第16話 貴族について話そう

 西大陸国リンドレアンは、その大陸全土を、国王を有するピッツァリア家とその近縁者が統治しているが、その体制を揺るがしかねない勢力が貴族である。

 自らの野心と実力で富と力を得た成り上がった彼らにとって、血筋と歴史の蓄積を権威と捉える王家は非常に目障りな存在であった。しかし、彼ら貴族が驚異となる理由は、その財力とは他にあった。

 それが、爵位である。

 王家が国に重要な貢献をした者に与える称号であり、それには名誉や誇りという形なきものの証明だけでなく、特定地域の統治者となる権利も付与されている。

 勿論それは、王家が許可した土地のみという限定的なものとなる筈であったが、法務担当の王族に潜んでいた王政廃止論者アンチ・ロイヤリストの策略により、その制限がうやむやのままに爵位制度が可決されてしまった。

 その王族は貴族とも繋がりを持つ裏切り者とされたが、公的にも大きな支持を得ていたために、その不祥事スキャンダル闇に葬られたが、その代償口止め料として、無制限同然となった貴族の統治権もそのまま維持せざるを得なくなった。

 こうして、悠久の歴史ある王家と彼らに代わり大陸全土リンドレアンの統治を狙う貴族との、傲慢と嫉妬に満ちた権威闘争が始まったのである。

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