ゼラフ邸でスイーツ作り!

ゼラフさんの邸宅にやって来たカイリ達は厨房へと案内されるが、さっきからマナが引っ付いていて歩きづらいのだ。


「あの…そろそろ離れてくれるかな?」


「やだもぉ〜ん!」


マナさんはゼラフさんに警戒しているのか、俺に抱き付いたままゼラフ達を仕切りに睨んでいるのだ。


「マナさん……いい加減威嚇する止めよう。ゼラフさん達が困ってるよ」


「何を仕出かすか分からないヤツらだから、警戒を怠らないだけ!」


「いや……さっき話したんだけど、マナさんが言うような酷い人達じゃないと思う。むしろいい人達だった」


「ムゥ〜……」


マナは不貞腐れたような顔になるとカイリに顔を擦り付ける。


「キュ〜ンッ⁉︎」


その姿を見ていたルルも対抗するように、カイリの脚に身体を擦り付け始めた。


「うう〜ん……これじゃあスイーツが作れないなぁ」


「スイーツ?」


「あれ? マナさんにスイーツを作るから邸宅へ行く。って話さなかったっけ?」


「えっ⁉︎ そうなのぉっ!⁉︎」


どうやらゼラフさんを警戒するあまり、話を聞いてなかったっぽいな。


「そうそう。アイスクリームを作るから離れてくれない?」


「……分かった。でもゼラフ! もしカイリに変なことをするんだったら、私容赦しないからっ‼︎」


「へ…変なことはしないから、睨まないで欲しいんだなぁ〜」


うん…会ったときから思ってたけど、ゼラフさんって小心者なんだな。そんなことよりも、アイスクリームを作る準備をしないと……。


「とりあえずは大きいボールとそれよりも小さいボールを用意して下さい」


「あ…はい! ボールは確かここにぃ……」


バザルはそう言って厨房の戸棚を開けて探している中、カイリは万物の書を開いてアイスクリームのレシピを見る。


「それと、牛乳とバニラエッセンス。粉ゼラチンにぃ……後は砂糖も必要で、牛乳は100mlと50mlと分けて下さい」


「分かりました。シェフ、手伝ってくれないか?」


「あっ、はい!」


こうしてカイリがバザル達に指示を出して料理をしていくのだが、最終工程で事件が起こった!


「にじゅうろく…にじゅうなな…にじゅうはち…にじゅうきゅぅ…さんじゅう……はい。マナさん交代」


「ええっ⁉︎ もう時間? カイリもしかてズルしてない?」


「ズルしてしてない! 早く交代して!」


そう料理長が途中まで手伝ってくれていたのだけれども、「こんなんでスイーツになるかぁ⁉︎」と言って途中で投げ出してしまい、カイリとマナとバザル。それにゼラフで作ることになった。


「一応忠告するけど早く数えるのはダメだからね。それに固まって来てるから、これでラストスパートだと思う。だから頑張ってくれ」


「うぐっ……1…2…」


マナさんはゲッソリした顔でかき混ぜ始める。


アイスクリームって、固まって来ると重いんだな。


バザルさんに目を向ければ疲れたのか水を飲んでいて、ゼラフさんに至っては最初のかき混ぜでバテてしまい、戦力外通知を言い渡された。


「うう〜……カイリ。もうそろそろいい感じじゃない?」


マナさんはそう言いながら、ボールの中みを見せて来る。


「ああ…うん。ちゃんと固まってるから、もう大丈夫そうだ」


「完成?」


「うん。アイスクリーム完成だ!」


「ぅう〜ん……やっと終わったぁ〜〜〜っ⁉︎」


アイスクリームが入ったボールを高らかに掲げて喜ぶマナさん。


「……キャンッ⁉︎」


「〜〜〜♪」


プルンッ⁉︎


ルル達も喜んで……あれ?


ルル達の方に顔を向けて見ると、何と俺達と同じことをしてアイスクリームを作っていたのだった!


「もしかして……マネして作ったのか?」


プルンッ⁉︎


「うん!」と言いたそうな返事をプル太郎がするので、念の為に中身を見て確認してみる。


「……ちゃんとアイスクリームになってる」


でも見よう見真似で作ったものだから味がどうなのか……。


「……カイリ!」


「…ん?」


「アイスクリームは放っておくと溶けちゃうんでしょ。早く分けて食べないとダメじゃない?」


ああ…そうだった!


「小分けして食べようか……マナさん、用意したお皿に分けてくれ」


「まっかせなさぁ〜いっ!」


マナさんはそう言うとアイスクリームを皿に乗せていく。


もしかしてマナさん……俺を守るっていう目的を忘れてないか?


「最後のは全部このお皿に乗せて……っと! 準備完了!」


マナはそう言うと手に持っていた調理器具を置き、最後にアイスクリームを入れた皿を手に取った。


ああ……量が多いヤツを先取りしたよ、この人。


そんなことを思いつつも、ゼラフさん達にアイスクリームが乗った皿を渡した。


「それじゃあ、試食といきましょうか!」


「「「はぁ〜いっ!」」」


あれ? 何か小学生達がお礼を言ってるような感じになってる。


そう思いつつも、皿に乗せているアイスクリームをスプーンで掬い上げて口へと運ぶ。


「ん〜……美味しい!」


この味…まさしくアイスクリームだぁっ‼︎


「冷たぁ〜〜〜いっ⁉︎ でも甘くて美味しいぃっ‼︎」


「牛乳でこんな美味しい食べ物を作れるとは……ゼラフ会長!」


「うん…このアイスクリームはボクのレストランに採用することにするんだなぁ〜」


やった! アイスクリームが採用された‼︎


「でもぉ……後味が甘ったるいと言う人がいそうだけど、そこら辺は改良出来そうだね。

それに色んな味付けが出来そうだから、シェフに言って試すんだなぁ〜」


そのシェフ……て言うか、料理長はどっかに行っちゃったんだよなぁ〜……。


そんなこと思いながら残っているコック達を見てみると、興味津々な顔でアイスクリームを見つめている。


「……キャンッ⁉︎」


プルンッ⁉︎


「〜〜〜♪」


……あ⁉︎ ルル達はルル達でアイスクリームを分けて美味しそうに食べてる。

てか出来たのルル達が料理出来るって凄くない? 俺内心驚いてるぞ! ……っとぉ。そんなことよりもだ!


「一口食べてみますか?」


「えっ⁉︎ ……いいんですか?」


「まぁ…レシピが増えるし、それに作るのはコック達だから味を知っておかないと……」


「はぁ……それじゃあ、お言葉に甘えて……」


コック達はそう言うとカイリが持っているアイスクリームの皿から、スプーンを刺して一口食べる。


「っ⁉︎ これは!」


「美味しいですね!」


「しかも冷たい! 夏場にいいですね!」


うんうん。好評でよかった! ……ん? ちょっと待てよ。


「皆さんアイスクリームを食べてみて、どう思いました?」


「これなら売れると思いました!」


「毎日食べたいです!」


「冷たくて甘いのがクセになりそうです!」


バザルさんを含めてコック達の意見が揃った。まぁ高評価なのはいいことだけれども、言葉に肝心なところがない。


「ゼラフさんはどう思いますか?」


「美味しいと思ってるよぉ。ただ、さっきも話したように後味が気になるから改良を加えたいし、トッピング次第では味の違うアイスクリームを作れると思ったんだなぁ〜」


「そう! それだっ‼︎」


「そ…それって?」


「ゼラフさんは味の改善点や改良点を思い付く! だからその舌を活用すればレストランをよりよく出来ると思う!」


カイリの言葉にバルザを含め使用人達がハッ⁉︎ と気が付いた顔になる。


「言われてみれば確かに……」


「調味料の分量が少し多かったときも、たった一口で気が付いてましたね」


バルザはそう言うとゼラフへ顔を向ける。


「ゼラフ様。我々の商会の今後は料理店に専念致しましょう」


「えっ⁉︎ そんなことしたら、お父様達が守って来たツテが……」


「ゼラフ様。前会長は“ゼラフがやりたいと思えることをやればいい。それか得意なことを仕事にすればいい。”と仰ってましたよね?」


「う…うん」


「ですので、ゼラフ様の好きな食べのものを扱う商会にしましょう」


バルザの言葉にゼラフは、迷っているのか目を左右に泳がした後、バザルを見つめる。


「……うん。ボクも覚悟を決めたんだなぁ〜。今後は大好きな食べものを扱う商会として頑張って行こうと思うんだなぁ〜!」


「ゼラフ様!」


「今まで迷惑を掛けてゴメンなんだなぁ〜。ボク、頑張るよ!」


ゼラフの言葉にバルザは目に涙を浮かべ、嬉しそうな顔をさせる。

そうゼラフ商会現会長がゼラフが決意を改めた瞬間だった。

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