第16話 守ってあげたい-16

 大きな拍手が響いた。由起子先生が拍手をしていた。まわりの誰もが唖然としたまま由起子を見ていた。

「えらい、よく言った。だけど、そんなこと関係ないわ」由起子

戸惑う明智にウィンクをしながら言った。

「わたし、ワルだったのよ。訊いてごらんなさい、わたしと同年代の連中に。わたしの名前を知らないやつなんていないわ。でも、何にも問題はないわ、そんなこと」由起子

「でも……」明智

「あんたには、守ってくれる人がいるじゃない。こんなにたくさん。ネ」由起子

 由起子の問い掛けに中川も、新田も坪井も立花も、それから要領を得ないまま山吹も頷いた。由起子は笑顔を浮かべて明智の肩を抱き寄せた。明智は両手で目を覆いながら由起子に身を任せた。由起子はしっかりと明智を抱き寄せながら、中川に目を向けた。中川はいつもの笑顔を返した。


         * * * 


 翌日の下校時、門が開くと間もなく校庭内にバイクが入ってきた。バイクは生徒を蹴散らすようにグラウンドを走り回った後、朝礼台の前に止まり、ライダーが叫んだ。

「明智、出てきな。それと中川っていうなめたやつも。昨日のとこで待ってるからな」

そう叫ぶと爆音とともに去って行った。

 バイクの爆音で部室の窓を開け、中川も明智も一部始終を見ていた。

「あいつバイクなんか乗って、中学生なんだろ」中川

「椎名さんはもう卒業してるから」明智

「卒業して、中坊相手にすごんでるのか。バカじゃないの」中川

「…暴力団の手伝いなの」明智

そう言うと明智は身震いをしながらイスに座り込んだ。中川は上着を脱ぎ捨てると、

「みゆきちゃんはここにいな」と言い、「新田、由起子先生に連絡して、場合によっちゃあ警察にも」中川

「おう、いいぜ。だけど中川、ひとりでは行くな。ちょっと待て」新田

「いいからいいから。じゃあ、頼んだよ」中川

中川は駆け出していった。その勢いに触発されたかのように明智が立ち上がり、中川を追った。

「おい、はるみ、由起子先生を頼む。俺は先に行くから」新田

新田も坪井も部室を飛び出した。

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