第65話 ショコラは呆然とする
「あれ、今日もいない?」
魔王の寝室に書類を持ってきたショコラは、それをリンに渡しながらキョロキョロと周りを見渡した。
いつもなら、誰かしらの気配があるのに……
「あっ。ショコラさんこんにちは」
そこに街で有名なお菓子屋の袋を持ったギルガメシュが入って来る。
「ギルガメシュ様、こんにちは」
少しモジモジしながら
「あの、宰相様……とラエン様はいつお戻りになるのでしょうか」
「さぁ、あっしもはっきりした日数は聞いてないので、ただ悪魔族の領土まで歩いて往復するだけでも結構な日数がかかるとおもうので……」
「えっ、悪魔族の領土までいってるのですか?」
「えっ、そういう説明受けてましたよね」
逆にツッコまれて、そういえば、そんな話をしていたようなと思い返す。
それからふと眉間に皺をよせ。
「宰相様はラエン様とお二人でいかれたのですか?」
と尋ねた。
「そうですけど」
突然ショコラが、ギルガメシュの胸倉を両手でつかみ上げる。胸倉をつかみ上げると言っても背丈が違うので、まるで抱っこをせがむ子供のようにギルガメシュからは見えてしまい。
「ショコラさん!」
おもわず顔を赤らめて一歩後ずさる。
しかしショコラは逃がさない。
「いいんですか、ギルガメシュ様はそれで」
「えっ?」
なぜ怒られているのかわからずギルガメシュが目を白黒させる。
「こんなの完全に育児放棄です」
「育児放棄?」
「リンちゃんが可愛そうです(ママがいないなんて)」
それからハッとした顔をする。
「まさか(駆け落ち!?)待って、そういえばラエン様って悪魔族ですよね……」
「えっ、えーと(鬼神族とは言えない)」
ギルガメシュが口ごもるのを見て、ショコラは合点がいったというように目を見開く。
(これは、ラエン様が実家に宰相様を連れ帰ったに違いない)
ガックシと肩を落とす。
ラエンの容貌はショコラでさえ綺麗だと思うのだ、同じ人族である宰相が惹かれないわけがない。
(ギルガメシュ様とリンちゃんは宰相様に捨てられたんだ!)
憐憫の眼差しを向けられ、ギルガメシュが戸惑う。
「こんなに愛くるしいのに……」
ある意味二人にそっくりなリンの頭を撫ぜながら言葉を詰まらす。
「まあ確かに(宰相様の仕事全部押し付けられて)可愛そうだと思います。でも、その分あっしが愛情注いで世話をするので」
とりあえず、ショコラもリンとただの泥人形ではなく生きている魔族としてみているのだろう、だから、こんな幼い子供に仕事を押し付けて出かけてしまった二人をそんな風に言うのだろう。
ギルガメシュが分かりますというように頷く。
「ギルガメシュ様──」
口元を抑えて目を潤ませる。
「私も、リンちゃんの育児お手伝いします。自分に子供はいませんが、姪なら世話したことありますから」
「ありがとうございます」
満面の笑みでそれに応えると、
「どうです。ちょうど休憩しようと思っていたところなんですが、一緒に」
そういってお菓子の入った袋をショコラの目の前に掲げる。
「はい。そうしましょう」
「キュ!」
リンも一声そう鳴いた。
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