第69話 世界は広いの?
傍から見ればこれまで入ってきたなかで最も小奇麗な人形の中に入っているというのにテラは何処か不満げな顔をしている。
「あーあ、結局未来ちゃんお手製の人形かぁ」
「せいぜい感謝しなさいよ」
「ほら、こう言うこと言っちゃって来ると思ったからあんまり入りたくなかったんだよね」
「お二人とも嫉妬しちゃいそうなくらいに仲良しになってますねぇ」
彩夢はズズッと二人の間に入っていきさりげなーく二人の肩に手を置いた。
「さてと、これからどこに行きましょうか?取りあえずベタなところは古本屋とかおもちゃ屋さんとかですかね………どこがいいですか?」
「うーん……そうだねぇ。せっかくのあたし初めての外の世界だしベタなところに行くのはちょっと嫌な感じがするの。
うーん………人がなかなかいかなそうな所で、そんでもってあたしが行きたいようなところ………ねえ雅也君、何処がいいと思う?」
腕をグッと伸ばしてリラックスしていた雅也が急に水を向けられた。
「うん?そんなこと急に言われたってなぁ。お前の性格を完璧に把握してるわけじゃないし……」
「いやいや、雅也君ならどういうところに行きたいかを……そう、時が止まってから雅也君が一番最初に行ったところって何処だったの?やっぱり女風呂?」
にやけ顔のテラを優しくはたいた。
「んなわけないだろ……僕が最初に行ったところか……食料とかそういう生活に必要に関係なく単純に僕の興味で言ったところは………確か、刑務所」
そう言った瞬間はたかれた後でもにやにや笑っていたテラの顔がピタッと止まった。
「へぇ、マー君ったら流石知的好奇心が旺盛だね。昔っからミステリーとか好きだったし刑務官になってみたいって言ってたし」
「よく覚えてたね。まあ今は刑務官やらなんやらになりたいって思ってるわけじゃないんだよ。ただ囚人がどんな人なのか気になってさ」
「マジかぁ……」
(普通刑務所とか行く?あたしだったら絶対に行かないよ!!!ああ、雅也君だってなんかずれてるって思ってはいたけど………それでも彩夢ちゃんや未来ちゃんよりかはマシだってあたし信じていたよ………)
「はぁ」
「テラさん、どうしてそんなにため息ついてるんですか?」
「いや……雅也君まであたしとは違う世界に生きてるんだなって思って………」
「うふふ、違う世界に生きてるって単なる趣味嗜好の範疇じゃないですか。それにテラさんはまだ人生経験が浅いですから分からないかもしれないですが」
彩夢は屈託ない笑みを浮かべてピースサインまで作った。
「高校生にでもなれば雅也さんレベルのお人はいくらでもいますよ!!!!!!勿論奇人変人と言われる私だって学校に一人はいます!!!!世界は広いんですよ!!!」
「世界は広い……?」
ビックリ顔のテラであったが雅也はスーンとした顔で冷静に思考を回した。
(自分で言うのもなんだけど……多分僕と同じような奴でさえそうそうはいない。彩夢レベルの珍獣になると学校に一人いたら奇跡だろうよ)
未来は心の中で大きく胸を張っていた。
(まあ私くらいのフィジカルを持ってる人間は学校に一人どころか世界に何人いるか………いや、多分オンリーワンね!!!!珍しさで彩夢に引けはとらないわ!!!!!)
「まあ……彩夢ちゃんが言ってることに何処まで信憑性があるのかは知らないけど………でおおかげで行きたいところできたよ」
「おお、私が役に立てたなら光栄です……それで?一体どこに行きたいんですか?」
「ほら、あたしって今は人形の中に入ってるけど本当はまだ義務教育真っただ中にいるはずの可愛いガールでしょう」
「自分で可愛いって言う人に碌な奴っていないのよね」
「未来ちゃんの戯言は無視するとして………まあ義務教育中なのに学校のことを全然知らないってのはよくないでしょう。だから小学校いこっ」
テラは年相応の純真さを持ってキラキラと目を輝かせた。
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