第20話 とにかく可愛い魔王様
嘘である。
ホントは15分ほどの旅であった。
なぜなら、最初に出会ったスライム一匹相手に全滅したったからだ(笑)
開発者の頭とゲームバランスがおかしすぎるのだった(怒)
☆
「うーん」
目覚めた俺は大きく伸びをした。
周囲を見渡すと、アオイがいて、ユーシャ一行もいた。
うむ、魔王城の一室である。
「お、ゲーム終了? どうだった?」
オンナーが気さくに話しかけてくる。
「いや、最低な出来だった。あのログアウトができない仕様とか、マジでクソ」
「確かに、ありゃクソだ」
あひゃひゃひゃひゃん! と、ユーシャが癇に障る笑い方をした。
なんやねんこいつ、俺はそう思うのだった。
「そのクソを俺たちにプレイさせた理由、聞かせてくれないか? 場合によっては……」
俺は、ちょっとおこ気味で聞いた。
クソつまんないうえになんかパクリ臭い設定のゲームに無駄な時間を使ってしまったのだから、それも致し方なかろう。
クロナ、アカリ、ハナもおこだろうなぁ、と見ると……ん?
なんか微笑んでいる。
意味が分からない。
そのうえなんかむかつくぜ……っ!
「わかりませんか、魔王様?」
アオイが穏やかに微笑みながら、そう問いかけてくる。
「む……」
分からない、魔王全然わからない。
「まったくもう、しょうがない人です」
そういってアオイは、胸元からあるものを取り出して……
パンッ!
炸裂音が響く。
そして……
「「「お誕生日、おめでとう! 魔王様ッ!」」」
みんなが一斉にそういった。
俺は何が何だかわからなかったが、部屋にバースデーケーキをもったなんかキモイやつが入ってきた。
「え?」
「もう、お忘れですか、魔王様。今宵は魔王様の生誕日ではないですか」
「こんな変なゲームをやっつけで作って、プレイしている間にアオイたちに準備をしてもらっていたんだぞ!」
「ご主人様お一人で、ゲームをしてもらうわけにもいかず、我々はご一緒させていただきました」
クロナとアカリ、そしてハナが楽しそうに言う。
言われてから、周囲を見ると、確かになんか飾り付けがされている。
なんかのいたずらかと思っていたけど、なるほど……泣かせるではないか。
「我、別に誕生日じゃないし」
そう、この忌々しいお約束でさえなければ。
俺の誕生日はもうちょっと先なのだ。凹むのだぜ☆
「え、ご主人様は1,500年前のこの日、生を受け、その日に人間の勇者を血祭りにあげたではないですか。お忘れですか?」
冷えた空気の中、ハナが言った。
「え? ……そうだっけ?」
「そうですよ。我、千年以上前にご主人様に伺いました」
ハナが大きくうなづいた。
……俺じゃなくて、本来の魔王様の誕生日だったんですね……。
「ふん、なるほどな……」
俺がかなり意味深に頷く。
そうすると、ほかの奴らが興味深そうに俺を見た。
かなり溜めてから……あらよっと!
「ありがとう、我、こんな風に誕生日を祝ってもらったことなかったから……うれしい!」
頬を朱に染め、上目遣いで、鈴の音のような透き通った声で、俺、とーっても可愛く言ってやったぞ!
この場にいる全員がむねきゅん、ときめいているぞ! がはは、計画とおりである(‘ω’)
「うふふ、魔王様ったらお可愛いこと」
「流石は魔王様ね」
「魔王様、すっげー」
「ご主人様の喜びが、我にとっても至上の喜びでございます」
喜びの声が俺のもとに届く。
ファンの皆がいてくれるから、俺頑張れるのー!
もういっそのこと、全人類をファンにしてやろうかー、うぉー!!
そうしてこの後、夜通しでサプライズ・バースデー・パーティを楽しんだのだった――
(VRMMORPG編 完)
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