8-13:獣じみた氣
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
倒さなきゃ!
倒さなきゃ!倒さなきゃ!倒さなきゃ!
倒さなきゃ!倒さなきゃ!倒さなきゃ!倒さなきゃ!倒さなきゃ!倒さなきゃ!
獣の姿をかたどった光を纏った真樹は、ただ自身の衝動の赴くままに、カグヤに向かって攻撃を仕掛ける。
爪のように鋭い形を取った覇氣を纏い、カグヤを切り裂かんと迫る。
その速度は、先程とは段違い。
猛然と突き進む速度も、振るう手足のキレも、今までの比ではなく速い。
「うわああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
「ふぅん、神氣を扱えるだけの素養は出来ていたってことね。
制御は全く出来てないみたいだけど」
「うわああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
カグヤは大きく後ろに飛んで距離を取ると、冷静に真樹のことを分析していく。
この速さは、並の武術家ではついていくことすら困難であろう。
それこそ、マスタークラスである自分のようなレベルでなければ。
「うわああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
単純な戦闘力だけでいえば、エキスパートクラスでも上位に入るレベル。
だが、確かなパワーアップを見せてるものの、その力で自分を見失ってるように見えた。
まるで手負いの獣。
さっきまで怯えた仔猫だったのが、まるで狂乱の獅子と化している。
「うわああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
咆哮を続けながら、真樹は再びカグヤへと突っ込んでいく。
…真正面から。
「けどお生憎。
そのくらいで怯むようなマスタークラスじゃないのよ♡」
カグヤは余裕の笑みを見せた。
そして、悠然とした姿勢のまま、カグヤの身体からも光が溢れ出す。
「貴女が知りたいのは、これでしょ?」
カグヤの覇氣はより強く光り輝いていく。
少し桃色じみた覇氣の光が、手から、足から、全身から溢れていく。
それが、まるで生きているみたいにゆらゆらとうねり、形を作っていく。
かつて真樹が出したような、衣の形をしてカグヤを包み込む。
巫女服の上に、更に桃色の羽衣をかたどったような姿となったカグヤ。
それは確かに真樹が思い描いていた、
「ぐ……うわああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
自分がやりたいと思っていたことを、難なくやってみせたカグヤ。
そこに対して何かを感じたのか、一瞬だけ真樹が怯んだ。
だが、すぐに理性が吹き飛んだように咆哮を上げる。
「神氣を使えるとなれば、貴女はもっと上に行ける素質があるのは間違いない。
でもね…」
「うああああああああああああああああああああああああああ!!!」
獣のごとく突っ込んできた真樹。
だが、全身に光を纏ったカグヤは、真樹を軽々といなす。
光る腕を難なく掴まれ、くるりと回された勢いで、真樹は派手に転がっていく。
「うがあああああぁぁぁっ!?」
「未熟な光で勝てるほど、マスタークラスの壁は薄くなくてよ?」
ゴロゴロゴロ、と壁際まで派手に転がっていった真樹。
だが、勢いそのままに起き上がると、両の手を体の前に合わせるように構える。
覇氣の光が真樹の手に集まっていき、巨大な塊を形成していく。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
直接攻撃は通じないと本能で感じたのかもしれない。
真樹は狂乱しながらも、別の攻撃を放とうとしていた。
覇氣の塊を飛ばす大技、極・松葉破の構えを取る。
真樹の前には光が集まっていき、それは更に肥大化していく。
あっという間に、真樹の身長を超えるほどの特大の氣弾が出来上がっていく。
ゴゴゴゴ…と凄まじい圧を放つ、氣の塊。
光り輝く大玉が、コロシアムの中に出現する。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
真樹はそれを躊躇いなく、カグヤに向かって発射した。
特大の氣弾が猛然と、巫女に向かって飛んでいく。
「それじゃあ、これでおしまいにしましょうか」
カグヤは光の衣を纏ったまま、優雅にその手を振るう。
「「「おおおっ……!?」」」
観客席からのどよめきも当然だ。
凄まじい勢いで飛んでいく巨大な光の球。
カグヤを押しつぶすかと思われたそれを、カグヤは軽々と持ち上げたのだ。
いや、正確にいうならば、彼女の操る衣に乗せたというべきだろうか。
カグヤの光の衣は形を変え、カグヤの周囲に広がっていく。
まるで新体操のリボン。
巨大な光の帯が、カグヤの動きに合わせて動いていく。
真樹の放った巨大な大玉の氣弾は、カグヤが作り出した光の帯に乗り上げる。
まるでレーンの上を走るボールのように、カグヤが出した光のレーンに沿って進み始める。
そのまま、カグヤはくるりと身を翻し、光のリボンを操作する。
桃色の光のレーンはくるりと翻り、カグヤの周囲をぐるりと回ったような形となる。
そんなレーンの上を突き進んでいく極・松葉破は……
「お返し♡」
あろうことか、真樹に向かっていく。
カグヤは自身の覇氣で作った衣で、真樹の氣弾を綺麗に跳ね返して見せたのだ。
「う、うわあああああああああああああああああああああああああっ!!」
どこぉぉぉーーんっ!!
獣をかたどった真樹の神氣に触れた瞬間、松葉破は爆発したように消し飛んだ。
コロシアム中に突風が吹き荒れる。
「きゃあああああああああああああっ!!」
その中で、真樹の悲鳴が響く。
返された自分の氣弾の直撃を受け、真樹の身体は吹っ飛んでいく。
そして、突風が収まった時……
真樹は、リングの端で倒れ込んでいた。
身体に纏っていた獣型の光はすでに無く、セーラー服までがボロボロになった女子校生ファイターは、そのまま仰向けに倒れ込んでいる。
どうやら、完全に気絶してしまったようだ。
「うふふ、神氣を使った消耗もすごいのに、自分の攻撃まで直撃を受けちゃって。
もう、立ち上がれないかしら?」
優雅に髪をかくポーズを決めながら、カグヤはほくそ笑むのだった。
「お、おぉ……!
なんだか色々と凄かったが、とにかく!
真樹がダウン!
やはりマスタークラスは荷が重かったか!?
このままならカウントを取るぞ!?」
実況の言葉にも、猫耳少女の反応は無い。
気を失った真樹に、声は届かない。
「3!2!1!」
カウントは無慈悲に進んでいく。
観客からも期待の目が注がれていく。
残念ながら、真樹を立ち上がらせようと呼びかける者はいない。
何せこの試合は、あらゆる者が彼女の敗北を期待していたのだから。
「0!
WINNER、カグヤ様ー!!
やはりマスタークラスは格が違ったー!!」
「「「FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」」」
決着は付いた。
天明戦3戦目、勝者はカグヤ。
真樹にとって初めての、明確な黒星。
観客席からも大歓声が響く。
コロシアム中が、勝者のカグヤではなく、倒れた真樹に目を向けていた。
格上相手に全力で戦った戦士への労いではなく、これから行われる辱めへの期待の眼差しを込めて。
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