ゴシック的描写を書き連ねたい 【不定期更新】

十一

ゴシック的描写研究 壱回目

・哀愁を抱かずにはいられない、深淵のように黒々と果てのない森林。


・幽暗な暗がりからは、世界を塗り潰すような悲鳴と、脆弱な骨の立てる静かな恐怖の音があわさり、その暗鬱さに拍車をかけているようであった。


・夜闇の中、月光に照らされる少女の胡乱な姿は美しく、ゆっくりと優雅な所作で広げたドレスの裾は、まるでコウモリが羽を広げるような、獰猛な妖艶ささえ感じられるほどだった。


・ほんの少しでも身じろぎをしてみたものなら、彼女は苦痛に全身を支配されることだろう。それもそのはず、今、彼女の細い首筋は真っ赤に腫れあがっており、じかにはめられた首枷がずれれば、その首はちぎれてしまうからである。


・フリルとギャザーがこれでもかとあしらわれた、シルバーと黒のシックなドレス。


・豪奢な黒のブーツからは、コツ、コツ、と硬質な足音が響き、赤い絨毯の上をお嬢様が歩く。


・重厚な石造りの壁は、天井から吊るされたシャンデリアの鈍い光に照らされ、瀟洒な空間を作り上げていると言えよう。


・「ああ、狂おしい! まるで私の体に、醜き悪魔が乗り移ったかのようだ! お前が狂おしいほどに愛おしく見えるのだよ! なんたる皮肉かね、お前よ‼ 私を悪魔にしたお前は、何と罪深い女なのだ‼」


・教会の周りを、不穏を告げるように何羽もの鴉が飛び交っている。


・少女は耳を塞いだ。彼女の耳には嘲笑うような音色で奏でられる音楽と、人々の笑い声が侵入を続け、それは彼女の心の深奥で撹拌され、悪魔の囁きの如く彼女を誘惑した。

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