第10話 宰相様は間違える
「おい、牛男」
いつもなら呼べばすぐ入ってくるのに、なかなか姿を現わさないギルガメシュに宰相が廊下に出る。
そしてどこかに立ち去ろうとしている牛男の後ろ姿を見つけ、声をかけた。
「牛男」
牛男が振り返るそして自分を指さす。
「そうだ、早く来い」
牛男がかけてくる。しかし
「宰相様」
宰相は後ろから声をかけられ飛び上がるほど驚いた。
「あれ、牛男?」
「へぇ」
宰相の後ろに立っていたのは牛男ことギルガメシュだった。
「宰相様なんだべさ」
そして今宰相に呼ばれて走ってきたのは別の牛魔族の雄だった。
「いつもの牛男は」
宰相が二人を見比べたが違いがわからない。
「いやぁ〜、イケ牛のギルガメシュさんと間違われるなんて光栄です〜」
ギルガメシュでないほうの牛男が照れたように頬を染める。
「…………」
まったく区別がつかん。とりあえず、いつもの牛男に宰相は部屋に入るように言った。
「宰相様、ずっと一緒に働いているのにあんまりですよ、それもあんな入ったばかりの若造と間違えるなんて」
ブツブツ文句を垂れる牛男ことギルガメシュ。
「まぁ、宰相様からみたらあっしたちなんか、区別がつかないのはしょうがないのかもしれませんが。あっしも毛皮のない魔族はいまいちわからないんで」
あきらめたように首を振る。
「でも、あっしは魔王様と宰相様だけは間違えませんよ」
そういいながらギルガメシュは懐から何かを取り出した。
「まぁ、でもちょうどよかったです」
「?」
そういうと、編み込みの美しい真っ赤なブレスレットと、同じ素材の赤い房飾りのピアスを片耳につけた。
「これで区別がつきますよね」
「それは、魔王様の御髪か」
「へぇ、魔王様の御髪があまりに綺麗でしたので、アクセサリーにしてみました」
にこやかにギルガメシュが言った。
「そうだな。それならよくわかる……、ギル」
「ギル?」
「牛男だとさっきみたいに牛魔族全員振り返るから……、だからお前は今からギルと呼ぶことにした。わかったな」
「へぃ」
うれしそうにギルガメシュは返事を返した。
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