第45話 変わっていく日常
俺は山本さんの家に向かって玄関から入る。
山本さんと言うよりかは、稀子と鈴音さんとの関係はお客さんの関係では無いため、インターホーンも鳴らさずに入る。まるで自分の家の感覚だ。
俺がリビングに入ると、ダイニングの方では、昼食のたこ焼きの準備を稀子と鈴音さんがしていた。
山本さんのお母さんは、お店の方に出ている。
稀子と鈴音さんも学園生なので、積極的には働かせようとはさせない感じだ。
普段のお店は、山本さんのお母さんとパートさんで回していると聞いた。
俺があの時……、良い意味でランドセルに興味が有ると言えば、山本さんは俺を雇うつもりだったらしい……
「こんにちはとただいま!」
「稀子。鈴音さん」
「あっ、比叡君。お帰り!」
「お帰りなさい。比叡さん」
稀子、鈴音さんがそれぞれ挨拶を返してくれる。
「孝明さん……。帰って来るの遅れるらしいですね」
山本さんが連絡を入れたのだろう。鈴音さん達は山本さんの事情を知っているようだ。稀子は早速声を掛けてくる。
「比叡君。どうだった?」
「新しい、アルバイト先の見学は…?」
稀子は和やかな笑顔で聞いてくる。
「社長も良い人な感じがするし、やっていけると思う」
「そう! それは良かった!!」
「ちなみにどんなお仕事?」
「金属加工の仕事と言えば良いかな…。メインは加工品のバリ取りだって」
「ふ~ん」
「聞くだけでは、大変な仕事では無さそうだね」
「見つかって良かったね♪」
「そうだよね!」
「バリ取りと言っても、そんなに大きな物は作っていない感じだから、やっていけると思う…」
「頑張ってね! 比叡君!!」
「アルバイトでの初給料、期待しているね!!」
「うっ、うん…」
「ありがとう。稀子…」
そんな事を言う稀子だった。
……
山本さんが帰ってくるまで、稀子と鈴音さんと会話をしているが、鈴音さんが有る事を聞いてくる。
「…すると、比叡さんはこれから半年間位…、アルバイトが中心の生活ですか?」
「養成学校も秋の予定でしたからね?」
「そうですね……。その間に保育士養成学校のAO入試や願書の出願等を行って、無事に選考が通れば、10月からは保育士養成学校に通いながらのアルバイトに成るかと……」
俺はこの道に進むと決めた時、保育士養成学校から資料を取り寄せて準備は進めてきた。オープンキャンパスや説明会に参加して準備は進めている。
本当はこの町来てから行いたかったが、受付期間の影響でその様に動かなければ間に合わなかった。
前の家から赴いたので、御陰でかなりの交通費は使ったが……
「ここの保育士養成学校は、作文と書類選考で合否が決まる見たいなので、気楽と言えば気楽ですが…」
「そんな事言ってますと、足下すくわれますよ」
「楽観的考えるのは宜しくないですよ!」
鈴音さんは『めっ!』をする感じで、俺に軽く注意をする。
「そうですよね……。言葉に気を付けます」
「分からない事が有りましたら、遠慮無しに私や稀子さんに聞いて下さいね!」
「現役の学生ですし、女性ですから!」
「そうだよ。比叡君!」
「どん、どん、聞いてきてね!」
「でも…、変な事は聞かないでね……。あはは///」
稀子は元気な声で言い、鈴音さんも天使の微笑みの様な笑顔で言ってくれる。
俺は稀子よりもっと、鈴音さんの事が知りたい!!
実際は出来ないが……
「ありがとうございます。鈴音さん、稀子…」
俺が鈴音さんにお礼を言ったタイミングで、玄関が開いた音がする。
山本さんが帰ってきたのだろう。
山本さんが帰って来たので、昼食兼たこ焼きパーティーが始まる。
先に山本さんのお母さん分と、パートさんにお裾分け分を焼いてから、本格的に始める。
たこ以外にチーズや小さく切ったお餅、チョコレートやスイートコーン等バリエーション豊かで有る。
山本さん、稀子、鈴音さん、そして自分と、和気あいあいと昼食のたこ焼きを楽しんだ……
……
稀子達と楽しい時間を過ごして、夜に近い夕方……俺はアパートに戻る。
昼食と言ったが、昼食兼夕食と成った。
夜食用にお土産のたこ焼き貰ったので、小腹が空いても大丈夫だ!
お腹一杯成った腹をさすりながら畳みに寝転がり、俺は明日からの事を考える……
(明日は行政手続き……。後は―――)
火曜日からはアルバイトが始まる。
日用品等は別に買い足さなくても良いが、食材は有る程度買わなければ成らない事を思い出す。
(アルバイトが始まったら、準備しなければ成らないのは朝食ぐらいか…)
昼食はお弁当を頼む予定だし、晩ご飯は山本さんの家でお世話に成る。
(以前の仕事をクビに成ってから、2ヶ月位ブランクが有るが…、上手に遣っていけるだろうか…?)
未経験の仕事は誰だってやりたくは無い。更に保育士養成学校の学校生活が、半年後には待っているはずだ。
そう考えると少し不安には成ってくる。
今までの人生……そこまで深く考えて生きて来なかったからだ!
時間が来たら学校や仕事に行って、言われた事をこなして家に戻ってくる。
俺は怒られる事が嫌いだから、反論もせずマニュアル通りしか動かなかった。
休暇も無意味に時間を潰す事ばかりで、将来の事なんて全然考えなかった……
俺は稀子に声を掛けなかったら、今頃はどうしているのだろうか?
実家に戻っているのだろうか?
それとも、生活のために嫌な仕事を嫌々しているのだろうか?
本当にこれからやる事だらけだし、この先も大きな難関が幾つも有るはずだ。
でも…、俺はそれに
☆偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!☆
☆出会い編☆
おわり
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