第20話 料理人ゲット

翌日、朝食の時間を狙って城に転移した。

転移魔法は予想以上にMPを使うみたいだ。

行きは俺が使ったので帰りは愛莉にお願いしよう。


食堂に着くとクラスメイトたちが朝食を食べていた。

鑑定をかけながら料理人さんを探す。

みんなまだLv.1なので魔物を狩ってはいないようだ。

目新しいスキルも獲得できていない。

つらい訓練頑張ってください。


食堂の隅で一人ボソボソと朝食を口に運んでいる少女がいた。

おそらく、ゆるフワ系で癒し系の美少女なのだろうけど、髪がボサボサで薄汚れ疲れきっていた。残念すぎる。


*ステータス

 名前: 村瀬 春菜

 称号: 転移者

 職業: 料理人

 性別: 女

 年齢: 16歳

 レベル: 1


 スキル

  料理、アイテムボックス、家事、解体、食材鑑定、レシピ創造、火魔法、水魔法


 ユニークスキル

  料理は愛情(旨味が増す)、味覚向上


「あなたは料理人さんで間違いないかな? 俺はコレクターの田中誠司です。」


「はい。料理人の村瀬春菜です。あなたが噂のコレクターさんなのですね。」


「ご飯食べたらちょっと話があるんだ。時間もらえるかな?」


「はい、構いません。もう食べ終わりましたので、どちらでお話しましょうか?」


「では、俺のマイルームでお話しましょう。」


「了解しました。では、10分後に向かいますね。」


俺は城の割り当てられた自分の部屋からマイルームへ向かった。

愛莉がすでに待っていた。


「どうだった? 村瀬さんの印象は。」


「まだわからないわ。お話してみないと。今後一緒に行動し、城から逃亡する仲間だから慎重に判断しなくちゃね。」


マイルームのセキュリティ設定を更新し、村瀬さんが入室できるようにした。

時間通り10分後に村瀬さんが現れた。


「え? 私のお部屋と全然違うわ。」


「いらっしゃい。俺の部屋は進化してるからね。紹介するね。俺の相棒の愛莉だ。」


「賢者の三上愛莉です。よろしくです。」


おっと! 愛莉さん、人見知りが発動しましたね。


「料理人の村瀬春菜です。こちらこそよろしくです。ところでお話とは何でしょうか?」


「単刀直入だが、俺たちは料理のうまいメイドさんを探している。村瀬さんを雇いたいのだがどうだろうか? 報酬は衣食住の保証と安全だ。他にあれば相談に応じる。」


「え? 本当に単刀直入ですね。ちょっと考えてもいいですか?」


「構わない。先に職場となるかもしれないうちのキッチンを見てもらえるかな?」


「そうですね。では、拝見します。」


キッチンに招き入れた。


「うわっ、すごい!! いつから雇ってもらえるのでしょうか?! これほどの設備があれば何でも作れそうです。血が騒ぎます!」


「こちらは有難いのだけれども、そんなにすぐに決めて大丈夫? あと、食材はこの冷蔵庫型食料庫に入ってるから。無くなったら俺のスキルでいくらでも補充可能です。」


「え!? ちょっと待って! これ日本の食材じゃないですか。なんでこんなに持っているのですか?」


「それは仲間になってから説明します。今は秘密です。ところで気になってたんだけど、お風呂入ってないの?」


「入ってますよ! 女の子にその質問はひどいです! でも私、シャンプーとか石鹸を持って無いんです。私、人見知りなので声かけれなくて借りることが出来なくて。お湯で流すだけしかしてないのです。臭かったですか? ごめんなさい。。。」


「いや、そんなことないよ。かわいいのになんか残念な感じだったから。うちのお風呂に入っておいで。シャンプーもボディソープもあるから使っていいよ。」


「かわいいだなんて。。。 ありがとう。じゃあ、有難く使わせて頂くわ。」


「愛莉、案内お願いね。『下着とか困っているかもしれないから聞いてみて』」


「わかったわ。村瀬さん、こっちね。私も一緒に入ってもいいかしら?」


「はい。よろしくお願いします。」


今まで愛莉が一緒に俺の部屋で寝ていたので気にしなかったが、それぞれ個室があった方がいいよね。

自分たちのマイルームはあるだろうけど、快適な俺の部屋で暮らすことが多くなると思うし。

俺の部屋はそのままにして、愛莉と村瀬さんの部屋を増設した。

しばらくして2人が風呂から戻ってきた。


「誠司、春菜ちゃんとうまくやっていけそうよ。趣味も愛読書も一緒だったの。」


「誠司さん。何でもしますから私をここに置いてください。お願いします。キッチンもお風呂も最高です。」


「愛莉の許可も出たので何の問題も無いよ。村瀬さん、これからよろしくお願いします。」


「ありがとうございます。一生懸命頑張ります。」


「あと、ここだけの話なのだが、俺たちはそろそろ城を出るつもりなんだ。実は王様に奴隷契約魔法で奴隷にされそうになってね。村瀬さんも一緒に逃げてもらえるかな?」


「え? そうなんですか? もちろん奴隷なんて嫌です。私も逃げます。」


「じゃあ、もう戻れないから忘れ物が無いように準備をしてここに戻ってきてね。」


「はい。では城のお部屋にある私物を回収してきます。」


村瀬さんが部屋を出ていった。


「愛莉、確認だけどいいんだよね? 村瀬さんを仲間に入れても。」


「うん。問題無いよ。うまくやっていけると思う。それに春菜ちゃん、巨乳だったよ。」


「愛莉やめてよ。戻ってきたときに気になっちゃうじゃないか。」


「誠司のエッチ。それとちゃんと下着とか洋服、日用品を渡しておいたわ。あとで補充よろしくね。」


「了解。今日からおいしいご飯が食べれると思うとワクワクするね。」


「そうね。何が得意なのか聞いておけばよかったわ。」


「ただいま~♡ お待たせしました。早速だけどお昼ご飯の仕込みに入るわね。ついでに3時のおやつのお菓子も作らなきゃ。久しぶりのお料理、腕が鳴るわ。」


「こちらこそ楽しみだよ。それより、いきなり村瀬さんを連れ出したらやっぱり騒ぎになるよね? ちょっとジョイさんに相談してくるよ。2人は親睦を深めていてね。」


城に戻り、唯一の味方のジョイさんを探した。

訓練場に行ってみるとジョイさんが準備運動をしていた。


「ジョイさん、お久しぶりです。」


「おや、久しぶりだね。何か困ったことでもあったのかい?」


「はい。実は賢者の三上愛莉と料理人の村瀬春菜が仲良くなりまして一緒にパーティを組むことになったのです。それで村瀬を狩りに連れて行こうと思いまして許可をもらいにきました。もちろん、私の護衛付きですので心配なく。」


「君の護衛があるなら問題ないだろう。王や団長には俺から報告しておくよ。」


「ありがとうございます。では、お土産にオークを3頭置いていきますので皆さんで食べてください。」


「もうオークを倒せるようになったのか。有難く頂いておこう。何かあったらまた相談してくれ。」


よし、これで問題なしと。

ジョイさん、いろいろお世話になり、ありがとうございました。

俺たちはこれから逃亡します。

ごめんなさい。

ダンジョンで死んだことにしますので探さないでください。

翌日、王城にはギルドからオークジェネラル討伐の報告が届いた。

しかも俺たちの仕業であることも分かり、城中大騒ぎになったらしい。







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