第25話 新作を書こう!
藤原会長は映画の準備に奔走している。
ロケハンのため、土岐さんが住むマンションを訪れ、親戚の農地を再確認し、絵コンテに取り組んでいる。
ボクは彼とデートしたいけれど、お誘いはかからないし、映画制作の邪魔をするのもはばかられる。
ボクは新作小説を書こう!
どんな物語を書こうかな?
尾瀬さんが教えてくれたSF新人賞の応募規定を調べた。
創元SF短編賞。広義のSF短編を募集。枚数は40字×40行で10〜25枚。
ハヤカワSFコンテスト。400字詰原稿用紙100枚〜800枚程度。単行本で刊行とかメディアミックス展開とか書いてある。
確かに、尾瀬さんの言うとおり、作家デビューに直結しているのは、ハヤカワSFコンテストのようだ。
でも募集しているのは長編小説。ボクは長編を書き上げたことがない。
まぁとにかく挑戦してみよう。
村上春樹様はエッセイ集「職業としての小説家」で次のとおり書いている。抜粋する。
「小説がうまく軌道に乗ってくると、登場人物たちがひとりでに動き出し、ストーリーが勝手に進行し、その結果、小説家はただ目の前で進行していることを書き写せばいいという、極めて幸福な状況が出現します。そしてある場合には、そのキャラクターが小説家の手を取って、彼あるいは彼女を、前もって予想もしなかったような意外な場所に導くことになります」
春樹様スゲー。
でもこれがボクの理想だ。
ボクは小説を書くとき、あまりガチガチには設定やストーリーを考えない。そうすると書いててつまらないし、キャラが魅力的に動かない。ストーリーの奴隷のようなキャラになって、結局書くのをやめてしまうことになる。
思いつくままに書いても、途中でネタが尽き、挫折することになるのだが。
まぁ書く前から悩んでいては始まらない。
SF小説を書こう!
世界観、キャラクター、あらすじを考える。
何も思い浮かばない。
ボクの場合、アイディアはお風呂に入っていたり、散歩していたり、よい睡眠がとれて起きた瞬間なんかに、天から降ってくることが多いんだよね。
無理矢理ひねり出したものはたいていつまらない。
でもそんなことでは職業作家にはなれないよね。
好きな映画のことでも考えてみよう。何かヒントがあるかもしれない。
宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」。腐海という終末的世界観が独特で、ヒロインのナウシカが格好よくて、可愛かった。
庵野秀明総監督の「シン・ゴジラ」。政治家などの登場人物たちの言動に引き込まれ、ゴジラ対自衛隊のアクションに目を見張った。
そんな物語が書きたい。
うーん。
ハードル高いな。
駿監督も庵野監督もプロの中のプロ。掛け値なしの天才。
「猛虫使いの彼女」というタイトルを思いついた。
怪獣みたいな猛虫が現代日本で暴れ回る。猛虫と心を通わせられるのは、ひとりの女の子だけ・・・。
これは、パクリか?
いや、オマージュだよ。
宮崎駿様と庵野秀明様へのリスペクトを込めた作品。もちろんボクのオリジナル要素で満たさなければならない。
ボクはタイトルとわずかなイメージだけ降りてきた「猛虫使いの彼女」について想いをめぐらせた。
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