番外編ユーキの日常③ー3

「とりあえず何か服を着なさい。このままじゃ小さいボクが素っ裸でいるみたいじゃないか」


 なぜかボクそっくりに変化したスライムだが、どちらかと言うとボクの幼い頃のような姿だ。そして裸。ただざっと見た感じ性別は無さそうだがそれは元がスライムだからだろうか。


『はぁーい』


 とりあえずボクの予備の白衣を着せておくが、やはりサイズが大きいな。さすがにボクも子供用の服なんて持ってないから作るしかないか。


「フリージア、ちょっと服を作ってくるからこの子を見てて「……ユーキ様の裸……ユーキ様の裸……ユーキ様の裸……」うん、ヴィー頼むよ」


『了解ですー』


 なぜか顔を両手で覆って涙を流しながら天を仰いでいるフリージアは放置しておこう。というか、君が見たのは実際にはボクの裸じゃなくてあのスライムの裸だよ?



「さて、どんな服がいいのやら……」


 ボクは子供服ってよくわからないんだよね。特にあのスライムは性別が無いみたいだし……もうデザインはボクの服と同じでいいか。


 そしてボクはキャンピングカーの中に入り、白衣を脱いだ。







 ***





 ボクが何かを創り出す時……生成する時だが、ちょっと人には見せられない姿になる。所謂「チートの代償」というやつだ。体の右半身がなんか凄い事になってしまうんだよね。どう表現したらわかりやすくなるかは謎だが、化け物っぽいと言えばそうかもしれない。さすがにこの姿はフリージアにもまだ見せていないんだけど……見せられないよね、やっぱり。


 もし見せて、フリージアが怖がったりしたら……なんか嫌だからさ。


「さてと……」


 ボクには作りたい物があると、それに必要な材料が脳内にリストアップされるという便利機能がついている。そして、まずはその材料が入手可能かどうか。さらに手元にあるかどうか。などの材料の在庫整理までされた状態で脳内に浮かぶので重宝している能力だ。この能力を与えてくれたヴィーにはそのことだけは感謝しなくもなくもない。


 しかし、子供服とは言ってもピンキリだ。それに着るのスライムだし、果たしてこれから成長するのか?ついでにずっとあの姿が維持されるのか?などなど悩みだしたらキリがないな。さらに言えば着替えなどは何着ほどあれば足りるのか……。ふむ。


「……“人型スライムが変幻自在に着れる服”」

 

 ふいに思いついたワードを呟けば光の速さで脳内にリストアップされた材料の情報が駆け巡り、生成の仕方からその機能までもがズラリと揃えられた。


 ーーーーうん、これならイケるかな。


 ボクは珍しい材料などがしまってある〈なんでも収納くん〉に手を突っ込み必要な物を取り出すと右手の袖を捲くった。


 

 右目が紅く光り、右腕が肩から異様な音を立てて変形し始める。いつもの右腕とは全く違う見た目になったそれは、ボクにとってなんでも産み出す神の手のようなものだったーーーー。





 あれ?そういえば材料の一部に不思議な物が混ざってたけど……あんなのいつ入手したんだろう?まぁ、在庫にあったって事はいつの間にかしまってたんだろうけど。最近たまーにだけど、見覚えの無い材料まで〈なんでも収納くん〉の中に入ってるから不思議だったんだよね。それともヴィーやフリージアが手に入れた物を無意識にしまってたのかな?


「……まぁ、いいか」


 ボクに与えられた能力は等価交換が基本のはずだ。どんなに作りたくても材料が存在しなければ作れない。それはつまり、存在しない材料を入手するような特典はない。ということなのだ。


 元よりここはヴィーたち神様が作った“異世界”なんだから、たまには不可解な事が起こっても仕方がないのだろうね。














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る