第26話

 後日、レイラは悩んでいた。


「さて、ウィリアム男爵にお願いしたし、後はどこの貴族へ頼もうかしら?」


 うーんと私は考えるも、中々名前があがらない。

 こんな事ならもっと人脈を増やしておけば良かった。


「お嬢様ー!」


 すると、役場を担当していたメイドから声をかけられた。


「どうしたの?」


「実は、役場にレイラお嬢様宛にお手紙が何通も届いてるんですよ!

ほら、今お嬢様住所不特定だから」


「まあ確かに……

でも私に手紙って、今までもそんなに来たことないけれど?」


「それが、軒並み貴族の方達からでして」


 そう私は手紙を受け取る。


「アダムス家にベイリー家にキャンベル家?

他のも全部貴族達じゃない、どういうこと?」

「取り敢えず、お手紙読みましょうか」


 私は取り敢えず1通の手紙を開いて読んでみる。


「……な!?」


 そこには何とあのパーティーでの私の演説を絶賛する内容だった。


「待って、て事は他の手紙も……」


 私は宛名をもう一度確認する。

 間違いない、全てあのパーティーに出席していた貴族達だ。


「お嬢様、大絶賛じゃないですか!

やりましたね!」


 そうメイドは無邪気に喜ぶ。


「いや、何か嬉しいというより恥ずかしさが増したわ……」


 しかし、これはチャンスかもしれない。


「よし、この貴族達に交渉に行こう!」


 こうして私はアンドリューを連れて一件一件交渉しにいった。


 ……のだが。


「勿論レイラお嬢様の意見に賛成しますよ!

あの演説も、聞いててスカッとしましたし!」


「喜んで味方しますわ!

あのユーリお嬢様の事私は気に入らなかったので大賛成ですわ!」


「俺も賛成します!

正直ブラウン家はしきたりに厳しすぎて周りから浮いていましたが、あなたなら信頼できます」


 何だか、思っていた以上に絶賛されてしまった。



「なあ、あんたの演説とやらって一体……」

「聞かないでぇ!」


 アンドリューに聞かれて私は顔を赤くする。


(そう言われると余計に気になる……)


 しかし、あまりにレイラが嫌がるので、これ以上追求するのはやめた。





 一方、ユーリはダニエルのところへ足げく通っていた。


「ダニエル様、あのネックレスすっごく綺麗ですわ!私に似合うかしら♡」

「あ、ああ、良く似合ってるね……

あ、買ってあげようか?」

「ええ!いいんですか!?

嬉しい、ありがとうございます♡」

「う、うん……」


 しかし、ダニエルは困っていた。

 というのも、ユーリにあれこれとねだられて、浪費が激しいからである。


(聞いていた話と違う……我が儘なレイラお嬢様とは逆に妹のユーリお嬢様は可愛くて優しいお方だと聞いていたが……)


 しかし、いざ付き合い始めると、何だかこっちの方が我が儘娘なのでは?と思ってしまう。

 今思い返せば、レイラお嬢様のあの演説?だって内容はまともだったのかも……?


「ダニエル様?どうされましたか?

気分が優れませんか?」


 そうユーリは優しく気遣う。

 そうだ、可愛くて優しい事は確かなんだ。


「いや、大丈夫だよ」


 ダニエルは力なくそう答えた。

 レイラお嬢様と婚約していた時の方がまだマシだった、なんて思うのはやめよう。

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