第38話 王様への謁見

翌朝、王都の側の森に馬車を出し、ミレーユ様とともに門へ向かった。

走っているときにはあまり気にしていなかったが、この国には森が多い。

それでパシフィックフォレストの国名になったのかもしれない。


「王女様、お帰りなさいませ。すぐに王城へ向かってください。王がお待ちです!」


門番が慌てた口調で話した。

さらに王城へ知らせに駆け出す兵士の姿もあった。


「わかったわ。どうかしたのかしら? カレン、急いで城へ向かってください。」


「了解しました。」


街中なのでスピードは出せないが、兵士が先行し人払いをしてくれたおかげでスムーズに城へ辿り着いた。

城門にはメイドさんが待機しており、すぐに謁見の間に案内された。


「お父様、只今戻りました。」


「おお! ミレーユよ。よくぞ無事戻った。魔物の群れに何度も襲われたと聞いて心配しておったのだ。」


「心配おかけしまして申し訳ございません。わたくしはケガ一つしておりませんのでご安心ください。ここにおられる誠司様たちに救っていただきました。彼らは召喚者の方々です。今回の召喚者は彼らを含め20名でした。」


「誠司殿、ありがとう。王としてではなく、ミレーユの父としてお礼をいう。本当にありがとう。儂はパシフィックフォレスト王国国王のカルロス・ローマンだ。」


「冒険者の誠司です。ただ通りすがりに助けただけですので。」


「一週間ほど前に国境の兵士が早馬で知らせに来たのだ。ボロボロの冒険者が王女の護衛の増員を頼みにきたと。残念ながらそのことを伝えてすぐにその冒険者は息を引き取ったそうだ。すぐに騎士団を派遣したのだが会わなかったか?」


「そういえば、国境を過ぎたぐらいのところで馬に乗った大人数の騎士団とすれ違った気がしますね。」>誠司


「そうなの?」>ミレーユ


「王家の馬車を見ても騎士団は気付かなかったのか?」>王


「そうみたいですね。ははは・・・。気付かなかったのはまた襲われないように私が馬車に認識阻害をかけていたからだと思います。。。」>誠司


「そんな魔法があるのか。召喚者は転生の時に神からすごいスキルがもらえると聞いたが本当なのだな。」>王


「そうですね。他にもステータスが高く、成長も早いですよ。」>誠司


「話が反れてしまったが、ミレーユの命を救い、城まで無事に連れて帰ってくれた誠司殿たちにお礼の品を贈ろうと思うが希望はあるか? 金銭でも名誉でも好きなものを言ってくれて構わない。」>王


「そうですね。私たち以外の召喚者の保護をお願いします。」


「それは当初の目的だったので問題無い。他には無いか?」


「国宝級のお宝や武器、魔道具がありましたら拝見したいです。」


「そんなことで良いのか? 欲しいものがあれば持っていっても良いのだが。」


「見せていただくだけで結構です。(コピーしちゃうけどね)」


「お父様、私ではどうでしょうか?」>ミレーユ


「ん? どういうことだ?」>王


「誠司様の元へ嫁ぎたいと思います。」>ミレーユ


「なんだと?! あれ程婚約はしないと拒絶していたミレーユが。しかし、召喚者ではあるが平民である誠司殿に王女が嫁に行くのは難しいぞ。」>王


「では、爵位を与えれば良いではないですか。」>ミレーユ


「今回の褒美として爵位を与えることにしよう。そうだな。ミレーユが嫁に行くとなると伯爵は必要だろうな。誠司殿に伯爵の位を与える。」


なんか話についていけてないうちに貴族になっていたよ。

その前に今日会ったばかりの男に娘を託して大丈夫か?


「本当に良いのでしょうか? 爵位もですが、王女様の件もです。」>誠司


「構わんぞ。このままではミレーユは嫁に行かずにいただろうからな。後で怒られるかもしれないから妻のエリザベートの意見も聞いてからになるがね。」>王


「誠司様をお母様にも紹介しなくちゃ。きっとお母様も賛成してくれますわ。」


「ここは公の場だからリビングの方に移ろう。ミレーユ、誠司殿たちをお連れしなさい。儂は今日の仕事を整理してから向かうとする。」


「わかりました。では、誠司様、行きましょう。皆さまもこちらへ。」


ミレーユの案内で城内にある王様家族のプライベート区域に移動した。

大きな扉の前に兵士が2人いて敬礼している。


「ここから先は王族のみしか入れません。セキュリティを解除しますので素早く入場をお願いします。」


ミレーユが扉にある魔法陣に触れると結界らしきものが解除され扉が開いた。

全員が通り抜けたのを確認し、反対側の魔法陣に触れ再び結界を張った。

さすが魔法の世界だけあってカギではないことに関心した。

ここには王族とお世話をする限られた使用人しかいないプライベート空間になっているらしい。


「リビングに向かいましょう。お母様が居ると思いますので。」


綺麗な廊下を進みリビングに向かった。


「お母様! 只今戻りました。」


「おかえりなさい、ミレーユ。本当に無事で良かったわ。この1週間心配で寝れなかったのよ。」


「心配をおかけしまして申し訳ございません。それで紹介いたしますわ。わたくしの命の恩人の誠司様です。ここまでの護衛もお願いしました。皆さん、とても良くしていただきました。」


「娘を救って頂き、本当にありがとうございました。ミレーユの母のエリザベート・ローマンです。」


「いえいえ。襲われているところにたまたま通りすがったのでお助けしただけですので。」


「あら? ミレーユ。あなたの髪、ツヤツヤしていない? それにサラサラね。とても良い香りもするわ。お肌もスベスベよ。長旅をしてきたとは思えないわね。やつれているはずなのに、逆に癒されてない?」


「ウフフ。気のせいですわよ、お母様。おそらく、初めて恋をしたからですわ。」


「そうなの? あなた、一生結婚しないと言っていたわよね。良い人が現れたのかしら?」


「誠司様と婚約したいと思っていますの。」


「絶体絶命のときに助けられて恋に落ちたのね。分かるわ。私もそんな出会いがほしかったわ。あの人には内緒よ。婚約の件は前向きに検討いたしましょう。」


ミレーユ様は約束を守って、母親にも俺たちの秘密を話さないようだ。

そこへメイドさんがお茶を持ってきてくれてテーブルに案内された。

この国にはソファーが無いらしい。

今度作ってあげようと思う。

椅子じゃあ寛げないしね。

ミレーユ様のマイルームでは普通にソファーで寛いでいたし問題無いだろう。


「それであちらの国の状況を聞かせてもらえるかしら。」


タイミング良く王様もリビングにやってきた。

王も含め召喚者の俺たちの置かれた状況を詳しく話した。

奴隷化し、戦争の道具にしようとしていたことも話した。

3人は自分のことのように怒りを示してくれた。

クラスメイトたちの保護も約束してくれたので良かった。

それから俺とミレーユ様の婚約も決まってしまった。


「私にはすでに心に決めた人がいます。」


「別に問題無いが。ただ、順位は考慮してもらいたい。」>王


「その事でしたら問題ありません。すでに話がついてます。わたくしが第1夫人になります。」>ミレーユ


「私が第2夫人よ。」>愛莉


「私が第3夫人です。」>春菜


「私は第4夫人です。」>未来


「そして私は第5夫人だ。」>カレン


「ちょっと待った! 愛莉と春菜はわかるが、未来とカレンがなんで便乗しているんだ?」


「男の人が憧れるハーレムってやつじゃないの。何か問題あるの?」>未来


「私も問題無いぞ。終わるはずだった命を助けてもらったのだ。残りの人生は誠司殿に尽くすぞ。」>カレン


俺の知らないところで話が進み、解決していたらしい。


「問題は無いようじゃな。とりあえず、住居を探さねばな。」>王


「私たちには異空間にプライベート空間がありますので住まいは問題ありません。ただ、いずれお世話になる他の召喚者のために土地を頂けないでしょうか。王都の外で構いませんので。」


「壁の外で良いのか? 警備の問題があるが。それでもかまわないなら門から外れた場所であれば良いぞ。」


「ありがとうございます。どうしても文化が違うため生活しづらい部分がありまして。こちらの世界に悪影響があるかもしれないので結界で囲って漏れない配慮も致します。」


「悪影響があるのか。ならばそれで頼む。」


明日からクラスメイトを受け入れる準備を行おうと思う。








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