第17話

「ところで、アンドリューの知り合いはどうだったの?」


 私は話題を変えようとアンドリューに尋ねる。


「ああ、まあ金が貰えると聞いてこぞって警察に向かったよ。

案の定、あんまり信じてはいなかったけどな」


 まあ、いきなり犯罪者紛いの人たちに金をやるから警察になれ、なんて誰も信じないだろう。


「まあそちらには後でお金を渡さなくちゃね。あんまり遅いと嘘だと思われてしまうし」


 それから、と私が話そうとすると、アンドリューが私の腕を掴んできた。


「この傷どうしたんだ?」


 そう言えば、腕のロープを切る為に少し切り傷が出来ていたんだった。


「ああ、ロープを切る時にちょっとね、でも傷も浅いし、気にしないで」


 私がそう言うと、アンドリューは棚から綺麗な包帯を取り出した。


 それを丁寧に私の腕に巻いていく。


「別に、そこまでしなくても大丈夫よ」

「ごめん、それでも俺の気が済まないんだ」


 どうやらアンドリューは本気で私の事を信用してくれているらしい。


 それはありがたいが、何と言うか、この前まで狂犬だったのに急に忠犬になった感じである。


 そう思うと何だか可愛らしく見えてきた。


「ありがとう。ところで、これからアンダーソン男爵の屋敷に行こうと思っていたのだけれど、いいかしら?」

「アンダーソン男爵?」


アンドリューはそう不思議そうに聞き返してきた。


「ええ、アンダーソン男爵はユーリの婚約者なのだけれど、私の予想だともう婚約破棄を申し出されてると思うのよね。

それにアンダーソン家は税務署のトップだから、減税をお願いしたくって」

「成る程、でもその格好で行って門前払いくらったりしないか?」


 そうアンドリューは申し訳なさそうに私に言う。

 確かに、私のドレスはこの1日で少しボロボロになっているし、お風呂だって入れていない。


「まあ、私が追放された事はまだ世間に公表されてないし、逆にこの格好なら私が虐げられてると泣き脅し出来るかもね」


 そう私は気楽に答える。


「そんなもんか?それに、俺は流石にそんな貴族の家に行けないし……」

「あら、それなら私がアンダーソン宅へ向かう道中に助けてくれた恩人とでも言えば大丈夫だと思うけど


それじゃあ早速行きましょうか」


 まだ行くか悩んでるアンドリューに私は手を差し伸べた。

 

「はあ、仕方ないか」


 そうアンドリューは少し照れ臭そうに手を繋ぐ。


 流石にもう前の様に腕を掴む事はなかった。

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