第100話 プロポーズ

 俺の迂闊な行動により、修羅場が発生した。

マドンナと俺を何故かくっつけようとしていたバスケ部女子とバレー部女子は、ここぞと俺批判にまわる。


「酷いねー」


「マドンナちゃんの気持ちを弄んだんだねー」


「女の敵だねー」


 いや、勝手に君たちが煽っていただけでしょうに!


「私は恋バナが出来ればどっちでも……」


 裁縫部女子は恋バナが出来ればマドンナだろうがメガネ女子だろうがどうでも良いようだ。


「僕も転校生くんの気持ちには答えられないから、これで良かったよ」


 サッカー部女子、いろいろ違うから!

治療の責任は三つ編み女子の方だから!

それとメガネ女子に指輪渡したのはそんなつもりじゃないから!


「意外だった。てっきり三つ編みちゃん狙いだと思ってたぞ」


 腐ーちゃん、鋭い。

この中で一番解ってるのに、間違えたかって顔しないで!

ある意味、腐ーちゃんがそう認めちゃうと確定だから!


「責任取ってくれるんじゃ……」


 腐ーちゃんの言葉が意図せずヒットして三つ編み女子が泣く。

え? 責任ってラキ経由で覗いたことがバレてた?

(巨大カマキリの鎌による傷の治療で裸を見られたことです)


「違う、誤解だ! これはそんなつもりじゃ」


「そんな! 違うだなんて……、誤解だなんて……」


 うわー、メガネ女子に飛び火した!

どうする俺?

このままだと三つ編み女子とは完全に終わる。

それで良いのか? いや、良いわけがない!

ここは正直が正解か?


「ごめん、メガネ女子への特別なお土産がなくて、誤魔化そうとしてた。

指輪は他の子に渡すつもりのものだった。

それを慌ててお土産にしようとしてしまい、誤解を生んでしまった。

迂闊な行動で傷つけてしまって、ごめんなさい」


 俺が正直に告白すると、メガネ女子はジッと指輪を見つめた。


「本当だ。これは他の子へ渡す大切なものだったのね」


 どうやらメガネ女子は指輪を鑑定したようだ。

彼女のスキルだと、誰に渡すつもりの指輪だったのかもわかるようだ。


「ひっど!」


「女の敵!」


「黙ってて! イモがお似合いとかプロポーズだとか煽ったから変に拗れたのよ!」


 メガネ女子がキレた。

やり場の無い怒りが全方位に向かったような感じだ。

いつもは大人しいメガネ女子がキレると怖い。

バスケ部女子もバレー部女子も呆気にとられ黙るしかなかった。


 いや、そこは俺が全面的に悪いのだ。

余計なことをしないで、最初から謝罪して、改めてメガネ女子にお土産を買てくれば良かったのだ。


「転校生くんが、私だけにお土産が無いのを悪いと思ってくれたのはうれしい。

だけど、大切な人への指輪を使いまわすのは、絶対だめ。

有り得ない。彼女にも失礼でしょ!」


 メガネ女子はそう言うと指輪を三つ編み女子に渡した。


「え?」


 その行為に動転する三つ編み女子。


「指輪の鑑定結果に出てたわ。

三つ編みちゃんにプロポーズするための大切な指輪だってね。

私は転校生くんがハーレムでも作らない限り降りるわ」


 メガネ女子は、いくつかの爆弾発言を残して引いた。

指輪は本気のプロポーズ用。相手は三つ編み女子。

つまり俺の意中の人は三つ編み女子だとバラしていた。

さらに、メガネ女子も俺に想いを抱いていた。

そしてハーレムに参加する気がある。


「そうよ、この世界から元の世界に帰れないならば、この世界の法に従うべきよ!

転校生くん、ハーレムよ、ハーレム!」


 いやマドンナ、女子としてそれでいいのか?

その気持ちはうれしいが、俺にはハーレムは無理だぞ。

クソ親父の呪縛があるからな。


「やっぱり女の敵!」


「でも、合法なら問題ないかも……」


「ちょっと、裏切る気?」


 運動部系女子は放っておこう。

やれやれ、これで一件落ちゃ……。


「転校生くん、本当なの?」


 しまった。三つ編み女子へのプロポーズの指輪の件が片付いてなかった。

ここはもう嘘や誤魔化しは通じない。


「本当だ。それはプロポーズ用に準備した指輪だ。

俺の心には三つ編み女子しかいない。

結婚を前提にお付き合いしてください」


 遠い未来のことだと思って準備していた指輪が、なぜか今プロポーズをする切っ掛けになってしまった。

まあ、この世界、帰還が叶わなければそんな将来であって欲しいと俺は思っていた。

帰還できたならば、相手の家族との事や年齢の事もあり、急に結婚なんて言えなくなるからね。


 この一件でメガネ女子を傷付けてしまったが、むしろこれをきっかけにメガネ女子は、自分の気持ちを表に出すようになった。

そして、ハーレムアピールをしてくるようになった。

どうやらその後、彼女のギフトスキルである知識の泉が、ハーレムが合法であると教えてくれたらしい。

元々メガネ女子と三つ編み女子は仲が良く、本人たちはそれでも良さそうな雰囲気なのが困ったところだ。

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