第13話 ちん〇ブラブラメンズブラ

「ぃよっし、それでは奴隷の競り市に赴くとしよう」




「はっ。我はどこまでもご主人様についてゆきます」




「うむ、ついてくるが良い、ハナよ」




「……ッハイ!」




 ハナと呼ばれたことが嬉しかったのだろう。


 可愛らしくはにかんだハナクソ。


 ふん、可憐な少女には、笑顔が良く似合うというものだ。




 そのあと俺はジャンプをした。


 編集点を作るのだ。


 そうすることで……この通り。


 着地をした瞬間には目的地である奴隷市へとついているのだ。


 なんと便利なことだろうか。




「ふぅ、龍の姿だとあっという間でも、人の姿だと中々時間がかかりますね。……ところでなぜジャンプをしたのですか、ご主人様?」




 コクリ、と首を可愛らしく傾けながら問いかけるハナ。




「あ、うん。別に」




 ふう、やれやれ全く。空気が読めないやつだ。


 俺は気まずい表情でそう言ったのだった。




「さぁ、よってらっしゃい見てらっしゃい! 今日は活きの良い奴隷がいるよー!」




 奴隷市で一際大声で客寄せしている、メンズブラのみ身に付けたち○こブラブラのおじさんに、俺は「あらよっと!」声を掛けた。




「ご主人、魔人の奴隷はいるか?」




「お、旦那。魔人がご入用ですかい? どうぞ、こいつらです」




 おひょい、という掛け声を発した奴隷商。


 魔人の奴隷が10数人程現れた。


 皆子供であり、ウヒョウ! 子供である。


……現代日本人の感覚が強く残っている俺は、子供が奴隷として売りに出されている現状に、強い忌避感を抱いた。




 この忌避感は、中々抱き心地が良い。俺は寝るときはいつもこいつ抱きしめている。


 ……恥ずかしい話、こいつが無いと俺はなかなか寝付けないのだ。




「一人なんぼなん?」




 俺は商人の町大阪で育った経験を活かし、関西弁を使って聞いてみた。


 しかし、残念ながら俺が大阪で育ったのは嘘なのだ。


 だからただの似非関西弁を話す奴なのだ、俺は。




 ……果たして。


 この選択が吉と出るか、凶と出るか。




「奴ら、生命力は強いが、やはり中々イメージが悪くて、中々引き取り手がいなくて困ってたところです。旦那がまとめて買ってくれるというのなら……安くしときますぜ」




「ほう。……他の奴隷を見たところ、相場は2,000ウホ、といったところか」




 因みに「ウホ」というのはこの国の貨幣の単位であり、大体「1ウホ」=「1ドル」だった。


 こういう時は日本円に合わせるのがお約束のはずだが、妙なところでオリジナリティを出そうとする異世界だった。


 ……ほとほと呆れるのである。




 更にちなみに。




 ハナのクエストを正規に達成していた場合は100,000,000ウホの報酬がもらえていたらしい。


 ……ギルドのおっさん、がめつすぎだろ。




「それは人の奴隷の場合の相場ですね。魔人は1,500ウホ程が平均相場ですが……在庫すべてである17人を購入して頂けるのであれば、一人当たり1割値引かせていただいて、端数を切り落として……30,000ウホでどうでしょう?」




 俺は「えーと」と呟きながら指を折って数を数える。……振りをする。


 おそらく、俺を見た商人はこの俺の行動を見ることで、「金勘定もできないカモ」と思っていることだろう。


 現に、やや戸惑った表情を浮かべているではないか。




「高い」




「ふぅ、まったくやれやれ。旦那、こっちはこれ以上まかりませんぜ?」




「ならばこれはどうだ?」




 俺はマントを翻し、ご立派なちん○んを奴隷商にご覧あそばせる。




「……っ! 良いモノ見せてもらいましたぜ、旦那。2,600,000ウホだ、これ以上はまかりません」




「ふむ。買った」




 俺はにやり、と笑う。


 ふん、所詮は程度の低い異世界人。


 金勘定もままならない、か。




「お言葉ですが、ご主人様」




「む、何だハナ?」




「1,500ウホの17人だと、25,500ウホになります。そこから1割値引くと22,950ウホです」




 俺は今度は時間をかけて、下手なミスをしないようにちゃんと計算をしてみた。


 ……やべ、恥ずかしいミスをしてたぞ、俺。




「……は? し、知ってたし。俺はお前が間違いに気付くか試しただけだし? ……よくぞ気が付いたな、ハナよ。大儀であった」




「あ、はぁ」




 俺のことを心底馬鹿にしたような目で見下すハナだった。




「……あ、ほんとだ。っべー、適当ブッコくもんじゃねぇな……」




 奴隷商が白目を剥きながらそう言った。


 何故白目を剥いているか、それが問題だ。


 いや、問題ではない。白目を剥いているのはおそらく気持ちいいからだ。


 そうに違いない。魔王の目の前で一人勝手に気持ち良くなりおって……不敬である!




 俺はもープンスカプンプン! 怒ったぞー!




「【余の命に従え】! ここの奴隷、僕にチョーダイィッ!」




「はーい!」




 右手で挙手し、左手で脇を隠すファイティング挙手スタイルが完璧な奴隷商だ。


 思わずその左手に隠された脇を舐めたくなるはずがないのだ。




「さて、ハナよ。これが基本的な交渉術だ。相手に侮らせ、油断を誘う事で最終的な利をわがものとする。……お主も我が魔王軍の兵であるのならば、覚えておいて損はあるまい」




「あー、はいはい」




 と、俺の言葉を鼻で笑うハナクソだった。




 クソが、うぜー。


 俺はハナに向かって唾を吐き捨てるが、ハナはそれを避けた挙句俺に対して情け容赦のない右ストレートをお見舞いしてきた。


 割と痛くて、俺は蹲ってゴホゴホ言っていたら、そのまま胸ぐらを掴まれて無理やり立たせられた。




「あんましよぉ……、いきんなや」




「サーセン……」




 ハナが俺に唾を吐きかけてきた。


 俺はそれを甘んじて受け、そのあとマントの裾で拭った。




「さて、茶番はここまで……ここから先が、ある意味本題だ」




 俺は気を取り直して言った。


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