スイートルームをご利用!

マナさんとミレイさんに抱き付かれた上に頬擦りしてくる。


「あの…離れてくれると助かるんだけどぉ……」


「マナが離れたら退きます」


「ミレイ様が退いたら離れてあげる!」


「そんなことされたら一生離れられないじゃんっ‼︎」


「クゥ〜ン……クゥ〜ン……」


ルルがミレイさん達を羨ましそうな顔で俺の周りをウロチョロしている。後で構ってあげるから我慢してくれ!


「もぉ〜……私達は食事をするんだから、カイリから離れなさい」


「食事? もしかしてカイリちゃん達はノービスさんのところで食事するの?」


プルンッ⁉︎


プル太郎が「そうだよ!」て言いたそうな感じに震えた! 伝わらないと思うけどさ。


「そうだけど……」


「ちょうどよかったわぁ。私達も話題になってるノービスさんところのレストランに行こうとしていたのよ!」


「ワァー…ホントニグウゼンダナァー……」


「マナさん棒読みになってない⁉︎」


てか目が泳いでいるし!


「まぁちょうどいいタイミングって言えば、ちょうどいいタイミングね。バルグ商会の人にも話をしたかったのよ」


「話をしたかった? 私達に?」


「ええ…詳しい話はお店の中でしましょう」


「わかったわ」


ミレイはサニーにそう返事をすると、カイリの手を握りながらゼラフが経営するレストランへと入って行く。


「いらっ……ッ⁉︎ よくお越し下さいました! カイリ様」


……あれ? 俺、この人と知り合いだっけ?


「えっとぉ〜……どちら様でしたっけ?」


「アナタ様のことはゼラフ会長からお話をお伺いしております。他の方はお連れ様でしょうか?」


「あ…はい」


「ではお席にご案内致しますので、私に付いて来て下さい」


「わ…わかりました」


何にも言えないまま、付いて行くことになっちゃったよ。


「流石カイリ!」


「頼りになるわねぇ〜」


「ノービスくんにも一目置かれる存在なって……私、カイリちゃんのことを誇りに思うわ」


ミレイさん母親みたいなことを言うね!


とカイリは思いながらも従業員の後ろを付いて行くと4人掛けのテーブルを通過し、ドアの前に案内された。


ドア? ここにゼラフさんがいるのか?


なんて思っていると従業員はドアを開き、俺達の方を向いた。


「どうぞ、こちらの部屋へ」


「えっ⁉︎ いや……ここって、スイートルームじゃないんですかっ⁉︎」


個室に高そうなテーブルとイスが用意されていて、内装も豪華となればスイートルームしかないだろう!


「はい! 仰る通りです!」


イヤイヤイヤイヤイヤ⁉︎ 仰る通りですじゃねぇよっ‼︎


「俺はスイートルームに案内されるほどの人間じゃないよ! てか使用料取られるでしょ‼︎」


「カイリ様でしたら無料ですよ」


「何故に?」


「アナタ様のおかげでメニューが増えた上に、集客数も大幅に上がりましたから」


あ〜……そう言えばアイスクリームを作っている時に、料理を5つぐらい教えたっけ。


「ワァ〜イ! スイートルームで食事だぁ〜‼︎」


「マナ、少し落ち着いて。アイリちゃんがビックリしちゃうから」


ミレイさんはそう言うと、お腹をさすった。


うん……本当に親バカだよなぁ〜。


「入りましょうカイリ」


「えっ⁉︎ でもぉ〜……」


「私もお腹が減っちゃったのよ」


「えっ⁉︎ お腹減っちゃったって……ちょ、ちょちょっ⁉︎ サニーさん!」


有無も言わさない! と言う感じで、スイートルームへと押し込まれてしまった!


「キャンッ⁉︎」


プルンッ⁉︎


「〜〜〜♪」


ルル達の方は「ごはんだ! ごはんだぁ〜っ⁉︎」って感じでスイートルームに入って行ってしまった。


「……ねぇ従業員さん」


「はい。何でしょうか?」


「ここにゼラフいるかしら?」


「はい、いますが……どうかなされましたか?」


「ゼラフを呼んで欲しいの。ブンゼがカイリに目を付けたって言ってちょうだい」


従業員はブンゼと言うワードで一瞬だけ目を見開いた気がした。


「かしこまりました。至急ゼラフ様に話を通して来ます」


従業員はそう言うとゼラフさんのところへ行くのか、廊下へと出て行ってしまった。


「スイートルームで食べるのも久しぶりねぇ〜。実家にいた頃以来かしら?」


「実家? ああそっか! サニーさんって元々貴族だったんでしたね」


「エルフ社会で言うところの。って言葉が付くけどね」


「……キャンッ⁉︎」


ルルが「ごはん欲しい〜〜〜……」と言いたそうな鳴き声を上げながら、カイリの脚に前足を乗せて見上げる。


そのウルウルした目が保護欲を唆るぅううううううっ!⁉︎


「今用意してくれてるから、ちょっと待っててね」


カイリはそう言いながら、ルルを膝の上に乗せて頭を撫でる。


……プルンッ⁉︎


今度はプル太郎が「ズルイッ⁉︎」みたいなことを言ってテーブルの上に乗って身体をクネクネさせる。


もしかしてルルに嫉妬したのか?


「プル太郎も可愛いよ」


カイリはそう言うとプル太郎の身体を撫で始める。


「〜〜〜♪」


今度はファニーちゃんが「交ぜてぇ〜‼︎」と言いたそうな声を上げながら、カイリの頬に頬擦りした。


ホントみんな可愛い子達だよ! こんなに可愛い従魔と出会えたのは、転生してくれたサクラ様のおかげだ! サクラ様ありがとうございますっ‼︎


「オ〜ッホッホッホッホッ⁉︎ 気にするでないぞ!」と嬉しそうな声が聞こえた気がする。


「よしよしぃ〜……いい子いい子…………ん?」


今「私は? 私はどうですか?」ってエイリィンの声が聞こえて来た気がする。

……そう言えば存在自体忘れてた。ゴメンね。


「……ニュオッ⁉︎ く、くすぐったい⁉︎ イヒヒヒッ⁉︎ ファ、ファニーちゃん! 首をくすぐるのを止めてくれ!」


思い老けてたらファニーちゃんに悪戯されたっ⁉︎


そんなことを思った瞬間、「カイリさん酷いよぉおおおおおおおおおおおっっっ!⁉︎ うわぁぁぁああああああああああああんっっっ‼︎⁉︎」と鳴き叫ぶ声が聞こえて来た。


あ〜……もう! はいはいありがとうございました! エイリィン様ありがとうございました! お礼を申し上げます! …これでいいでしょ? お礼を言ったんだから文句を言わせねぇぞ。


……と感謝の言葉を述べた筈なのに「言い方が雑です! 言い直して下さいよぉおおおおおおおおおおおおっっっ‼︎⁉︎」って感じの声が聞こえて来た。


一々構ってるとキリがねぇ……。気にしないでいよう。


「そんなっ⁉︎ カイリさん酷いですっ!⁉︎」なんて言葉も聞こえて来た気がするけど気にしない。…うん、気にしない方向でいこう!


「……ねぇカイリちゃん。ルルちゃん達と遊ぶのもいいけど、何を食べるか決めなきゃダメよ」


「へ? ……あっ⁉︎」


顔を上げてみたらメモを持った従業員が側にいた。


「あっ⁉︎ ゴメンなさい! ルル達にご飯と俺にミートパスタとアップルジュースを下さい」


みんなに迷惑掛けちゃったよ。……あとエイリィン! 泣き声がうっさいから、黙ってくれないか!


「うわぁああああああんっっっ‼︎⁉︎ 嫌ですぅううううううっ!⁉︎ カイリさんに意地悪して迷惑掛けますぅううううううううううううっっっ‼︎⁉︎」


……エイリィンなりの復讐が来たよ。


「……かしこまりました。ではお食事のご用意をしますので、少々お待ち下さい」


従業員はそう言って頭を軽く下げると、スイートルームを出て行った。


「料理楽しみねぇ〜……」


「そんなことよりも! サニー! さっきの話は本当なの?」


「さっきの話? もしかして、話聞こえてた?」


「私の耳を舐めて貰っちゃ困るよ! あのクズ商人のブンゼがカイリに目を付けたって!」


「ええっ⁉︎ その話本当なの?」


お…おう……ブンゼの話にミレイさん達が食い付いた!


「……事実よ」


サニーさんの答えに、ミレイさん達は表情を凍り付かせた。

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