。君の名は、うーんとそうだな、メイプルにしよう。」
「儂の名はメイプルか。おっと! 力が湧いてきたぞ。これがネームド効果ってやつか。おっと、ダンジョンポイントだけでなく、名付け親の誠司の魔力でも魔物の召喚やダンジョンの設置が出来るようになったぞ。」
「俺のMPを使うのは構わないが使うときは一声頼むよ。討伐に出かける前に魔力切れになっていたら大変だからな。寝ているときなら構わんぞ。」
「了解した。誠司は儂ダンジョンマスターの主人だからダンジョンマネージャーじゃな。」
称号にダンジョンマネージャーが増えていた。
「早速だが、農園や牧場の世話を任せる魔物を召喚するからMPを使わせてもらうぞ。」
「了解だ。今日はもう休むからどんどん使って構わんよ。」
すると農園のあちらこちらにゴブリンやリザードマンのような2足歩行の魔物が現れた。
「奴らには知性を上げ、さらに水魔法と土魔法、農業を付与しておいた。」
土魔法で畑を耕し、水魔法で水やりを行っている。
収穫を行っているものもいる。
これで随分と楽になるだろう。
特にカレンには家畜の世話を任せきりだったので助かる。
牧場には牧羊犬のようにウルフが走り回っていた。
さらに上半身が人で下半身が馬のケンタウルスが家畜にエサを与えていた。
両者とも家畜に見えてしまう。
「ここの植物や動物は初めてみるものばかりじゃな。」
「それは俺たちが暮らしていた世界の生き物だからだ。」
「なるほど。よし、これだけ魔物を召喚しておけば世話の心配はないじゃろう。」
「ちなみに農地を広げることはできるのかい?」
「ん? もちろん可能じゃ。お主のMPを半分ほど使ってしまうが別階層を作ることもできるぞ。」
「それじゃ、こちらの世界の動植物を育てる階層を作ってもらえるかい?」
「了解じゃ。」
これでこの世界の材料の入手も楽になるだろう。
春菜と未来の開発も進むはずだ。
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