第2話
「いい考え?」
私はユーリの顔を訝しげに見る。
「お姉様にとってもいい提案なんですよ」
そうユーリは天使の様に微笑んだ。
私は背中がゾクゾクとする。
恐らく100%良い提案な訳がない。
「お姉様、因みに断ったら、また窓を割ってお姉様のせいにしても良いんですよ?」
そう可愛らしい笑顔のままユーリは脅してくる。
本当に、何でこんな悪女の正体がみんな分からないのだろう?
「はあ、分かったわよ、提案を飲めばいいんでしょ?」
そう言って私は妹の提案を聞いた。
それから少し時は過ぎ、私の16歳の誕生日になった。
勿論、私の誕生パーティーに婚約者のダニエルもユーリの婚約者のウィリアムも屋敷に来ていた。
それもそのはず、この誕生パーティーは私の結婚式も兼ねているからである。
そして、本来の予定ならば、私はボンド家へ今日嫁ぐ予定となっていた。
恐らく、それはそうならないだろうけれど。
案の定、ユーリの提案というものは私にとって良くないものだった。
それは。
「私、やっぱり結婚したくないです」
私が父と母に当日になって怖気つくという、馬鹿みたいな作戦だからである。
「何を言ってるのよレイラ、貴女には勿体ない様な方なのよ?
それを断るなんて!」
そう母が癇癪を起こし始めた。
「そうだぞ!レイラ、お前は何を言っているんだ!
冗談でもそんな事言うんじゃない!」
そう父も激昂しだす。
一方、ダニエルやウィリアムを始め、他の客もざわついている。
一応、ユーリ曰くダニエルもフォローしてくれるという話だったのだが。
「そんな、急に当日に言われましても困ります」
そうダニエルはおろおろし始めた。
あれ?本来なら自分も結婚出来ないと賛同する予定では?
私はふとユーリの方を見やる。
ユーリはまるで天使の様に私に微笑んだ。
しかし、私にはその顔が悪魔に見えた。
騙された。
客人の中にも私の意見に同情する様な人を連れてくると言っていたが、それも嘘だろう。
そもそも、ユーリはダニエルと付き合ってなどいない。
なら何故こんな事を言い出したのか?
ダニエルを奪う為?
それとも、私を蹴落とす為?
ふと、ユーリのお願いを思い出す。
「お姉様と私の立場を交換して欲しい」
それは、文字通りそういう事だったのか。
恐らく、ここには私の味方はいない。
みんなユーリの味方だ。
ここで私がユーリの悪行を言った所で、誰も信じてはくれない。
それどころか、火に油を注ぐだろう。
では前言撤回するか?
いや、もうこんな大勢の前で言ってしまった以上、引くに引けない。
つまり、私の人生は終わったと言う訳か。
「あーあ、もううんざり!」
私はそうみんなに聞こえる様に叫んだ。
これには流石のユーリもびっくりしたのか、目を丸くしている。
しかし、もう私にとっては全てどうでも良かった。
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