0-2:勝者を見る者
ヴァルキリーゲームズ。
それは、美しき女戦士達の戦い。
女性だけが選手になることができる、裏の格闘大会。
国の各地に密かに作られた闘技場には、多額の賞金を求めて美女達が集う。
そして、美しい女のもとには男が群がるのも世の常。
裏社会の格闘大会にも関わらず、こうして観客たちが多数集まる。
衆人環視の中、
己の技を。あるいは己の肉体を。
叫ぶ男達に混じって、1人の少女が観客席で静かに試合を見ていた。
未だ学生の身分である少女・
先ほど、瑠璃亜が決めに行ったことを確信し、思わずつぶやいてしまった当人である。
真樹の視線は、ずっと瑠璃亜に向けられている。
憧れの女性であり、目指す目標であり、最も超えるべき壁。
彼女にとって、この裏闘技場にやってきた目的なのだから。
「よぅ、試合は楽しめたか」
真樹の隣に、黒づくめの男がやってくる。
黒いスーツに黒いサングラス、実に怪しい服装だが真樹は特に気にした素振りは見せない。
彼がこの闘技場のスタッフであると知っているからだ。
「まぁね。今のままじゃ、実力差がありすぎる。
けどいつか、瑠璃亜さんに挑む。
その気持ちは改めて強くなったよ」
「そうかい。ま、若いのに向上心があるのはいいことだ」
怪しい身なりだがフランクに話す黒づくめ。
だが、サングラス越しにも分かる真剣な目をして真樹に問いかけた。
「そんで、この後も見ていくのかよ?」
「うん……それがせめてもの礼儀だと思うから」
そう言って、真樹はようやく視線をレイアの方に移した。
懸命に戦った、だが敗北した者。
その末路をちゃんと見届ける。
それが、端くれとはいえ一人の戦士としての礼儀だと、真樹は考えていた。
社会からほとんど黙認状態とはいえ、ここはれっきとした裏の闘技場。
人と金が集まるのには、それ相応の理由がある。
むしろ、ここからが本番。
観客たちが発する熱が、徐々に変わっているのを真樹は感じ取っていた。
「それではまず、勝者に賞金を!!」
リングに入った司会が、無駄に小奇麗な封筒を瑠璃亜に手渡す。
運営の設定した金額に加え、観客が瑠璃亜に賭けたお金を合計した額が入っているはずだ。
「ちなみに、今回の瑠璃亜へのBETは、計42億
中には10億以上賭けたお客もいるようだ!
相変わらず大人気だなぁ瑠璃亜!
これからもその美貌と強さは健在でいてくれよ!!」
「うふふ、善処するわ」
賞金を受け取った瑠璃亜は、大人な微笑みを返す。
そして観客席にも顔を向け、自分に期待した観客達に手を振っていく。
さすが、表ではトップモデルとしての顔を持つ瑠璃亜だ。
立ち姿だけでなく、仕草の一つ一つまでが美しい。
闘技場中の者達にしっかりと存在感を示した彼女は、そのまま優雅に翻しリングを降りていった。
そして、残された敗者に観客たちの視線が向けられる。
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