第20話 とにかく可愛い魔王様

 嘘である。


 ホントは15分ほどの旅であった。



 なぜなら、最初に出会ったスライム一匹相手に全滅したったからだ(笑)


 開発者の頭とゲームバランスがおかしすぎるのだった(怒)







「うーん」




 目覚めた俺は大きく伸びをした。


 周囲を見渡すと、アオイがいて、ユーシャ一行もいた。


 うむ、魔王城の一室である。




「お、ゲーム終了? どうだった?」




 オンナーが気さくに話しかけてくる。




「いや、最低な出来だった。あのログアウトができない仕様とか、マジでクソ」




「確かに、ありゃクソだ」




 あひゃひゃひゃひゃん! と、ユーシャが癇に障る笑い方をした。


 なんやねんこいつ、俺はそう思うのだった。




「そのクソを俺たちにプレイさせた理由、聞かせてくれないか? 場合によっては……」




 俺は、ちょっとおこ気味で聞いた。


 クソつまんないうえになんかパクリ臭い設定のゲームに無駄な時間を使ってしまったのだから、それも致し方なかろう。




 クロナ、アカリ、ハナもおこだろうなぁ、と見ると……ん?




 なんか微笑んでいる。


 意味が分からない。


 そのうえなんかむかつくぜ……っ!




「わかりませんか、魔王様?」




 アオイが穏やかに微笑みながら、そう問いかけてくる。




「む……」




 分からない、魔王全然わからない。




「まったくもう、しょうがない人です」




 そういってアオイは、胸元からあるものを取り出して……




 パンッ!




 炸裂音が響く。


 そして……




「「「お誕生日、おめでとう! 魔王様ッ!」」」




 みんなが一斉にそういった。




 俺は何が何だかわからなかったが、部屋にバースデーケーキをもったなんかキモイやつが入ってきた。




「え?」




「もう、お忘れですか、魔王様。今宵は魔王様の生誕日ではないですか」




「こんな変なゲームをやっつけで作って、プレイしている間にアオイたちに準備をしてもらっていたんだぞ!」




「ご主人様お一人で、ゲームをしてもらうわけにもいかず、我々はご一緒させていただきました」




 クロナとアカリ、そしてハナが楽しそうに言う。


 言われてから、周囲を見ると、確かになんか飾り付けがされている。




 なんかのいたずらかと思っていたけど、なるほど……泣かせるではないか。




「我、別に誕生日じゃないし」




 そう、この忌々しいお約束でさえなければ。


 俺の誕生日はもうちょっと先なのだ。凹むのだぜ☆




「え、ご主人様は1,500年前のこの日、生を受け、その日に人間の勇者を血祭りにあげたではないですか。お忘れですか?」




 冷えた空気の中、ハナが言った。




「え? ……そうだっけ?」




「そうですよ。我、千年以上前にご主人様に伺いました」




 ハナが大きくうなづいた。


 ……俺じゃなくて、本来の魔王様の誕生日だったんですね……。




「ふん、なるほどな……」




 俺がかなり意味深に頷く。


 そうすると、ほかの奴らが興味深そうに俺を見た。




 かなり溜めてから……あらよっと!




「ありがとう、我、こんな風に誕生日を祝ってもらったことなかったから……うれしい!」




 頬を朱に染め、上目遣いで、鈴の音のような透き通った声で、俺、とーっても可愛く言ってやったぞ!




 この場にいる全員がむねきゅん、ときめいているぞ! がはは、計画とおりである(‘ω’)




「うふふ、魔王様ったらお可愛いこと」




「流石は魔王様ね」




「魔王様、すっげー」




「ご主人様の喜びが、我にとっても至上の喜びでございます」




 喜びの声が俺のもとに届く。


 ファンの皆がいてくれるから、俺頑張れるのー!




 もういっそのこと、全人類をファンにしてやろうかー、うぉー!!




 そうしてこの後、夜通しでサプライズ・バースデー・パーティを楽しんだのだった――




(VRMMORPG編 完)


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