第27話
◆梨蘭◆
「…………ん……んん……?」
……あぁ、そうか。風邪引いて学校休んで……。
時計を見ると17時。お昼過ぎからの記憶がない。
それでも、すごく幸せな夢を見てた気がする……。
でも、どんな夢だっけ。覚えてない。
枕元に置いてある体温計で熱を測る。
……37.2度。お昼すぎには39度あったから、すごく楽に感じる。
はぁ……寝間着が汗でびっしょり。シャワー浴びて着替えよ。
「……あれ? これ……プリント?」
しかも今日の日付。璃音が持って来てくれたのかしら。
とりあえず、あとでお礼のメッセージ送っとこ。
喉乾いた……リビング行こ。
階下のリビングに向かうと、カルお姉ちゃんがスマホをぽちぽち弄っていた。
「おろ? リラ、起きたー? だいじょぶ?」
「カルお姉ちゃん。うん、熱もだいぶ下がったし、大丈夫だよ」
「そかそか。今お茶入れるから、座って待ってなさーい」
さり気ない気遣い。こういう所に救われるなぁ。
椅子に座ると、お姉ちゃんが麦茶とりんごゼリーを出してくれた。
「ありがとー、買ってきてくれたの?」
「いんや、アキト君が買ってきてくれたよん」
「へぇ、アキト君が」
……………………………………………………ん?
「……あきとくん?」
「そう、アキト君」
「……真田、来たの?」
「覚えてないのん? アキト君がお見舞いに来てくれたんだよ」
と、言うことは……。
「へ、部屋に入って来たの!?」
「うん。ま、私が無理に連れてったんだけどねぃ」
そんなことはどうでもいいの!
慌てて洗面所に行き、自分の姿を見る。
おでこのひんやりシート。
汗で首に張り付いた髪。
若干の汗の匂いが染みている寝間着。
ボタンが開き
……終わった……。
三角座りしょぼんタイム。
「まあまあ、アキト君はそんなことでリラを嫌いにならないよ」
「そんなのわからないじゃない……」
「だって運命の人なんでしょ? なら大丈夫だって」
落ち込む私の頭を撫でるお姉ちゃん。
でも、やっぱり気になるものは気になるし。
それにこれは、嫌われるかどうかの問題じゃない。
みっともない所を見せてしまったという、乙女心の問題だ。
ただでさえ、ひよりとの一件で顔を合わせづらいのに、これ以上合わせづらくなるってどういうことよ……。
「本当、気にしなくてもいいと思うんだけどなぁ。アキト君のあの顔を見るに、幻滅と言うよりむしろ……」
「……むしろ? むしろ何っ?」
「むふ。ひーみーつ♡」
な、何よそれ。
……待って。なんかちょっとずつ思い出してきたような……。
「ねえお姉ちゃん。真田、私の部屋に来たのよね」
「そだよ」
「その時お姉ちゃんって……」
「チョロっとだけいたけど、あとはアキト君にお任せして出てったよん」
てことは……幸せな夢ってもしかして、寝惚けて真田に変なことしちゃったことじゃ……!?
「もうお嫁に行けない……!」
「アキト君にもらってもらいなよ」
そうなんだけど! そうじゃないの!
……いや結婚もまだ全然早すぎるとは思うけど!
「ま、あんま気にすんにゃよ。あの子、超いい子だからねん」
「お姉ちゃんに言われなくたって……」
「将来の弟なんだから、リラも仲良くするんだよ。じゃないと、私がよろしくしちゃうからねぃ」
「……えっ!? ちょ、カルお姉ちゃん!?」
「にゃははー。じゃねー」
ちょ、逃げんな!?
え、なにっ。真田のやつ、カルお姉ちゃんにまで手を出そうっての!?
確かに身なりはちゃんとしてるし、普通にかっこいいし、昔から女の子に囲まれてるから女慣れしてる感はあるけど!
こ、これはまずいわ……! 顔合わせづらいとかそんなこと言ってる場合じゃない!
もしかしたら、ひよりみたいな子が他にも……!
真田は……真田は私が守る!
「えい! えい! おー!」
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