第22話 NEO麗

 流麗の目的を聞かされ、麗衣は珍しく困惑していた。


「……あたしのせいでテメーラがこんな危険な事真似しているって言うのか?」


「ゴメン、正確に言うと以前から麗衣ちゃんと同じことを考えていたって言う方が正しいかな? それなのに先に麗衣ちゃんが『麗』を作って、刺激されたって言う感じ」


 顔だけじゃなくて考え方まで麗衣に似ているという事か。


「だとしたらあたしに責める資格はねーかも知れねーけどよぉ、何で珍走でもない、只のヤンキーまで的にしてるんだ?」


「タケル君を引いた犯人が今も暴走族なのか不明でしょ? だからヤンキーも的にしているの」


「そんなの無謀だぜ……ヤンキーまで的にしていたら仲間が何人居ても足りねーよ。テメーラの実力は解らねーけどよぉ、たった三人じゃ無謀だぜ」


「あーし達、三人でも十三人までなら戦える計算だから、殆どの場合、大丈夫だよ。それ以上の場合逃げれば良いしね」


 十三人まで戦えるって、一体何を根拠にした人数なのだろうか?

 同じ疑問を麗衣も感じた様だ。


「何が十三人までなら戦えるだ? 適当な事言ってるんじゃねーよ!」


「適当じゃないよ。私と神子は空手の初段の審査で五人組手をパスしているし、火受美は日本拳法の弐段の審査で三人抜きしているから」


 某有名フルコンタクト空手の団体では女子の初段の審査では、一対一で計五人相手に組手をして五人抜きしなければならないらしいし、日本拳法のある団体では弐段への実技審査では試合形式のルールで三人抜きが条件らしい。


 それで合計十三人までなら戦えるという事か。


「まぁ、私の場合、日本拳法の重い防具を着た上での数字だからね。実際は私も五人位ならやれるよ」


 人数が一番少ない様に思える火受美はそう補足したが、決して誇張ではないだろう。


 それに防具以外の面で見ても、フルコンのルールと総合格闘技である日本拳法では恐らく同じ人数を相手にしても疲労の度合いが変わってくるだろう。


「そう、火受美は私達の中では最強だから実際はもっと倒せるけど、余裕をもって十三人迄って決めているの」


「何処が余裕なんだよ。五人抜きって言っても所詮は一対一が前提だろ?」


「背を取られない様に連携したり、囲まれない様に場所を選んで戦えば案外何とかなるものだよ。実際、ここに居た連中皆倒しているしね」


 確かに七森で倒れている男達は合計で十人、流麗達が大して傷を負っている様子も見えない事から、本当に十三人以上の男を相手にしても負けそうになかった。


「そうだな。テメーラが強い事は認めてやるよ。でも、こんな事していたら何時かお前等の手に負えなくなるぞ」


「それは麗衣ちゃんだって同じでしょ?」


「あたしの場合は暴走族って存在全てが許せねーけどヤンキー全部が嫌いなわけじぇねぇし、仇だと思っている訳じゃねえよ」


「だーかーらぁー、そんなぬるい考えじゃタケル君の仇を取れないよ?」


「えっと、話し中だけど一寸良いかい?」


 このままでは話が平行線になりそうな状況だったので、俺は口を挟んだ。


「あっ! 君って、もしかして、この前のツヨカワ坊やじゃん! その制服ってまさか、あーしと同級生だった系? ゴメン、てっきり中学生なのかと思っていたよ」


 泣いていいですか?


 と言いたい気持ちを押し殺し、俺は事実を告げた。

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