3-3:嫌すぎる敗因
「なら、ここからはお互い容赦なしだね」
「おう!」
リングの上で対峙する、2人の格闘娘。
試合序盤で互いに大技を一撃ずつ食らった真樹と大山だが、まだまだ闘志を燃やしている。
このくらいで終わるような柔な子では、
「柳流し!!」
まずは真樹が、得意の連続攻撃を仕掛ける。
左手、右足、右手、左手、もっかい左手、右足、左足、右手。
変幻自在の手足が次々と繰り出されていく。
「くっ……っ……」
大山は防御を試みるが、真樹のスピードにはついていけていなかった。
腕に、足に、脇腹に、何度も攻撃を食らってしまう。
少しずつリング端に追い込まれていく大山だが……
「っ……!らぁっ、ファイアーラリアットォ!!」
「おわぁっ!?」
真樹の左手が迫るタイミングで、強引に右腕を振るった。
攻撃を食らいながらのカウンター。
至近距離で攻撃の流れを持っていた真樹は、突然の反撃に驚き、避けようとする。
だが、大山のラリアットは少し低めの位置を狙っていた。
首ではなく、胸元を狙っていたのだ。
「くふっ……」
真樹は避けきれず胸に当たり、ズサァっと足をこすらせて吹っ飛ぶ。
「おらぁぁ!!ファイアーーハンマァァ!!」
「わわっ!?」
今度は大山が追う番だ、両手を合わせてのアームハンマーで追撃を狙う。
大きな塊と化した両拳が頭をカチ割ろうと迫るが、真樹はバックステップでなんとか避ける。
「白樺旋風!」
拳を振り下ろした大山に、すかさず回し蹴りをかます。
大きな隙があるのを狙うのは必然だ。
アームハンマー直後で下がった大山の顔に向かって、真樹のハイキックが迫る。
「ぶふっ……!」
真樹の蹴りは、大山の顔に直撃。
足の甲が大山の頬を捉えていた。
だが…
「いいのかぁ、アタイにそんなもん差し出して…!」
「っ!?」
(読まれてた…!?)
確かに真樹の攻撃は通っていた。
だが、顔まで頑丈だとは予想外だった。
首に力を入れて真樹の攻撃を受け止めた大山は、そのまま真樹の脚を掴む。
(やばい…!)
折られるか、捻られるか。
とにかくこのままではマズいと、真樹は残る足で床を蹴り、飛び掛かろうとする。
「おせぇ!!おらおらおらあああ!!」
「わああああああっ!?」
だが、飛んだ真樹に対する大山の選択は、回転だった。
真樹の脚を持ったままリング中央でぐるぐると周り、真樹の身体をぶんぶん振り回す。
真樹の片足を持ってのジャイアントスイング!
大山はどんどんスピードを上げて回転していく。
真樹の身体は宙に浮いてしまって身動きが取れない。
片足だけ掴まれて、水平姿勢のままぶん回されていた。
ついでに、遠心力でスカートがエライことになっている。
「ファイアートルネェェェド!!!」
「うぁっ!!」
勢いが最高に達したところで、そのまま床に叩きつける!
大山の投げ技で、真樹は背中から床に打ち付けられた。
さすがに大きな一撃だった、痛みで動きが鈍い。
仰向けで倒れている真樹に、更に大山が迫る。
「くっ!」
「ファイアーグラァァップ!!」
大山はそのまま、真樹の上にのしかかった。
さらにそのまま、手足を絡ませて真樹の身体に押さえつける。
締め技で決めに掛かるつもりだ。
「ぶふっ!?」
おまけに、大山の胸が顔に押し付けられた。
胸による圧迫感が、真樹の呼吸を阻害する。
真樹は手足をバタつかせるが、腕はしっかり押さえつけられている。
更に、長身の大山がしっかりと乗ってしまっており、おまけに腰に足を絡ませている。
真樹の足は動くものの、大山に攻撃できず、身体を持ち上げることも出来ない。
(やばっ……抑えられた!?)
「おっと、身動きできないか!?
このままだとカウントを取るぞ!?」
「っ!?」
実況の声が聞こえて、真樹もさすがに内心で慌てだす。
(そっか…
押さえつけられて身動きできなくなっても、ダウン扱いになるんだ…!)
このゲームではよく『膝を突いたらカウント開始』と言われるのだが、より正確には『動けないと審判が判断したらカウント開始』となっている。
気絶してしまって動けない時はもちろん、足に来て立ち上がる力が無くなった時、そして技を受けた時にそれを跳ね返す力が無い時などが該当する。
まさに、締め技を食らって動けない今の真樹のように。
試合後のお楽しみのこともあるため、選手を必要以上に傷つけることは推奨されていない。
故にこのゲームでは、うまく相手を押さえつけるのが最も手っ取り早く勝利できるようにルールが設定されているのだ。
この試合、大山の方が有利なように出来ていたことに今更ながら気付く。
プロレスラーの彼女は、相手を押さえつけて戦うプロなのだから。
「真樹、動けないか!?
動けなさそうだ!!カウント入ります!!」
(ヤバイヤバイ…!)
カウントの時間が短いのも同じ理由だ。
必要以上に選手を傷つけないため、猶予時間はかなり短く設定されている。
故に、カウントが始まることは、ほぼ敗北と同義と考えられている。
観客の期待が高まる中、実況のカウントが始まってしまう。
「3!!」
「このまま終わらせるっ!!」
「むーっ!」
大山の胸に押さえつけられたままの真樹が唸る。
冗談ではない。
まだ体力は残っている、手足が絶妙に押さえられてるだけだ。
このまま押さえつけられたまま敗北など、絶対嫌だ。
(まだ私は、戦える!)
「2!!」
「すぅぅぅぅ………!」
目を閉じ、暴れるのをやめて深呼吸。
覇氣を集中させる。
体内を巡る氣力を一点に集中させる。
場所は……
(右手!)
べきべきっ!!
「いちおおおおっ!?」
カウントを続けていた実況が思わず声を上げる。
何が起きたのかが分かり、観客達も息を飲む。
「うおおっ!?」
真樹の右手の位置にある床にヒビが入っていた。
彼女が右手だけで、リングの床を破壊したのだ。
抑えつけられて腕にロクに力は入らないはず。
だが、真樹は手首から先に力を込めて、手の平と指先だけで床に穴を開け、その淵を掴んだのだ。
「っ……それがどうしたぁ!!」
大山はそれに驚きつつも、より体重を掛けてのしかかる。
たとえ右手だけが自由になったところで、他を押さえ込めば勝てると判断したのだ。
だが真樹は、リングに開いた穴を淵を掴んで力を込める。
「うおおおおおおおおおっ!!」
「「なあああああっ!?」」
真樹が雄叫びと共に起こした行動に、実況も観客も、技を掛けている大山も驚愕する。
「でやあああああっ!!!」
抑えつけられたはずの真樹の体勢が変わっていく。
ひび割れた床を掴んだ右手を力点として、真樹の身体が持ち上がったのだ。
"大山ごと"。
「おわあああっ!?」
片腕だけで、長身女子の大山が絡み着いたまま、逆立ちをしてみせたのだ。
いったいどれほどの力を込めれば出来るのか。
恐るべき怪力を見せる猫耳少女に、会場も唖然となる。
「とりゃああっ!!」
「ぐはっ!」
逆立ちしていた真樹は、そのまま身体をを振り下ろし、絡み着いていた大山を床に叩きつけた。
今度は大山が頭から叩きつけられてしまう。
さすがに痛みで手を離してしまい、その隙に真樹は大山の手から脱出した。
大山もまた頭を抑えながら真樹から離れ、体勢を整える。
再び仕切り直しだ。
「はぁ……はぁ……危なかった……!」
呼吸を整えながら、真樹は大山を見る。
あやうく窒息するところだった。
敗因:胸による窒息なんてさすがに嫌すぎる!
「ってぇ……ホントにどんな腕してやがんだ…?」
大山の方も、頭を抑えつつ真樹のことを見る。
巨体をぶっ飛ばすだけでは飽き足らず、指だけで床を破壊し、片腕だけで自分ごと逆立ちしてみせる。
綺麗な細腕からは想像できない力、裏社会ならではの常識外の力。
…強い。
相手の実力がはっきりと分かり、自然と笑みがこぼれるのだった。
「…近づいたら投げられ、締められる。
さすがプロレスラーだね」
真樹もまた、笑っている。
向こうも、力を認めてくれたのだろうか。
「けど……」
だが、お楽しみは長くは続かない。
真樹は構えを変える。
そして、顔つきを変えた。
「これは……とっておきを使うしかないかな?」
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