第2話 俳句のプリンス はいぷり登場!

「僕たちは みんなの笑顔に フォーリンラ~ブっ!」


 四人の少年が叫ぶと、巨大なドームを埋め尽くした観客たちは、一斉いっせいに黄色い声を上げた。


 俳句のプリンスを標榜ひょうぼうするアイドル、はいぷり。


 いまはそのライブの真っ最中だ。


 少年たちは色違いで四色のコスチュームをそれぞれ身にまとっている。


 着物と王子様ルックを調和させたようなデザインだ。


「みんな~! 自己紹介の時間だよっ! 僕たちの俳句、みんなためのにんであげるねっ!」


 一番左の少年がセンターへ出てきた。


 黄色基調のコスチュームで、フワッとした髪の色も黄色。


 明るい弟キャラの印象を受ける。


「みんな~っ! 夏の歳時記さいじき担当、蝉川せみかわナギだよ~っ!」


「ナギく~ん!」


「ヒマワリに 僕も笑顔さ ラブずっきゅん! みんなの笑顔がヒマワリみたいだから、僕まで笑顔になっちゃうよ~っ!」


「きゃ~っ!」


 蝉川ナギが手を振ってもとの位置に戻ると、今度は一番右の少年がセンターに出てきた。


 緑色基調のコスチュームで、物静かな美少年の印象を受ける。


「みなさん! 秋の歳時記担当、紅妻べにづまハヅキです!」


「ハヅキく~ん!」


「月のごと 照らす笑顔や 恋心! みなさんの笑顔が僕を月のように照らし、僕は恋に落ちるのです!」


「きゃ~!」


 今度は浅黒い肌に銀髪の少年がセンターに出た。


 白色基調のコスチュームで、お兄ちゃんキャラの印象だ。


「君たち、寒くないかい!? 冬の歳時記担当、降星ふるほしギンガだよ! 僕がみんなを温めてあげるね!」


「ギンガく~ん!」


「降る雪の 寒けど燃ゆる 僕の恋! どんなに寒くたって、僕がみんなを思う気持ちは、あっちっちーなのさ~!」


「きゃ~っ!」


 最後に桜色基調のコスチュームの少年がセンターに出た。


 黒いメッシュがところどころ入った金髪で、不良風イケメンの印象を受ける。


「お前ら、待たせたな! 春の歳時記担当、咲良さくらサクだ!」


「サッく~ん!」


「桜より お前の笑顔に スプリィン~グッ! 桜もいいけど、お前らのほうが大好きだぜ~っ!」


「きゃ~っ!」


「よし、みんな、聴いてくれ! 俺らのテーマ、君のハートにGO Shichi GO!」


 こうして彼らはグループのメインテーマを歌い始めた。


   ♪


(蝉川ナギ ソロ)


今日も笑顔が素敵だね

このいっぱいのヒマワリみたいに

そうだよもっと笑顔を咲かそう

世界を笑顔で埋め尽しちゃえ!


Let We Let We GO! GO Shichi GO!


まぶしい太陽が呼んでるよ


Let We Let We GO! GO Shichi GO!


みんなで行こうよあの夏空へ


(紅妻ハヅキ ソロ)


枯葉が落ちたら悲しいよね

すさぶ木枯らしも冷たいな

そんなときには僕がそばにいるよ

あのお月さまが見えるでしょ?


Let We Let We GO! GO Shichi GO!


君はあんなに輝いてるんだよ


Let We Let We GO! GO Shichi GO!


みんなで飛ぼうよ夜空の向こうへ


(降星ギンガ ソロ)


どうしてそんなに悲しい顔してるの?

心に雪が降ってるのかな?

涙をふいてよ雪が降るのは

春が待ちどおしいからなんだよ?


Let We Let We GO! GO Shichi GO!


君は雪みたいにきれいだよね


Let We Let We GO! GO Shichi GO!


みんなで遊ぼう銀世界の上で


(咲良サク ソロ)


春は不思議な季節だよね

別れに出会いに忙しい

でもねそこには桜が咲いてるよ

笑顔満開春爛漫


Let We Let We GO! GO Shichi GO!


おいでよ桜の木の下へ


Let We Let We GO! GO Shichi GO!


みんなで踊ろう花びらみたいに


(サビ 全員)


そうさ 僕たちは

俳句のプリンス はいぷり

みんなには僕らがついてる

素敵な歳時記で一年中

どんなにみんながつらくても

魔法の呪文で さあ行こう


Let We GO! GO Shichi GO!

僕らの俳句でひとりじゃないよ


Let We GO! GO Shichi GO!

みんなのハートにGO Shichi GO!


   ♪


 ライブは大成功に終わり、はいぷりの面々は楽屋にはけてきた。


 すると見たことのない、彼らとは同世代くらいの女性が、神妙しんみょう面持おももちでそこに待っていた。


「あなたたちが俳句アイドル、はいぷりね?」


「そう、だけど……君、誰?」


「まさか不法侵入の方でしょうか?」


 女性の言葉に、ナギとハヅキは代わるがわる言った。


「わたしの名前はアスハ・レイ。宇宙警察の者よ」


 一同はポカンとした。


「あの、君……その、大丈夫?」


「あやしいやつなら出てってもらうぜ?」


 今度はギンガとサクが代わるがわる言葉を吐いた。


「わたしに力を貸して! あなたたちの正義の俳句で、宇宙を魔の手から救ってほしいの!」


「はあ……」


 一同はまたポカンとした。


 これが宇宙警察の新米隊員アスハ・レイと、のちに俳句戦士として戦うことになるはいぷりとのファースト・コンタクトだった――

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