プル太郎のご奉仕と60万

「……違う。これも違う。……ここら辺じゃなさそうだ」


そう呟きながら万物の書を開きページをペラペラとめくっていくと、気なる箇所を見つけた。


「もしかして、これのことか?」


武器と防具の強化リストのところに、[弾の強化錬成]と書かれていたページがあった。


「〜〜〜♪」


ファニーちゃんが「これって!」と言いたそうな顔で俺の方を見つめて来た。


「うん。ファニーちゃんが予想している通り、弾を強化の方法が載っているところだな」


「キャンッ⁉︎」


プルンッ⁉︎


ルル達も「「そうなのぉ⁉︎」」と驚いた様子を見せる中、次のページを開こうとしたらファニーちゃんに止められてしまった。


「〜〜〜♪」


ファニーちゃんは「作るつもりなの?」と言いたそうな声を出したので、カイリは首を横に振ってから答える。


「一応どんなアイテムが必要なのか見るだけだから、心配しないでくれ」


「〜〜〜♪」


「そうなの?」と言いたそうな声を出した後、ファニーちゃんは本から離れてくれた。


「えっとぉ……貫通弾Lv1に必要な素材は、ウルフの牙と通常弾。

効力は、威力は少し落ちるが硬い皮膚や甲羅など、通常の弾ではダメージが通らない箇所を貫通してダメージを与えられる」


ほうほうそれは便利だなぁ〜……ん?


「他の種類も書いてある。睡眠弾Lv1。材料はスヤスヤ草と弾。この弾が相手に当たれば睡眠状態に出来るが、個体によって睡眠弾の効果が現れるのが遅い場合があるので注意して下さい」


「キャンッ⁉︎」


「スゴイね!」と言いたそうに鳴くルルの頭を撫でてから、次のページを開く。


「これはシビレ弾Lv1。麻痺効果があるやつで……こっちは混乱効果がある幻惑弾かぁ〜」


プルンッ⁉︎


「便利だね!」と言いたそうに身体を揺らすプル太郎を見た後、本に目を向ける。


「強化弾Lv1だって! 通常の弾よりも攻撃力が高くなるんだってさ!」


滅茶苦茶いいじゃん! ……ん? 待てよ。どれぐらい攻撃力が上がるんだ?


「こういう時は……教えて! エイリィンよりも頼りになるチュートリアルさん‼︎」


説明。

強化弾LV1は通常弾よりも1.5倍ほどの威力があります。錬成に必要なMPも3なので、作っていて損はないでしょう。


「う〜ん……MPを3消費するのかぁ〜……」


ポーションと同じ消費量。だから今の俺では気兼ねに作れるものじゃないな。後、エイリィンが泣く声が聴こえた気がする。……いや! 聴こえた気がしただけだから空耳だ!


「強化弾の他には……属性弾があるな」


属性弾に関しては初級ということもあり、属性が付いた素材と弾があれば作れるようだ。


「他に、ってぇ! あれ⁉︎」


次のページが薄っすら黒くなってる! ってことは、この先のアイテムは今の俺じゃ作れないってことか!


「今の俺には作れないのかぁ〜……。ハァ〜〜〜………………」


ため息を吐きながらベッドに顔を埋めると、ルルとプル太郎が優しくスリスリしてくれ、ファニーちゃんが心配そうな顔で頭を撫でてくれる。


「……ありがとう、みんな」


そう言って本を閉じ、アクセサリーに変える。


「無理にレベル上げするのは止めておこうか。かえって危険だしね」


お金に困っているわけでもなければ、時間に追われているわけでもないからマイペースにやってればいいんだ。うん!


「〜〜〜♪」


ファニーちゃんも、「その通りだよ」って言いたそうにしている。


「寝るにはまだ早いからなぁ……。どうしようか?」


「キャンッ⁉︎」


「ボール遊びは外だけね。ユーダさんと約束しただろ?」


「クゥ〜ン……」


「ごめんなさい」と言いたそうに鳴くルルの姿を見て、ちょっと可愛いと思ってしまった。


プルンッ⁉︎


「え? ……お風呂? もしかしてお風呂に入ろうって言ってるのか?」


プルンッ⁉︎


プル太郎は「そうだよ!」と言いたそうに身体を震わせた。


「この宿にはお風呂はないんだよ」


プルンッ⁉︎


「そうなの?」と言いたそうに身体を震わせたプル太郎の身体に、手を置いて撫でてあげる。


「お湯とタオルぐらいならユーダさん達に頼めば貰えるけどぉ……お金が掛かるのが目に見えてる」


明日ダンジョンに行って来た報告しに行った後に行こう。何故かって? 色んなアイテムを拾ったし、一部のアイテムはサニーさんに渡したから換金している筈だしな。


……プルンッ⁉︎


「え? ちょっ⁉︎ 不潔って……わぁっ⁉︎」


ベッドに寝そべっているカイリのお腹にプル太郎が乗っかって来た。


プルンッ⁉︎


「キレイにする! って一体どういう……何を伸ばしているんだよぉ⁉︎」


プル太郎は複数の触手を作り出し、カイリの身体にピタリと付ける。


「ちょ、ちょっとぉ⁉︎ これじゃあまるでエロゲーみたいなシチュエーションに……」


……と思っていたけど、そんなことはなかった。


「……あ、ソフトタッチで気持ちいい。それに暖かい」


まるでその箇所だけにお湯が当たっているかのようだ。


「ああ〜……そこ気持ちいい〜〜〜…………」


カイリの首周りに触手がピタリと付いていて、肩を優しく揉んでいる。そう、プル太郎はカイリの身体をマッサージをしているのだ。


「マッサージ? 何処で習ったんだぁ〜……」


プルンッ⁉︎


「サシャぁ? ……もしかして、サシャさんの仕事を見たいって言ってたときに覚えたのか?」


プルンッ⁉︎


「そうだよ!」言いたそうに震えるとカイリの身体をペタペタ触ってキレイにしていく。


ああ〜…………このまま寝落ちしそうだぁ〜…………。


「クゥ〜ン……」


「〜〜〜♪」


カイリと平行してプル太郎に身体を洗って貰っているルルとファニーちゃんも、気持ちよさそうな顔をさせている。


「ヤバイ……毎日頼みたいぐらい気持ちいい…………」


プルンッ⁉︎


「いつでもやってあげるよ!」と言いたそうに震えるプル太郎。


「プル太郎超優秀! もうプル太郎がいない生活なんて考えられないぃ〜……」


「キャンッ⁉︎」


「ルルはぁ?」と聞いて来たので、頭を撫でてあげながら答える。


「ルルも大切な家族だよぉ〜」


ああ〜……もう寝落ちしそう。


ウトウトし始めたところで扉がバァンッ⁉︎ と突然開いたので、カイリを含めた全員が驚きながら扉の方に顔を向けた。そして顔を向けた先には血相を変えたシェリーさんと剣を持ったユーダさんがいた。


「カ、カイリッ‼︎ アンタ大丈夫なん⁉︎」


「大丈夫って……いきなりどうしたんですか? そんな血相を変えて? もしかして何かあったのか?」


「何かあったのか? じゃないよ! アンタ宛に手紙が来たから、渡しに行ってみたらスライムに襲われてるから……」


「いや、プル太郎が身体をキレイにしてくれてるだけだから」


「……プル太郎? もしかしてそれ、プル太郎なのかい?」


「だからさっきからそう言ってるじゃないか」


俺がそう言うと、2人は安堵した様子でいた。


「流石に心臓に悪いぞ」


いやだってさ、普通に考えてみろ。こんなところに野生の魔物が……そんなこと言うと、面倒くさいことになりそうな気がして来た。


「ああ〜……ゴメンなさい。先に言っておくべきだった。ところで手紙って誰から?」


「えっ? ああ! 錬金術ギルドから。内容は読んでないから分からないけど、悪いことじゃなさそうだ」


「どうしてそう思うんだ?」


「渡して来た相手が錬金術ギルドの職員で、嬉しそうな顔をしていたからな。ほら、これ」


「あ、ありがとうございます」


ユーダ達はカイリが受け取ったことを確認すると、安心した顔で部屋を出て行ったのだった。


「さて、手紙に何が書かれているのかなぁ〜」


錬金術ギルドの建物の同じ紋が入った便箋を開けて開くと、短い文章でこう書かれていた。

今日ダンジョンで摘んで来た素材、体力の種を抜いた予想金額が……何と600000レザと判明しました! ファニーにお礼を言っておいてね。……と。


「ろ……60万レザぁ!⁉︎」


カイリは金額を読み間違えていないのか、3回も確認するのであった。

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